参加作品をいくつかご紹介
森緒 源さん
『新型コロナの猛威 ! 人類は生き残れるのか !?』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894690302
【フォーカルポイント】笑い事やない、真面目な話やねん。
ふと過去の大会のリンクをこの評論ページに載せようと、久しぶりにヒトキワ荘の前身企画である「笑いの名工求む」を覗いてみたのですが、森緒さん、そちらにもご参加くださっていましたね。鮭さんも参加されていました。前回、鮭さん作品を第一回大会で初めて読んだ、と間違った情報を流してしまい、スミマセンです(陳謝)。他の方も度々お名前を拝見する次第で、毎回ご挨拶や感想を書いているわけではありませんので、反応なしかと残念に思われている方がおられたとしたら、本当に申し訳ないです。ただ、参加作品は私はよほどの理由がないかぎりはすべて読ませていただいておりますし、過去にすでに読んでいる作品が参加された場合も必ず再度読み返させていただいております。
こちら、短いですが内容は濃ゆいですね。新型ウイルスの呼称と有名自動車メーカーの車名のあんまり喜ばしくない一致、誰にも罪も責任もないんだけれど、拭い去れぬ気まずさというものが当然あり、それを笑いに変えたところに作家魂が見られます。丁々発止の漫才風セリフ綴りが心情的な曇りを吹き飛ばすように一気に読ませていいな、と思いました。こういうお話を読んでいると、ウイルスが各方面に多大な影響を与えていることが想像できますし、高齢者運転事故も他人事と知らん顔はできない問題です。鋭いツッコミ作品だと思いました。ご参加ありがとうございました。
田中ざくれろさん
『新型コロナで140文字』
https://kakuyomu.jp/works/16816927860369357622
【フォーカルポイント】流行って、シビア……。
コロナネタが続きましたね。風刺作品です。もう、アマビエってだけで笑っちゃいました。アマビエがきれいさっぱり忘れられてしまったのは、やはりコロナが私たちの想像以上に強敵すぎた──ということだと思います。アマビエはある意味人々の願いであったろうし、つらい現実をなごませてくれるマスコット的な扱いだったんじゃないかと思います。利用するだけ利用され捨てられたのだとしたら、アマビエが怒る気持ちもわかります。非常に短い作品ながら、おもしろさが詰まっていて、好きでした。
猫とホウキさん
『運命的な出会いとは衝撃的なもの? それはつまり破壊力ってことですわよね!』
https://kakuyomu.jp/works/16816927860419172648
【フォーカルポイント】そっちのツッコミ? それと反復がめちゃくちゃいい。
キャプション欄にて企画の宣伝を本当にありがとうございます。
この作品、ひとことで言うと「ふっといコメディ」という感じですよね。コテコテなんですけど、技巧だけで仕上げた、というような読後の寂しさがありません。ずっと後まで笑いを引くような、まさに猫とホウキさんのコメディに対するふっとい愛情を感じさせていただきました。
私が一番好きで、海外っぽいな、と思ったのは、実はコンビニの部分です。コントでよく使われる型の種類として、「反復・交差・逆転」というものがあるとよく言われますが、こちらはその反復ですね。現実的にはあり得ないんですが、母娘がやり合うと必ずコンビニが被害に遭うという……このくり返しのおかしさ、憐れさがたまりません。
以前、ダウンタウンの松本さんが、自分のコントは海外の人にウケるのか、という実験をされていたのですが、そこで海外の人が笑っていたのが「反復」の部分で、たしかに私が観たコメディ映画でも結構使われていたなぁと思い出しました。
コンビニが果たした最後の復讐も見事で、そこも痛快でした。
それから馬の部分だけ描写が妙に細かい。「見せ鞭」とか「ホルスターから食パンを抜いた」とか。以前、友未哲俊さんと猫さんのコメントのやり取りを読ませていただいたのですが──きっと
以前、書かせていただいたと思いますけど、私は「バナナの皮で転ぶ」と「遅刻で食パン咥えて走る」にはアレルギーがありまして、正直好んでいません。いいかげん、そのネタはもう使えないでしょう……と思っているのですが、そんなみみっちい嗜好も宇宙の彼方に吹き飛ばされてしまいました。
ツッコミ芸としては、お母様が表向きのツッコミ役。しかしこちらはミイラ取りがミイラのボケ要員で、真のツッコミ役はコンビニでした。
とはいえ、この作品は「突っ込みアクション・どコメディ」であって、「ツッコミ芸」という枠に収めてしまうと少しもったいない作品でしょう。素敵な作品を毎度毎度本当にありがとうございます。
武石雄由さん
『銀河鉄道の月夜』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426549095118
【フォーカルポイント】愛すべき勘違い野郎
私の家族の知り合いに「アルプスの少女ハイジ」を知らない、と言った人がいましたので、宮沢賢治も知らない人はいるのかも……。おまえなんか日本人じゃねー、って言われそうですがね。
それはともかく、勘違いネタっておもしろいですよね。読んでいるこっちもツッコミたくなるので、ツッコミ役の腕にかかっている部分もある作品だと思います。
文芸部の部室と、思春期の香り漂う少年二人の出だしがいい味出していると思います。前フリとしてすばらしいですね。
内容がものすごく丁寧だな、と思いました。宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』の登場人物を──これはオチとして最後に発覚することですが──パロディを編んだ作家さんが細かく設定しているからこそ珠玉の勘違いが花田君の脳内に構築されたわけですよね。ボケの内容がぎっしり詰まっていますので、ツッコミまで激しすぎると少々うるさい内容になったかもしれません。その辺、冷静で正しい作品知識を収め、「花田君」というキャラクターさえも掌握している石田君とのバランスが大変好印象でした。
石田君の小説投稿生活の熱心な読者の正体(話の流れでうっかり漏らす花田君)と、まぎわらしい筆名とタイトルで元凶を作ったどこぞの悪ノリ作家さんの存在も想像の笑いを生みだしてくれました。もしかしてですが、投稿後に若干修正されましたでしょうか? 私の記憶もはっきりとしているかわかりませんが、修正後の方がわかりやすくなっていたと思います。
杜松の実さん
『まだ、好きこそ物の上手なれ。ってか。』
https://kakuyomu.jp/works/16816927860478777821
【フォーカルポイント】型に嵌めようとしないナチュラルな笑い
タイトル自体が、杜松さんの文章でいつも見られる自作に対する心の声、ツッコミ、という感じですね。ちょっと謙遜ではないかとも思うのですが、創作では自己の満足度、達成感との戦い、という部分もありますからね。
はじまりからして、「書けない」ということを「書いているのだ」と、不屈な精神を見せてくれるのかと思いつつ、文章にもあるように、好感を持ってもらえるかもと作為としてやったのならば「卑怯な」方法でもあるかもしれません。
それをわかった上で、私があえて感想を書かせていただいているのは、
(引用)
エレベーター脇にある日付を掲示する電光板に灯る2088年の表記。(中略)頭上のその電光板に指さし声を潜めて言った。
「おまえタイムマシーンか」
――小せえ声だなあ――。
こういった、ナチュラルな笑いに非常に惹かれたからでしょうか。
そう、杜松の実さんはご存じの方はご存じでしょうが、いわゆるコメディ作家さんではありません。以前はユーモア小説も書かれ、私の企画にご参加くださったこともあり、住人にも選ばれたわけですが、何作か読ませていただいて、「笑いというものはこうだろう」と、そういう型に無理やり嵌めようとはしていない作品が多かったように思います。上記でもわかるとおり、文章の中のツッコミも非常にナチュラルで、それがかえって予期せぬ笑いを誘われ、とても新鮮でした。
コメディを書きたいと思えば、コメディに倣うことはもちろんできるでしょう。センスはともかく、私にだってできることですし、杜松の実さんほどの文章力、分析力があればできると思います。
なので、それを「しない」という意志の強さも好きですし、こういう形でも笑いを表現できるのだと、私個人は驚きを与えられました。
物語の内容自体は、エッセイのような、また「自宅だと思っていた場所がそうじゃないかも」といった「異化」を取り入れているような不思議な手触りで、ただの機械の不具合かもしれない2088年の表示がSFタッチへ流れていくようなところもあり、なんとも表現しようのないユニークな作りでした。
帝王Tsuyamasamaさん
『短編49話 数ある俺らの情熱のために駆け抜けろ』
https://kakuyomu.jp/works/16816452219064238794
【フォーカルポイント】手に汗握る青春コメディ小説
帝王様、拙作にコメント&レビューで熱いメッセージをありがとうございます!
帝王さんの作品はいわゆるとってもハッピーな気分で読める爽やかなラブコメ、というイメージがありましたが、こちらは同じ青春でも「アニメ」に対するもの、と言えそうです。
ビデオ……VHS……懐かしい。
私にも憶えがあります。たしかBS放送かなんかを録画したいとき、入力切替でそのチャンネルが表示されるようにしておけば撮れる、というデバイス能力での限界があって、セットしておいたのに家族の誰かに別のチャンネルに変えられてしまい、「撮れてなかった(別の番組が録画されてた)」ということもありました。あのときのショックと悔しさ……。
それと本文に120分テープってありましたけど、あれも、「残りこれくらいだから余裕で撮れるよな?」と思っていて、最後の方が切れてた……なども「あるある」でしたね。ドラマや映画の最後の部分が見られないなんて、「そんな殺生な……」ですよね。
世の中が便利になるにつれて、こういうアナログ的な失敗談は消えてなくなり、同時にストレスもなくなるわけですが、それはそれで寂しいと言いますか、苦労と共に味わう感動のようなものは少なくなっている気がします。
スピード感溢れる熱血コメディですね。ツッコミとしては、自宅のビデオデッキが不具合を起こして使えなくなった主人公が、代わりに録画してくれる友人をあたるときの「チャンスの到来&消滅」のくり返しの部分に表れています。主人公のイライラに同情するも「お約束」という感じでグッドです。
そして個人的に非常に笑ったのが、ここまで急いでいるのに家に帰ったらちゃあんと「手洗い・うがい」をしているところ。いやいや、当然でしょう、と言われるかもしれませんが、急いでいるなら省いてもいいのでは? とも思え、コントっぽい感じですごく好きでした。
短いながらも駆け抜けるようにテンポよく読める熱いドラマ、最後は最後で「帝王さんのラブコメ」が見られて素敵でした。昭和の人間として和むネタでした。読ませていただきありがとうございました。
実は言いますと、ほかにも何作か書かせていただきたいものが存在しましたが、やはり私の不調が足を引っ張って、気に入るように仕上げられませんでした。
またエネルギーを取り戻して、そのときには心を込めて感想を書かせていただきたいと思います。今回は本当に申し訳ございません。
これからも皆さんの痛快作品と喜ばしい出会いが果たせたらいいなぁ、と願っております。
自主企画で見かけたときは、宣伝候補として「笑いのヒトキワ荘」をご検討いただきましたら幸いです。
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