「カクヨム」横丁 〜笑話通り〜


 

 遠い昔に置き忘れたままの家人たちの笑い声を懐かしんで、ふらりふらりと来てしまったようですね。


 そう、ここは誰もが知っていて、誰もが忘れてしまう街、「カクヨム」横丁にある「笑話しょうわ通り」。

 いつかみんなで笑ったはずなのに、あの話、なんだったっけ? 

 仕事で疲れて帰ったときにも、あなたの話の更新お知らせが私の心を和ませてくれた。そのタイトルに、入れたばかりの差し歯も飛んだ……。


 

 さあ、涼風に吹かれて、ちょっとプラプラ歩いていきませんか?

 あの曲がり角の向こうに、まだまだあなたの知らない笑いの風景が、眠らせたままの記憶の原風景が、あるのかもしれませんよ。


 いや、でも、別になくったっていいんだ。あなたの気が向いたときに、読んでいってくれたら。いつでも、待ってるから。



 ※こちらでは、管理人が最近読んでおもしろかった「カクヨム」の笑いの作品をランダムにご紹介しております(笑いのヒトキワ荘参加作品ではありません)。古くて新しい、胸踊らせる「笑話通り」の風景を、あなたの好きなナレーションの声と共にどうぞお楽しみください。




 石畳を歩いていると、小さな家から軽やかな笑い声とキッレキッレなツッコミが聞こえてきた。「ッ」の場所、なんか変じゃない? ううん、そうでもないよ。問題なのはさ、あなたがあなたの理想に導きたい、格助詞だから。


格助詞2020〜短文作成〜/真花

https://kakuyomu.jp/works/1177354054934576982




 この路地を抜けると「坂」があるよね? お好み焼き屋さんで寄り道した女子高生たちがのぼっていく。体育館でラケットを借りて、卓球しようぜって、少年たちが駆けていく。彼らが浴びてる風を浴びたい。きっと明日はまた違った風が吹いているから、今しかないの。


坂/しかまさ

https://kakuyomu.jp/works/16816452220934985085




 耳をつんざく蝉しぐれの中にいるのに、あの青年はなぜ震えているのだろう。この通りを行き交う人は、彼の呼び声が聞こえないのだろうか。本当の幸せはどこにあるのと心はいつも叫んでいる。あなたの心だってほら、例外じゃないから──音量には注意して。


マッチ売りの藤原竜也/ちびまるフォイ

https://kakuyomu.jp/works/16816452219893227423




 あ、あの親子、また歩いてる。買い物かな? 食事かな? それとも仲良く銭湯? 時代は変わっても家族の姿は変わらない。そう、たとえばだけど、あなたのお父さんがゾンビになっても、実のところなにも変わらないんじゃないかな? そう、思わない? そんな親子に私はなりたい──全108話。


父ゾンビ/塩塚不二夫

https://kakuyomu.jp/works/16816452218855403775




 映画の中できれいなドレスを着て、素敵な男性とダンスをしていた華麗な令嬢たち。ああ、なんか、思い出しちゃうな。あるときたった一つのデザートが、あなたと私を悪魔に変えた! なーんて、そう、夢みたいな物語なんだけど、たまに映画なのか、ドラマなのか、現実なのかわからなくなるときがある。え? そんなことある? 本当に? 


ティラミスと3人の令嬢/しらす

https://kakuyomu.jp/works/16816452218537656368




 街の電気屋さんに「Cタイプの変換器ありますか?」って訊いたんだけど、「なんですか、それ」って言われちゃった。ううん、もういいんだ。ちょっと転校生の男の子の前で知ったかぶりしてかっこつけてみたかっただけだから。本当はね、私の心の提示装置にあなたへの気持ち、映して見せてやりたかったの……残念!


コンピュータvirusくん/鮭さん

https://kakuyomu.jp/works/16816452218427829501




 さっきからずっとこの通りを歩いていて、いつまで続くんだろうって、永遠に動かない時間の中をさまよっているんじゃないかって気がしてきちゃった。ただの夢想だけどね。私ね、思うんだ。ときにホラーはコメディだって。双方向はある意味一方通行なんだって。私の痛みがあなたの痛みと同じなら、同じ場所に貼った絆創膏を、同じ月を見ながら剥がそうよ。せーのって。うん、風呂上がり。


疑似的な行為/南のと

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921999436




 ええ? もう終電? もう帰らなきゃならないの。まだ早いよ。「帰りたくないな〜」浦島太郎が言ってる。「帰りたくないな〜」三塁ランナーが言ってる。「帰りたくないな〜」オリンピック選手団が……ああ、これ以上はだめ、いろいろ、なんか、とにかくね、笑いの駆け込み乗車はご遠慮ください。慌てなくてもいい、物語はいつでもあなたを待ってるんだよ。


終電は早し走れよ乙女/いずも

https://kakuyomu.jp/works/16816452219031356569




 たまに見かける素敵なカップル。たまに聴こえる素敵なメロディー。私たちの暮らしには、そんな「素敵」がやっぱり必要だよね。こればっかりは昔から変わらない。そしてきっと未来もそんな感じじゃない? 私今でもね、そんな感じで、ラジオとか聴いてるの。ラジオ……レディオ? ラヂオ? え? なに?


シルバートゥースレディオウ/金澤流都

https://kakuyomu.jp/works/1177354054950575594





 懐かしい風景なのに、自分の記憶と一つも重なり合わないことがありませんか?  たしかに自分が経験したことなのに、そこに知らない記憶が紛れ込んでいることがありませんか? そこに無限の可能性があることを私たちは知っています。まるで海を隔てた遠い国で、自国とそっくりな昔話が存在するように。あなたはだから微笑んでいる。脳を裏切る物語なんて、ほんとはないの。私の国の、たしかな物語……。


回文俳句集「寝つきたき夜は見張るよ北狐」/目

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884446425





 通りの建物がふと途切れるとき、その向こうに蝶々が揺れる茶色の畑が見える。あなたがふっと本から電子端末から、顔を上げたとき、その目に映る異国の白い街並、真っ白な外套を着込んだ峰々がよぎることもある。それはきっと幻じゃない。なんていうか、その……。雲の中の世界のことだから、クリックひとつで飛んじゃうんだよ。そう、世界は今、気持ち次第でどこまでも繋がっていく。


ワイトハイネン伯爵 ~超ドイツ風笑い話~/タケ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921890481




 ね、たまに見るよね? 「**探偵社」って看板。「秘密は厳守いたします」っていう文字。通りの電柱、壁のポスター、駅の電光掲示板。街往く人は誰も見向きもしないけど、その胸にはたくさんの事件をほんとは抱えてんじゃない? たまには荷物を下ろそうよ。誰かを訪ねて頼ってみよう。誰かが救ってくれるというのは幻想? そうかしら。あなたは自分を救えたことあるの?


仏頂面のララバイ/つくお

https://kakuyomu.jp/works/1177354054887839071




 しっかしこの通り、ごみ一つ落ちてないじゃない。ジャパニーズ・クールかしら? いや、そうじゃないの。なんかね、とっても潔癖症なボクサーがいてね、それに輪をかけたようなレフェリーと、少なく見積もっても五十倍相当らしいセコンドと、それからお巡りさんと、掃除夫と、工事現場作業員さんと、警備員さんと、サンドウィッチマンと、ちんどん屋さんと、ちり紙交換屋さんと……ええーっと……えーい、みんなまとめて綺麗好きだぁぁぁぁぁー!


潔癖のボクサー/みつお真

https://kakuyomu.jp/works/1177354054934436550





 夕涼みもいいけれど、月夜の散歩も素敵でしょうね。この街を歩いていると、いろいろな人・出来事に遭遇するわ。え? あなたもそう? そうよね。なににも遭遇せずに済む通りなんてそんなの存在しないわよね。わかってる。皆まで言うな。

 私のネタが尽きた頃、お母さんが呼ぶ声がする。「そろそろご飯よ〜」ああ、それが理想。そうじゃなきゃ、どこにも帰れないまま永遠に歩き回っていなきゃならないじゃない。


異聞 月下の数え歌/朽木桜斎

https://kakuyomu.jp/works/16816452221407656292





 さあ、この通りももう、そろそろ終わりが近づいてきたようですね。この先歩き続けても、そこはもう名前の知らないよその街。

 あなたが「カクヨム」横丁で過ごしてきた一年はどんな一年でしたか? そこでは誰が笑い、誰が泣いていましたか? あなたの胸の感動に、誰が反応してくれたでしょうか? できれば今度「粗茶ですが」でも飲みながら、あなたが歩いたあなただけの通りの風景を聴いてみたいな。



幽霊の優衣さんと過ごす365日は、ツッコミスキルが必須です。/猫とホウキ

https://kakuyomu.jp/works/1177354055536341110





 

 ここに挙げた風景は、あなたが再び訪れたとき、増えていたり減っていたり、クリックしても見つからなかったりすることもあるかもしれません。


 街は人々の思いによって、いかようにも姿を変えてしまいます。それは仕方がないことだから、私はこうして今できる精一杯をお話ししているのです。


 ではまた、どこかでお会いしましょう。私は今この瞬間にも口を開けて笑っているかもしれないし、あなたを笑わせたい一心で、眉間に皺を寄せて怖い顔をしながら、物語を必死に編んでいるかもしれません。



 もし気が向いたらまた来てくださいね。待っていますよ。「カクヨム」横丁で。








 







 

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