103号室 雨月さん

【笑いのヒトキワ荘・第四回大会】昔の笑いで出ています杯

https://kakuyomu.jp/user_events/16816452221219777205



疾走するドコメディ……。

紛うことなき笑激の作品である──。



真夜中の珍景/雨月

https://kakuyomu.jp/works/16816452219918590898



【ヒトキワ荘・作品分類】

コメディ作品(スポーツ部門)。



【作品概要】

主人公はストレス発散もかねて真夜中のウォーキングを日課としている女性。

いつもの遊歩道で、その日、信じられない光景が、いや、「珍景」が突然瞳に飛び込んできた。彼女はとたんに怒りに駆られる。こんな変態クソ(中略)に負けるほど、私の走りはなまっちゃいない―――。




【管理人室より】

今大会規定の新規作品ではないとはいえ、2021年4月27日公開の比較的新しい作品です。そして圧倒的なおもしろさ。

文章がたまらなかったです。リフレインを効果的に使って、しつこくなく、むしろ癖になるようなフレーズで畳み掛けてくれました。彼女(主人公)が過ごしてきた汗と涙の青春時代が伝わってくるようで、どちらかというと、私は「変態」よりもそっちの方がおもしろかった。管理人も小柄な方だと思いますが、運動神経はゼロです。50m走は10秒以上かかっていました。多分、走るときにいつも「向かい風」だったり「なんだか体の調子が微妙に悪い」とかだったり、不運に見舞われていたのでしょうね。主人公さんがとっても羨ましい。かっこよかったです。ありがとうございました。



【note掲載の講評】

(前略)

まず言いたいのは、私はこの作者様の文章がただただ好きです。読書がお好きで本をたくさん読んだらこういう文体ができあがるのでしょうか? なんと言ったらいいか、一言でいえば「男前な彼女」みたいな文体ですね。非常にかっこいい。個人的にそう感じてしまいましたので、女性を主人公にしたお話が一番「キマってる」と思いました。多分、本好きな方がこの文章読んだら、惹きつけられますよね。「モデル体型の人が颯爽と歩いているわ!」という感じで、読まずにはいられなくなると思います。もちろん、好みもあることは承知しています。


今回のお話も女性が主人公。夜、ウォーキングに出かけ、そこで「とんでもないもの」を見てしまう。そして彼女のハートに火がついちゃいます。怒りの火がね。


読まれていない方は私が愚かにもネタバレする前にぜひ読んでほしい。コメント欄で作者様が、北海道で似たような事件があって、それでこの物語を書いてみた、とおっしゃっていましたので、わたくし今回、調べてみました。で、出てきたのがこの事件。


北海道S市の路上で下半身を露出した男が現れる。

頭に女性用のパンツを被り、裸の胸にはブラジャーを着け交差点に立っていた。(逃走し、行方知れず)


新しい変態が登場。いや、だいぶ前の事件かもしれませんね。これは作者様がおっしゃってたものとは違うかも。ということは、こういう露出狂、結構いるってこと? 何人もいちゃ困るんですけど! 犯罪ですからね、皆さん! 下着は下に付けろよ! いや、家の中で一人で楽しめ!


話を戻しまして。今大会は「古い」がテーマですね。この作品、特に単語などでの古さのアピールも目立たず、「(全裸の)変態」は性癖、犯罪として古いも新しいもない気がします。ですが、「スポ根の香り」と、主人公がキメる「若干くさめなフレーズ」に古臭が漂っていました(「古臭」などという単語はないかもです、つくりました)。主人公は学生時代に陸上で鳴らした女性。素っ裸で疾走する変態に「あんなやつに好き勝手走らせておけるか!」(このセリフは作中にはありません)と、いわば、スポーツマンシップに反する人間を一敗地に塗れさせてやろうと、男を追って走りはじめます。


作者様のように文章を駆使できる方が効果をわかった上で使われる「決めフレーズ」──キラリと光ってたぜ、バッチシよ!(古いつもり)。いいです。コメディだからこそ、恥ずかしがらずに堂々キメた。なんか、笑いに「全振り」した、世界の事件を紹介する番組などでよく見られる「再現VTRのふざけたナレーション」的な雰囲気が出ていました。


「デンデン太鼓」は言わずもがな、ですが、「ぽっちゃりおばちゃんが慣れ親しんでいる(略)遊歩道」も「変態スニーカーマンッッ!」もすばらしかったです。



それから、お話を4話に分けていますが、このつなぎ方、流れも大変よかったです。うまいとしか言いようがなかったですね。私のような者が僭越ですが、主人公の女性と作者様に笑いの大会での「全国3位」(?)の栄誉を差し上げます。


ああ、この作者様にはまたぜひコメディを作っていただきたいですねえ。なにか、ふさわしいアイディアに出会ったときには、ぜひともよろしくお願いいたします。




【管理人がつけたあだ名】

妖艶である、ただひたすら妖艶な、贅肉ひとつなき美しき文体の人



【副賞】

103号室の鍵と、メーカーを超えた驚異の飲み物の詰め合わせ「リゲイン」「鉄骨飲料」「はちみつレモン」ひと夏分を(想像世界で)差し上げます。

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