101号室 椰子草 奈那史さん

【笑いのヒトキワ荘・第四回大会】昔の笑いで出ています杯

https://kakuyomu.jp/user_events/16816452221219777205


僕達は昔の笑いでしか笑えない……

青春以上に燦然と輝いたのはこの作品でした。



僕達はFが弾けない/椰子草 奈那史

https://kakuyomu.jp/works/16816452220843041398



【ヒトキワ荘・作品分類】

青春ドラマ・コメディ



【作品概要】

あるとき家の整理をしていたら埃にまみれたギターケースを発見した。

ただちによみがえるあの頃の思い出。それは14歳の少年が女の子と妄想に夢中になって夢打ち砕かれた、甘酸っぱくてこっ恥ずかしい青春の物語である。



【管理人室より】

企画開始当初は、こういった作品を101号室に選ぶとは想像しておりませんでした。ギャグや仕掛けで笑わせようというよりは誰もが(ところどころ)思い当たるフシがありそうな「懐かしくておかしい」という味わい。語り口がとても魅力的で、「笑ったら失礼になるのではないか」と思えるほど、胸にじーんとくるものがありました。こちらはもちろん褒め言葉です。むやみにふざけて笑わせることだけが笑いではないので。一生懸命生きていたあの時を心を込めて笑おう──ノスタルジア、フォーエバー。




【note掲載の講評より】

(前略)

今作は、ほんともう、素敵すぎる! 若かりし頃にギターに夢中になりました、という青春あるある。中心となっているのは、ギターをよく知らない人さえ「聞いたことがある」のかもしれない有名なFコードの話ですね。そのビギナーギター弾きの難関であるFコードに振り回され、鼻をへし折られた過去を、非常にジェントルマンな語り口で、自嘲も込めたユーモアを交えながら紹介していて、大変好感度の高い物語でした。


今大会は「古い」がテーマですから、管理人は作中の単語にもいちいち反応して一人盛り上がっていました。漫画雑誌の裏表紙に載っていた通信販売の初心者向けギターセット! ファミコンのゼビウス、それから私は残念ながら存じ上げなかった(決して作者の言う「若い子」に該当しているわけではないはずなのですが)、ハートマン軍曹も調べさせていただきました。この辺のチョイスもそれぞれの作者様の興味とセンスが窺えていいですよね。


言い方がおかしかったらすみません。とにかく作者様に対し「料理がうまい人」という印象です。自分で選んだ材料を用いて、それをてきぱきと無駄なく美味に仕上げ、客(読者)を唸らせる。同じ材料を手にしても同じことが全員にできるわけじゃないんです。前参加作品の『狼を憐れむ歌』にしても、ネタは「ヒヤヒヤ路線・偽エロ小説」なのですが、装いは海外小説のようなハードボイルドで非常に「クール」でもありました。その辺がうまいな、と思った。


こちらの作品もそう。過去の自分を突き放してくだけすぎるのは抑え、「学生時代の思い出」という叙情の方を大切にしました。そして最後、「親バカ」の反対、「カエルの子はカエル」にしておきたい主人公を裏切る展開が待っていたにも関わらず、きっと学校という狭い世界でなら息子よ、活躍できるぞ、と嘯(うそぶ)いてみせる小粋なオチ。コミックソングまではないですが、日本の古き良きポピュラーソングの歌詞のような微笑ましい着地でしたね。


きれいに出来すぎていたり「好感度が高い」と言われることを嫌う作家さんもいらっしゃるでしょうが、こちらはだからといって決して退屈ではない魅力的なハートウォーミング・コメディ。ただ「ラブコメ」か? と言われたら「むむむ」という気はしますけれども、作者様がコメントで「ポチッと」押してしまったと書かれていまして驚きました。まあ、ジャンルについてはいいでしょう。とにかく堂々オススメできる素敵な作品です。




【管理人がつけたあだ名】※住人さんには管理人が勝手にあだ名をつけてしまいます。


 全小説ジャンルがあなたに手を挙げる、ジェントルマンな狙撃手



【副賞】

101号室の鍵と、店長が選ぶファミコン・カセット20本入り福袋(中身についてはこちらにお任せください)を(想像世界で)差し上げます。



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