101号室 真花さん
企画URLはこれかよ! ↓↓↓
https://kakuyomu.jp/user_events/16816927860350826346
第七回大会、最強のツッコミ野郎はこの主人公しかいないでしょう!
2022年の大会、最初の101号室はこちらです。
寸止め知らずの路上面談/真花
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893710927
【ヒトキワ荘・作品分類】
コメディ小説(現在も連載中?)
【作品概要】
十年の間、精神科医としてやってきた主人公の「僕」。溜まりに溜まった「ツッコミ欲」の解消方法として、上野公園で路上面談を行うことにした。その内容は、「精神科医が面談をします。どんな内容でもO Kです」「ただし、通常の医療と異なり、どんどんツッコミながらの話をします。無料です」というもの。
寄ってきた相談者と僕のすさまじい笑いの応酬劇がはじまる……。
【フォーカルポイント】
ボケ&ツッコミはちょっと産みすぎなぐらい、爆笑人間百科
真花さんは、私がカクヨムに登録してから割合すぐに気に入って読ませていただいていた作者様だと思います。こちらの評論ページ第3エピソード目でご紹介もしておりますし、笑いのヒトキワ荘の前身企画、「笑いの名工」にもご参加くださっています(私がコメントでお誘いした記憶があるのですけどね)。
まさに、私のヨム生活の中で、好きなコメディ作品の作り手さんを挙げるならば必ず入る人でありますし、その他のジャンルの小説も定期的に読ませていただいておりますフォロー作家さんです。しかも向こうが読んでくださっているから、という付き合いで設定した方ではありませんので、純然たる好み、ファンということです。
実は、カクヨムで今まで読んだツッコミ作品の中で、私がものすごく気に入っておりました作品が二つありまして、そのうちの一つがこの『寸止め』でした。
もう一つの作品は別作者様のもので、残念ながらご参加はいただけませんでしたが、特にその二作品を意識して企画を立てたわけではありません。企画名も、最初「ツッコミ選手権」にしようかと考えていたら、YouTubeに同名の動画が挙がっており、変えた次第です。
また真花さんは他にもすんばらしいツッコミ作品を多数お持ちでいらっしゃいます。そんな中、こちらを投じてくださったことを知ったとき、「来てくれたかぁ、しかも大本命なやつで」と歓喜しましたし、早々に101号室が決定してしまうという事態がほぼ起きたように思えたことも事実です。
そうは言っても、今までの大会でも101号室に選出させていただいた作品はほぼ一読で「これで決まりかもな」と思う作品ばかりでしたので、異例なこと、というわけでもありません。記憶に強いのは、第一回大会の鮭さんと、ブラックユーモア杯のときの名取さんですかね。読んだときの「うわー、来たー」という感動は結局は覆されなかったという圧倒的勝利でした。
今回唯一違ったのは、この評論ページ内で紹介済みであったために、もしかすると他の参加者様にも「これ選ばれるな」と想像されていた可能性があったということかもしれませんね。
※私が勝手にご紹介していただけですので、第一回大会で住人に選ばせてもらったときの十文字蝶子さんも「紹介されてたのを知らなかった」とおっしゃっていましたし、おそらくは真花さんもご存じなかったのではと思います……。
それでも私は「真花さんの牙城を崩す作品が現れるか?」という方向に自分の楽しみをシフトチェンジし、今大会を見届けました。そういう可能性を秘めた未来というのは、主催者として当然望むべきものでしょう。
しかしまあ、ここまでツッコミというものに特化した、しかも強烈に打ちだしている小説もめずらしいですし、ツッコミセリフの量も笑いへの熱量も半端ない、大会タイトルの「最強のツッコミ野郎」がそのまま当てはまってしまうような主人公──と、さすがにこれより抜きんでるものを作るのは困難ではないかと、主催者としても思いました。
私が挑戦者ならば、思いきって一発ギャグに賭けるか物語で攻める方向を考えるでしょうね。
こちらの作品、主人公の精神科医の僕が、まさに「ツッコミたいから」という謎の欲望で路上面談をはじめ、そこにかなり個性的な人物がやってきては、主人公の願いを叶えるべくボケ倒してくれるという、まさにツッコミ放題の「楽園」のような物語。
コメディ、コントはまさに仕掛け、作為の世界ですからね。今大会、ヒトキワ荘アンバサダー(!)の猫とホウキさんもネタとして使われていましたが、どれほど乙女チックな少女でも羞恥心なく食パン咥えて走ってくれますし、おまわりさんは後の報告書のことなど考えもせずに拳銃をぶっ放し、蕎麦屋はどれほどベテランであっても出前の蕎麦をひっくり返す──それがコメディ界というもの。
主人公が公園で白衣を着て準備して、「真夏で暑い」などの心の声が聴かれたり、面談終了後にバーに寄ったりというシーンも描かれてはいるものの、内容の大部分は「会話劇」であり、テーブルを設置したら向こうから寄ってきてくれるというスムーズな展開で読者はストレスフリーで笑いを存分に堪能できます。
ボケもツッコミもとにかくすごいので、どのエピソードがどうとかの話はもう好みの世界になるかと思います。
読まれていない方もいらっしゃるかもしれませんので、珠玉のツッコミの中から一つご紹介いたしましょうか?
「五人目 ハクマ・イミソシ・ルニック・ジャガー(島崎街太郎)」より
会話の先攻・小学四年生の少年、後攻・主人公。少年が昨日の夢の中にマーガリンの神様が出てきたと話しているところ。
(引用)
「バターの神様も横に居て、バターも日焼けに効くよ、って」
「お願い神様、嘘を重ねないで」
「二人の神様はとっても仲良しなんだって」
「シェアの奪い合いではないの!?」
「とにかく塗りたいんだって。でも、僕の家の朝はごはん派で、パンはないんだ」
「神様二人ともシュンとしちゃった」
「だから僕は言ったんだ。『パンがなければお菓子に塗ればいい』って」
「何トワネットですか!? お菓子とバターがマーガリンが、殺し合っちゃって双方かわいそうですから!」
「シェアの奪い合い」と「何トワネット」……心地いい返しですよね。ツッコミの種類として、「なんでやねん!」と否定したり感想を述べるだけのものは、芸人さんなどの演技で観ると大変おもしろいんですが、小説の場合、文章しかないわけです。つまりセリフとなったときに動作や語調といった視覚・聴覚表現に存分に頼れないわけですので、そういったタイプのツッコミよりは「言い回し」や「情報」に頼る方がおもしろみを出せることが多いと思います。「情報付加」や「情報再確認」というものでしょう。そして夢の中の話だと思うのに、主人公が神様たちの背景を想像して、「シェアの奪い合い」にならないのか、「シュンと」しちゃってないか、と余計な心配をする優しさがおもしろい。
……とにかくこんなふうに、持ってくる方(相談者)もすごければ、吟味役(主人公)もエキスパートなので、双方の掛け合いがごちそうという感じ。
また今回、この機会に特筆しておきたいと思うのは、「真花さんという作家が書くコメディ作品について」でしょうか。
真花さんはゴリゴリの純文学というタグに見られるとおり、私の最初のイメージも「純文学作家さん」という感じでした。ただプロフィールにも「純文学とコメディ」と書いてあり、アトリエ内の笑いの作品の量も種類もなかなかすごいものです。
そして笑いの作品を集めた自主企画も何度も主催されているでしょうから、「コメディ作家さん」としての姿もあると思うのですが、私が普段よく読ませていただいております、いわゆるコテコテのコメディ作品とは「どこかが違う」という感覚、読感がありました。
真花さんのコメディ作品の魅力が特に感じられるなぁ、と私が思ったのが、『田中さんはサンマンエン』や『ひとり遊びの覗き見に』といった作品です。
笑いというのは、ミステリーの犯人をばらしてしまうのと同じくらい「オチ」などを先に知らせたり解説したりするのは御法度感があります。なのでくわしいところはぜひ読んでいただき皆さんにご確認いただきたいと思うのですが、こちら、モチーフやオチなどがとてもナチュラルで、もしかすると笑い畑の方でしたら、もっと違った作り方をするのではないか、と思いました。
言いたいことは、真花さんの笑いの作品のスタイル、手触りが「エッセイテイスト」、あるいは「純文学志向」である、ということです。
真花さん自身もコメントの返信で、「コメディは自分の趣味全開です」と書いてくださいました。
そう、コント職人のように「技術」や「生業」で創っているのではない、「趣味」という愛情の世界です。またはとても研究家タイプな感じもするな、とも思いました。
笑いの部分、ツッコミセリフもたしかに自然な心の叫びや声が乗っていて、成型されすぎていない、まさに「グルーヴィ」な感じというか、ご自身の趣味という「測れない」感覚に忠実に従って、またはノリノリに乗って創られているところが真花さん流と言えるでしょう。
『寸止め〜』の中にこのような文章があります。
(第17エピソード、「十四人目 志賀折太」冒頭より引用)
空を見て、往来を見て、木々を見る。誰も寄って来ない。これまでが奇跡的だったのかも知れないけど、暇の中ひたすら暑さに耐え続けるのは堪える。誰も来なければツッコめないと言う当然の真理が絞られる汗と共に流れ出て、自分に問題があるんじゃないかと思えてくる。
冒頭でストレスフリーな「楽園」と言いましたが、作者の匙加減でいくらでもボケ要員を登場させられるはずのコメディ作品であるはずなのに、「人が寄ってこない」というリアルな苦悩をここでは描いています。この物語の中ではあくまで主人公は一般の精神科医で、東京の上野公園を舞台に休日を利用して面談を行っているのであり、自然発生的に集まってきてくれた人々にツッコミを入れているという「現代ドラマ」だと私たちに告げているのです。
上記のような説明や、一日の面談を終えたときの主人公の回想、ギャグのオチで締めずに去っていく相談者たちへの想いを描いてエピソードを締めるなどの演出は、たしかに単純明快なコメディならば省かれてもいい部分。それを描きだしているからこそ、「真花さんの作品」に昇華されていて、笑いがバーンと打ち上げられて「チャンチャン」ではない、さぁ〜っという、やわらかな風のような不思議な読感、手触りが感じられる作品になっていると思います。真花さんが描く他のコメディ作品も同じような味わいを湛えていると私は思いました。
こちら、完結となっていないようなので、1エピソードごと計算しているツッコミ累計もいずれ1,000を超えるかもしれませんね……。
主人公は蒸し暑い夏を白衣のまま無事やり過ごすのでしょうか? とにかく、面談が今後も続いていくようであれば、私も一ファンとして、二十人目記念とか、十日目記念などには花輪を持って上野公園にお祝いに伺わなければなりませんね。
上野公園?……遠いわ! わたくし筑豊在住(福岡県民)ですよ? 旅費いくらかかるとね?(筑豊弁) それに花輪が贈られる路上面談て……。言葉だけのお祝いとさせていただきます。
最後に、ヒトキワ荘初参加、初優勝をおめでとうございます。
真花さんへ
【管理人がつけたあだ名】
ゴリゴリにストイックなカクヨムのツッコミ番長
※住人さんには管理人が勝手にあだ名をつける習わしになっております。
「番長」というのは、なにか、温和な響きではないかもしれませんが、「ストイック」「ツッコミ」という言葉と一緒に並べたときのバランスでこうなりました。
「幹事長」「看護師長」「料理長」などいずれの候補もなんかしっくりこなかったです……。私の語彙の問題かもしれません、すみません。
いつも多彩な作品を読ませていただき、誰にも手が届かないような崇高な魂、精神というよりは、身近な「人間」というものの、ときに気高く、ときにどろりとした深い色合いを覗かせてもらっているような気持ちになります。手に取り味わった後に残る感情、感覚というのがとても好きだ、と言える作品が多い気がします。
コメントを拝見しても、私にとっては「あれだけのものを書かれている方」という感想なのですが、上から目線という感じがまるでなく、読者一人ひとりの意見、言葉の意味を汲み取られてご返事をされているその姿勢がすばらしいなと、まさに「カクヨム作家の鑑や!」とひそかに尊敬しておりました。
私は純文学については指をくわえて見ているような感覚ですが、笑いの作品においては、好きな作家さんが多い方がうれしいし、これからも真花さんのコメディ作品の更新や新作を楽しみにできたらいいな、と思います。
また機会がありましたら、どこかの笑いの企画でご一緒させてください。同じ船に乗り合わせた同志たちの作品で勉強させていただきたいと思います。笑いのヒトキワ荘も気に入っていただけましたら、いつでも遊びに来てくださいね。お待ちいたしております。
ヒトキワ荘・管理人 崇期
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