後半参加の五作品への感想
後半にご参加くださった五作品への講評&感想です。
タイトル、作者名、URLは参加当時のものになります。
感想の特性上ネタバレに配慮できない可能性もございますので、未読の方はお気をつけください。
【並び順】
逆流野郎 角田勇作の新たな旅立ち/ポテろんぐ
どじょうのおでん/高黄森哉
ある晴れた日に/友未 哲俊
メシマズヒロイン地獄変/諏訪原天祐
裏ごし/倉井さとり
『逆流野郎 角田勇作の新たな旅立ち』 ポテろんぐさん作
https://kakuyomu.jp/works/16817330666175177302
「おバカ理論」といった内容のお話ですね。「◯◯理論」は、本来堅苦しいモノを逆手に取るわけですので、おバカさ、おふざけが過ぎているほどおもしろい、というところがあると思います。「◯◯は△△である」というテーマの登場がインパクト大で、それ以降尻すぼみになる怖さもあるんですけれど、さすがは前大会の覇者・ポテ様──という感じで、最後まで勢いが止まらなかったですね。冒頭の「電気」「シャケ」「川上さん」のつかみもよかったですし、強引なのは承知のうえで、理論のみに頼らず笑いを散りばめてくださいました。
神経質な乙女のようにやたらと「関節キッス」を気にする教授とか、知能犯的逃亡を見せたウナギなどのストーリー性ですね。いわゆる「ドジョウ」の前座として、このウナギの投入はいいですよね。全体的に一言でいうと、笑いの羽振りがいい。気前よくポンポン投げてくれた感じ。……ですが、まあ、「きれいなお話ではなかったな」と、管理人も「フッ」というほほえみがわきました。カレーライス修理工の角田さんと同じ名字なんですね……。それからお食事中に読んでしまった自分の不甲斐なさにも涙がにじみました。私はカレーは甘口じゃないと泣いちゃう派ですから。それから、蛇足や豚足になっちゃったらすみませんが、エッセイ・ノンフィクションはぶちかましているよな……と思いました。
『どじょうのおでん』 高黄森哉さん作
https://kakuyomu.jp/works/16817330666902706097
言葉遊びとして「ダジャレ」で攻めてくださった高黄さんの小説。
ダジャレは「うまい!」って膝を叩いて──実際叩かなくてもいいのですが──技に唸るのがオツといいますか、結構、手数が多くて、想像以上でした。「煮卵」のところは特にすごかったです。
よく笑いでは「緊張と弛緩」といいますけれども、その「緊張」がそこまでない、「弛緩」に次ぐ「弛緩」といいますか、その空気感、飄々とした感じがよかったです。そういう掛け合いがいい味わいで。
またおでんたちの視点で、つゆの上を浮遊する「がんもどき」の映像が浮かんできて、そこは文学的良さを感じました。
もしかすると、若い人たちは「どじょう豆腐」を知らない可能性もありますよね。フロッピーディスクさえ知らないらしいのですから(並べるものがおかしい)。そこはインターネットで調べてください!
『ある晴れた日に』 友未 哲俊さん作
https://kakuyomu.jp/works/16817330665504549664
今回、「ドジョウのおでん」というテーマですから、「ドジョウのピンカートンの世話」と出てきた時点で「ああー……」という悲鳴が心の中であがりました。別の言い方をしますと、「察し」みたいな。こちらはユーモア小説ですので、動物(ペット)が出てきて、それが「いたぶられる」可能性(または未来)が浮上したときに、そういう仕掛けに対しての「期待」と「やめてあげてー!」というのを楽しみに読ませていただきました。
タイトルといい、「プッチー兄!」といい、今回は「オペラ」なんですね。
とにかく、「何回、水(液体)に漬けるねん」「何回、焼く(焦がす)ねん」「何回、死にかけさすねん」という心の中に起こるツッコミがたまらなかったです。
長いお話なのに短い感想になってしまい、本当に申し訳ない。いろいろポイントはありましょうが、私としては身近な日常、ノスタルジックな「ご近所物語」的な感じで味わわせていただきました。懐かしさがありました。
川田くんへ一言あるとしたら、「レディーのお尻を触っちゃダメでしょ!」ですかね。私も目上のいとこなんかに「おまえのおしめを替えてやった」とかは言われたくなかったもんなぁ。でもこういうご近所づきあい、人づきあいって、昨今少なくなってきているので、いいですよね。
『メシマズヒロイン地獄変』 諏訪原天祐さん作
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330664865923638
諏訪原さんの描く女性キャラ、いいですね。ギャグ上の明るさもあるんでしょうけれど、私は好きですよ。なんと言いますか、「内容がなんだか変」なんだけど、キャラは当然「自分を取り巻く世界が変」とか思っていませんから(多分)、一生懸命で一途で……。
「メシマズ」っていうワード(ネットスラング?)も、知らなかったんですが、あるんですね。タイトルの語感がいいです。それが「料理が下手」というベタな主人公でもよかっただろうに、板前なのに「メシマズ」を目指すというのがなんとも「不憫」で、痛々しい。
個人的には、もう、オランウータンが全部持ってっちゃった感がありましたよね。あの砂糖・塩のところからの流れはすごかったです。脇役と思える「侑実さん」がぶっ飛んでいて、主人公とひろくんがオーソドックスに見えるのが不思議ですね。十分おかしな二人なのに。本来、「すっごい変」な世界なのかもしれませんが、かわいらしいキャラクターの味つけで中和され、「ちょっと変」ぐらいに思わせているとしたら、すごいことだと思いますし、そういう「ミスディレクション(?)」「作者の誘導」があるとしたら、それこそマジックみたいな、それもいいな、と思いました。
『裏ごし』 倉井さとりさん作
https://kakuyomu.jp/works/16817330667206639115
大会最終日の夜(結構ぎりぎり)にこちらのご投稿があったことにしばらくの間、気づいておりませんで──三万文字以上ですか? 大作ですわよね。申し訳なさすぎて……こんな大会に三万字も書く? (いろんな方面に失礼な発言)最後の最後で、うれしかったですよ。
倉井さんの作品、おそらく「狂気っぷり」が持ち味だと思うんですよね。下ネタ作品なら「下ネタ」がギャグであるように、こちらのような小説は「狂気」がギャグで、笑いだと思っています、私は。今作は「言葉遊び」はやや抑えて──それでも十分いろいろありましたが──どちらかというとストーリーを読ませている気がしました。
一番の驚きは、この内容で「いい感じのお話」に着地したことですかね。それは全然期待していなくて、ていうか誰も期待しないでしょうし、そもそも「狂気」が売りだとしたら、物語に「整合性」はいらない気がしますよね? 作者様がそこを考えて「裏をかいた」のか──と、いろいろ考えました。倉井さんの作品に『ごし』という小説がありまして、私も読ませていただきました。それには物語の意味という意味がなかったので、こっちの『ごし』はその「裏」で、「実は意味があるんだよー、ジャ~ン」ということであれば、このタイトルも納得がいきますし、大成功を収めていると思います。また、『ごし』を知らない人が読んでも、おそらく最後の部分で「えっ!!」となることは請け合いですね。大掛かりなギャグとも言えます。こういう裏切られ方はひどく新鮮でした。
ともあれ、私も仕事でひどく大変だったときが最近ありまして、というか、今現在も不幸にも進行中なのですが、自分の友だちが「元気づけてやってよ」と、こんな焼き鳥屋さんを紹介してくれたとしたら、やはり感激しますし、作中の登場人物・倉木さんの「励まし方」が不器用というか「他になんか思いつかなかったの?」というのがおもしろかったです。「タオルくん」とか「一人称が〈存在〉」とか、あり得ない気がするんですけれど、そういうもの(数々の狂気)もオチが吹っ飛ばしてくれましたね。この作品はまた時間を作ってゆっくり読み返してみたいなぁと思いますので、近く寄らせていただこうかな、と思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます