102号室 水棲虫。さん、103号室 十文字蝶子さん 

 ツッコミフェス2022ってここかよ! ↓↓↓

 https://kakuyomu.jp/user_events/16816927860350826346



 102号室はこちらです。


 僕のおくさん/水棲虫すいせいむし

 https://kakuyomu.jp/works/16816927859461246133



【ヒトキワ荘・作品分類】

 ホーム・コメディ作品



【作品概要】

 主人公の「僕」には、なんだか不思議で、とってもおもしろい、いや、少ーし「変な」おくさんがいる。

 そんなおくさんとの日常のやりとり、おもしろエピソードを紹介する、くすっと笑えて心温まるエッセイ風味のコメディ掌編。




【フォーカルポイント】

 奥様はたしかにミューズ(笑いの神)だけれど旦那さんの功績作品




 笑いのヒトキワ荘、初のご参加大変ありがとうございます。

 プロフィールを拝見すると、登録日が私とひと月違いくらいですね。他にもいくつか読ませていただきましたが、こんな素敵な作品をお書きになられる作者様がいるとは。

 登録作品も少なめですし、お忙しかったのかもしれませんね。その辺りの理由で今までお見かけしたことがなかったのかもしれません。


 私がこちらの作品を拝見したとき、「おかゆ系」というタグにまず心が和みましたし、「チ□ルチョコサイズでお届けします」も素敵やわ、と思いました。まさにそのサイズ感覚、気軽にポイッとつまめるおやつコメディとも言えますね。ちなみに、チ□ルチョコの製造会社・松□製菓の地元は私の故郷と同じ筑豊ですのでやはり親近感が湧きました。(伏せ字は確信犯、悪いやっちゃ)。




 今回はツッコミ評価の大会になりますので、そこを中心にお話しさせていただきますと、こちらは私が従来求めていたツッコミワードのおもしろさとか、そういったものを押しだした作品ではなく、漫才のようなボケとツッコミの応酬というものとも少し違います。たしかに、奥様がボケ、旦那さんがツッコミ役で間違いないことで、その意味では「夫婦漫才」と言えなくもないでしょう。


 いわば一話一話区切られた作品ですので、全体評価という形になりますね。そして全体が「変なおくさん、おもろいおくさん」を「僕」というツッコミ視点で描いたエッセイ風の日常コメディ小説になっているわけです。


 書かれている文章を拝見しても、非常にミニマムですよね。にも関わらず、「あい」という独特な返事と特異な発想で生活している奥さんのキャラクターが目に浮かんでくるようですし、決して振り回されて終わっているわけでもない旦那さんは旦那さんで、クールな視点でツッコみ、それなりに得点を叩きだしているようにも思えます。


 そして短い文章の中に愛情が滲みでていますね。これは水棲虫。さんの作品のカラーかもしれません。



 こういった日常系ほのぼの作品は漫画に多いイメージがありますが、以前、NHKのBS放送「マンガ夜話」でけらえいこさんの『あたしンち』が紹介されたときに、作中のお母さんが、作者の実際の母親がモデルなんじゃないかということで、ゲストの女性タレントさんが「(作者の)お母さんに会ってみたい(見てみたい?)」という発言をされていたと思います。そのときレギュラーの岡田斗司夫さんが、「そんなこと思います?」と、どこかムスッとした表情をされていたことが記憶に残っているのですが、こちらの作品『僕のおくさん』にしても、読者からコメント欄で「おくさまカワイイ」とか「素敵なおくさん」と言われることは、おそらくは作者様の意図したところではないのだろうな、と感じました。


 そしてジャンルとして「エッセイ・ノンフィクション」が選択されていないことを考えても、ありのままの実話、というわけでもないのかもしれません。


 そこは小説世界ですから、デフォルメされていても、虚構が交じっていてもいいわけですよね? 


 これほどエピソードが絶えないわけですから、主人公の旦那さんは環境に恵まれていると言わざるを得ませんが、その中で「これ書こう」とピン! と思いつく感性、切り口、言い回しなどは作者の腕に違いありませんし、毎回毎回オチの付け方もさりげない割に見事だと思いました。


 私のお気に入りの話は「お風呂」「ベッド」「結婚指輪」ですかね。

 それから第30話の「Gunpowder, gelatine Dynamite with a laser beam」このタイトル、シャレていますよね?

 私は残念ながら洋楽をほとんど聴かないので存じ上げなかったのですが、QUEENの曲の中の歌詞のようですね。


 まさに奥様はキラー・クイーン……愛妻が他人から冠せられたあだ名を堂々と認めるのは憚れるものの、半分はそうかもしれない、という洒落っ気たっぷりの感情がこのタイトルに表れています。

 作中から拝見するに、このような危険な香り(?)をまとった奥様に心吹き飛ばされたのが主人公、「僕」でしょう。しかしなぜ「佐世保」なんでしょうねえ……。この辺はお友達に訊いてみないとわかりませんが、かくいう私も「筑豊の渡り鳥」「筑豊の炭焼き職人」など、意味不明なキャッチフレーズを自分で打ちだしておりましたから、なんとなく「雰囲気で」みたいなところもあるのかもしれません。


 周りにユーモアセンスのあるおもしろい人たちは結構いるものです。それをエッセイで紹介している作家さんも数多いらっしゃいます。「心温まるな」とほっこりするものの、ありふれた題材を扱うとそれこそ「よくあるもの」として埋もれてしまう運命も同時に持っていると思います。


 人生の悲喜交々こもごも、その「喜」の部分の多様性に呑まれながらも、「笑い」という至高を目指して日々戦っている作家さんたちがヒトキワ荘にも来てくださっているでしょう。


 日常をただ流れては消えていく無味乾燥なものと見限らずに、慈しみの心を投じて胸を張って幸せを歌う、という行為が、「小説」「笑い」という形で実現できている作品だと思います。そしてこの作品にしかない魅力があるのでしょう。


 私自身、ほんの数話読んだだけで、この作品がたくさんの星をもらっている理由がすんなり腑に落ちるほどでした。なので102号室にお招きしたい、と思いました。奥様がこの部屋を気に入ってくださるか定かではないのですが……。読ませていただき本当にありがとうございました。



 水棲虫。さんへ


【管理人がつけたあだ名】

 日常を聞こし召す、芳醇な味わいの名手(銘酒にかけてます)


 お酒がお好きなんですよね? やはり、ドリンカーではなく「聞こし召す」という言葉が似合いそうな上手なお酒とのお付き合いができる方というのは、人生の愉しみ方もうまいような気がします。(上手な、と書きましたが、実際を存じ上げず印象で書かせていただいているだけですので、結構「飲んだくれ」とかうわばみ的な「酒豪」とかでしたら、すみません)

 作品は少し読ませていただいただけではありますが、どこか飄々としたイメージにも感じましたし、「溺れない、深追いしない」というような、あっさりとも違う、いろいろ心得ていらっしゃる粋人的な作風かな、と私個人は感じました。


 私をご覧ください。私ははっきり申しまして、堅物であり、お酒はほとんど飲みません。タバコもギャンブルも大嫌い。人生は苦しみ方しか知りません。こんなやつがユーモアを嗜んでいるなんてお笑いですが、それ以外に趣味がないので……。


 拙作もいくつも読んでくださったようで、本当にありがとうございます。ヒトキワ荘は今のところ続けていく予定ですので、また気に入ったテーマがありましたらご参加いただけるとうれしいです。またお見かけしたときは私も読ませていただくと思います。







 103号室はこちらの作品です。



「くそったれがあ!」/十文字蝶子

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054928037064



【ヒトキワ荘・作品分類】

 現代劇



【作品概要】

 <今まで生きてきて、くそったれなんて初めて言ったわ……。 服もずたぼろ、化粧も流れて、靴もどろどろで。>

 夜、主人公は自らの人生を振り返り、毒づきながら、人里離れた山の中を歩いていた。彼女を待ち受ける運命とは……。



【フォーカルポイント】

 命がけの叫びが魂に響く──必然のツッコミ。



 旧作&新作でのご参加を本当に恐れ入ります。

 今回で四度目の受賞ということですね。


 ヒトキワ荘にはありがたいことに毎回のように覗いてくださる常連さんたちがいらっしゃって、お忙しい中作品を投じてくださるわけですけど、私のフォロー作家さんとなっている方が多く、アトリエ内の作品は結構読ませてもらっているわけですよ。


 で、旧作でのご参加を知ったときに、たまーに、「今回のテーマだったら、これじゃなくてあっちの作品の方が良かったんじゃないかなぁ……」と思うことがあるんですね。


 もちろん、審査をどのような基準で行っているか、細かいところは「崇期のみぞ知る」で、しかも私は雑食系痩せの大食いゲテモノ大好き人間ですので、付き合いのある作家さんでさえ、「この人の好みはようわからんて」といった感じなのかもしれません。


 おそらくはほとんどの方が、私の奇々怪々な好みに合わせるのではなく、ご自身がパッと頭に浮かんだ作品、または「これ、この機会に読者に知ってほしいなあ」と思う作品を投じられているのではないでしょうか?


 しかーし、今回の十文字詩聖の作品は、「これドンピシャやな……」と大変驚かされてしまいました。


 この作品、私は約一年前に読ませていただいたみたいですね。今でもよく憶えているのですが、途中、主人公の事の次第が判明してからというもの、「いやー、なんか悲しすぎるわー」と胸が詰まってしまい、そういう感情のさざめきなしで読める内容ではなかったために、やや苦手と受け取ってしまい、高い評価をしていなかったように思います。


 それが、今回のテーマ「ツッコミ」ということに着目して再読させてもらってから、すっかり印象が塗り替えられてしまいました。ほとんど感動のようなものがありました。また、ある一定の時間を経て読むと受け入れられるようになったり、以前はなんとも思わなかった作品がなぜか響くようになる、という経験は結構あるものです。


 なので、過去に自分自身が退けてきたものも永遠に無関係な存在ではないのだと、それは心しておかなければなりませんね。


 話を小説に戻します。この作品は主人公の心の声のみで綴られていく小説になりますが、自分の不甲斐ない人生を呪い、ひたすら容赦なく自分をツッコんでいくという内容。これほどまで必然のツッコミは今まで聴いたことがない、と思いました。主人公はこのツッコミなしでは足を進めることができない、という状況にいるわけです。


「ツッコミ芸」というものをこういう切迫した物語にうまくはめ込んだというところはたしかに見事なんですが、ただ発見・発明のみで終わってしまっている作品というものはそこまで深みがあるとは思わないだろうなと思うんですね。その瞬間は「おもしろい」と思っても、後々までずっと尾を引くようなものは心に残らないことが多い。


 しかしこの『くそったれがあ!』は、単純極まりない3,000字では到底なく、様々な生命の息づきを内包する真夜中、心奥のメタファーでもあるような樹海──にも似た、現代劇としてとても奥行きのあるドラマ、捨て置けない作品というところまで昇華を果たしていると思います。決死の一人芝居の中の、涙ぐましい人生の告白、必死に鼓舞して紛らわせているだろう恐怖、周りの人たちへのせめてもの感謝や呪詛、それどころじゃないはずの気づきや嗤い。


 この短さでありながら、読めば読むほど惹き込まれていくような感じ、重さです。


 また、最初は毒づきであったはずの「くそったれがあ!」の叫びが、最後にはまったく別の意味での叫びに変化しているという、いわゆる「オチ」がすばらしく利いていますね。本当はオチなどという語は使ってはいけないんだと思います。

 私個人は103号室以上の作品だと感じています。すでに読んでいた、という、仕舞われていた遺物のような感情に新しい息を吹きかけてくださり、本当にありがとうございました。



 十文字さんへ


【管理人がつけたあだ名】

 ヒトキワ荘にほぼ住んでいる人


 私の姪っ子(中学生)が、友人の◯◯ちゃんには20個くらいあだ名がある、と言っていたので、十文字さんにも毎回毎回新しいあだ名がついてもいいんだ!……とは思うものの、大変ですよ。過去にコメントで「ネーミングセンスが云々」みたいに私を評してくださったユーザーさんもいらっしゃいましたが、私の頭の抽斗の中には通常、雑念しか入っていませんし、そんなにいくつもの「顔」をお持ちの人がいたら、悪女じゃないですか……。


 私の場合、「崇期すうき」という筆名を見ても「???」と思うユーザーさんが、「ヒトキワ荘」と聞くと、「ああ、あの企画やってる人ね!」という反応になるらしいです。

 そこまでこの企画がカクヨム内で知られているということにうれしさも感じています。


 ということは、十文字さんもそのうち、「ああ、ヒトキワ荘にいつも参加している人ね!」「住人に何度も選ばれてる人ね!」と言われるようになるのではないかと……もう、言われる前に「呼んじゃえ」と思いました。



 これは管理人としてでなく、十文字さんの一ファンとして、「やはり話題としては101号室だよな?」と思います。ただの部屋番号やろ、と思うかもしれませんが、101号室は最優秀賞です。十文字さんの過去の参加作品はどれもこれもすばらしいと言わざるを得ません。なのでぜひ獲ってほしいなぁ、と余計なお世話ながら思ってしまいます。野球で言えば、「サイクルヒット」ですよね。これからもご参加いただけるのでしたら、全部屋制覇の偉業(!)をぜひにと期待したいと思います。



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