103号室 鮭さん
光も闇もすべてがここにある……きっとそういうこと。全43作品。
https://kakuyomu.jp/user_events/16816700427121902671
笑いのコンダクターさん選出。103号室はこちらです。
ゾン日/鮭さん
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887663315
【ヒトキワ荘・作品分類】
・ホラーコメディ
【作品概要】
「今日はゾン日です。人々はゾンビになります。よって死んでも生き返ります。」と時の宰相、トキノサ・イショー氏が朝の定例会見で発表し、あまりのことに興奮する太郎くん。それを証明するためにお母さんの食事に毒を混入させる。次々起こる殺人パニック。予測不可能、嵐が嵐を呼ぶナンセンス・ホラーコメディ。
笑いのコンダクターさんからの講評
小説を書くのに必要なのは、やれテクニックだとか経験だとか、あるいは哲学性やら精神性やらであると、たくさんの議論があるかと思います。
しかし本作はそんな騒ぎに対し、「矮小なことだよ」とでも喝破しているかのようです。
極論をすれば、サルがバナナをむく行為すら表現であり、消しゴムのカスを丸めるのもそうなのです。
あらゆる存在はそれ自体が表現である――
本作はそれを教えてくれるような気がするのです。
それはひょっとして、人間にとって一番大切な感覚なのかもしれません。
一見ナンセンスでシュールな作風の中に、古の風刺作家がそうしたようなエッセンスが詰まっているのです。
それはおそらく、人間に表現可能なもっとも深い部分、非常にプリミティブなものに感じるのです。
人間が文明の発展とともに忘れ去ってしまった、しかし一番大切なもの――
それがこの短編の中に爆縮されているのです。
くもったまなざしを開き、光を与えてくれる、そんな良作だと感じました。
管理人よりひとこと
もう一つの参加作品『侵略された街』も大変おもしろかったです。『ゾン日』という、一見ダジャレから発想を得た、ただそれだけのような破壊力勝負のトンデモ作品。
前半部分、「死んでも蘇る」=「死が怖くない」という設定を突如与えられた世界に登場人物たちはいて、ブラックユーモアとしても規格外ですね。しかし後味の悪さや死への恐怖など「そんなもの関係あるか!!」とでも言うかのように小賢しい読者をなぎ倒していくド迫力で、死も犯罪も混乱もすべてがナンセンスに呑み込まれています。
(引用)人が死ぬのはいつでしょうか。それはですね、人が人を忘れた時、なのですよ。
このフレーズもすでに手垢がつきまくっている気がするものですよね? それをわかった上で平然とギャグとしてオチに使い、半角カタカナの締めの一文もどういった作意なのかわからず呆然としてしまいます。「ドッソドッソ」もあり得ない擬声語で、笑ってしまいました。
これはもう、人間(読者)にはどう抵抗することもできない、圧倒的なただの嵐です。
鮭さんへ
管理人がつけたあだ名「ナンセンス界より怒涛の出走、疲れ知らずのスプリンター」
第一回大会の再来が起こりました? 南さんと一緒に再びの選出、おめでとうございます。
いつも鮭さん作品には少年のような無尽蔵なエネルギーを感じています。それがおそらく、コンダクターさんがおっしゃった「プリミティブな」パワーなんでしょうね。なにかを身につけてしまえばなにかを失ってしまうのが文明、大人だったとしたら、なにをも失わない無敵の世界にいるのかもしれません。いまだ、誰にとっても未開拓、というような。
まあ、ちょっと考えられないことですし、それゆえ、こういった作品は感想を述べるのがとても難しいと言えます。
本当に、走っているのが似合いの、小説内のものはすべてが飛来物、といった感じで襲いかかってくる、目でじっくり確認するのが困難な世界です。
いってみれば、「作品の意味のわからなさが怖い」という感じで、物語で人が死んでいようが街が破壊されていようが一切恐怖を感じない、ただ唖然としてしまう、もしかすると平和さえあるのかもしれません。
おわかりかと思いますが、管理人はちっちゃい人間であり、ヒトキワ荘も簡素な造りをしておりますので、吹き飛ばさないようにお願いいたしますね。住宅保険必須!
今後も、読者の知も快楽も常識もぶった切るすばらしい作品をお待ちしております!
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