その他の短編作品の感想です

【笑いのヒトキワ荘・第一回住人募集中】ドタバタコメディ杯

すばらしい、すばらしい作品たちでした! 全42作品。

https://kakuyomu.jp/user_events/1177354055088183278


毎回すべての作品に感想を寄せることは難しいでしょうが、年末のお休みもありましたし、私も挑戦してみました。簡単な感想で申し訳ありませんが。

※あくまで私個人の意見ですので、参考程度にお願いいたします。


参加番号順に書かせていただいております。そして長編小説を投じてくださった方、すみません、読む時間が取れませんでしたので、感想は書いておりません。またご参加お待ちしております。


以下、感想になります。↓↓↓



『お笑い研究所(仮)』――βテスト実験版/永遠こころ


昔話などを取り入れていて、そういう意味でわかりやすくとっつきやすかったです。私がすばらしいな、と思ったのは、お話の短さとあっさり感。ともすれば凝りすぎ笑いにこだわりすぎて盛りすぎることも多くなりがちなのですが、作者さまは匙加減を知っておられますね。魔王と勇者、悪魔くんと天使ちゃんのシリーズは元ネタなしの作者様のオリジナルでしょうか? 漫才っぽく仕上げたところ、その職務怠慢的な空気が私にとっては意外性があり、おもしろかったです。このお話にはこの長さがちょうどいいと思います。私は特に「灰かぶり姫」が好きでした。またのご参加お待ちしています。




届け、α線/若狭トモ菌


くわしく存じ上げませんが、かなり熟達した書き手さんなのかなと思いました。最初はプロの作品なのかと思いましたもの。こういう例えがいいものかわかりませんが、NHKの「サラリーマンNEO」を見ている気分になり、部長が私の頭の中で生瀬勝久に何度もなりかけました(でも、なんかちょっと違う)。いいや、やはり入江雅人がよさそうかな? ……それはともかく、登場人物二人のセリフだけでここまで笑わせてもらえるのか、という感じ。しかもとても知的なコントですね。こちらの作品はすでに一定数以上のユーザーさまから評価が与えられているし、住人選考はどうしようかと悩みました。私が最後まで引っかかってしまったのが「α線」ですね。検索で「アルファ粒子」について調べてみましたが、私の脳に理解できる範囲を超えていました(この辺は笑ってすませるしかないようです)。部長が読者のためにもいろいろ説明はしてくださいましたし、たしかに「紙や数センチの空気層で止められる」というのも一般的な常識なのかもしれません。ただ情報が意外に硬質で高等世界だったので、話が長くなってくると少し気持ちが離れていきそうになってしまいました。二人の会話の緩急があまりにも見事だったので、もっとこの辺とっつきやすい感じだったらよかったのかな、と思ったわけです。あくまで私は、ということです。また新作などがあればぜひ読んでみたいと思える作者様の腕前、本当にご参加ありがとうございました。


余談ですが、私が今回これを書くのに使ったGoogleドキュメント、「α(アルファー)」が出せないの、どうなってるの? 若狭さんの文をコピーさせていただきました。それとも私が出し方を知らないだけなのか……。わかる方、教えて。




黒歴史川柳/暗黒星雲


若者たちの応援歌(?)。誰もが似たような覚えがあるんじゃないかという青春カレンダーを見ているような、青春エッセイというような、素敵な作品だと思います。ネタはちょっとひやひやするものもありますが、まあ、時効ということで……。ご参加ありがとうございました。




大事件ピクニック/やすだ かんじろう


誰もが共感できる朝の占いからはじまって、楽しい仕掛けを含んだ物語。主人公「俺」の語りもおもしろいし、この短さでここまで家族のほほえましいドタバタを描いた腕前、素直にすごいな、と思いました。タイトルや内容紹介で結構「盛っちゃってるな」と最初は思いましたが、何度も読んでみるとそう違和感ないことに気づきました。ほのぼの作品として好きです。また機会がありましたらご参加お待ちしています。




【短編】季節外れの年賀状/宜野座


天然ボケの叔母さんの話と言っていいのでしょうか。笑えましたが、ちょっとしたホラー作品のような気もしました。短いお話ですから、あれこれ感想は必要ないかと思います。流れと展開はすばらしかったです。




落語 三日坊主/紫 李鳥


秋風亭流暢師匠の落語、すでにファンも多いことと思いますが私も大好きです。紫さんの作品は短編を中心にいろいろ読ませていただきましたが、どれもこれも和テイストで女性的な感性というか美観をたたえていて、いつも「いいなぁ」と、うっとり読ませてもらっています。この作品、もしかすると書き下ろしでしょうか。私の企画にもったいない、大変ありがたいことと思いました。当然住人選考させていただきましたが、今回は力作が多く、私もたくさん悩ませてもらいました。ちょっと生意気な金太くんのお話。後半、母親の愛情、子どもたちの友情などもあり、なんだかしんみりさせてもらいました。私は鬼ごっこの話があがったところ、金太が衝立に隠れた意図など、もう少しわかりやすく表示されていた方がよかった気がしました。「もういじめない」と約束しておいてまた「いじめる」という方向へ行くのかな……なので底意地悪く友達が仲間を呼びにいってる間に姿をくらましてしまった──ということでしょうか。「かくれんぼしてた」とうそぶいてみせた金太のオチはよかったです。子どもの遊びがテーマなので大人の屁理屈は必要ないかもですし、師匠の語りとして「読ませる」という作品の魅力はいつもどおり、と思いました。また機会がありましたら素敵な作品を読ませてください。お待ちしています。




僕と羽虫の一時間戦争/RPG


ただ虫と戦う、というだけなのにコミカルに描けて誰もが共感できる物語。タイトルは某有名な映画を彷彿とさせてわかりやすくて好きでした。少し気になりましたのは、「腸が煮えくり返りそう」「千載一遇のチャンス」「辛酸を舐めさせられ続けて」など、硬めの慣用句のような言葉が多投されていて、それがコミカルさとの乖離をやや生んでいるように感じました。その辺ステレオタイプになってしまったのではないでしょうか。少し気持ちが乗りづらかったかな、というところです。物語がシンプルなので文章で笑わせようというのは私も賛成です。できたら作者さまのオリジナルな言葉や表現で読んでみたかったかなと思いました。ゲームシナリオを書いてらっしゃるということで、これがもし日常の物語ではなく本当は「ゲームの世界だった」となれば、この文章の印象も変わったかもしれません。ともあれ、これは私の個人的な感想ですのでお気になさらず。作者さまは楽しんで書かれたのではないかと思います。プロフィールにありましたセリフだけの作品、私も一度読んでみたいです。




最っ高に面白い物語/名無之権兵衛


着想が効いてるエンタメ作品ですね。ドキドキのドラマになっています。ひとつだけ、内容紹介は笑いを狙って故意に煽っておられるのでしょうか? 私はもっとクールな雰囲気で攻めてもいい気がしました。個人的な意見で申し訳ありませんが、物語がかっこいいのに「もったいない」と感じずにいられません。ともあれ、作者さまの物語愛が感じられる作品。また機会がありましたら、私の企画にご参加いただければうれしいです。




架空寄席(カクヨセ)/ロックウェル・イワイ


漫才、落語、マジックとバラエティーに飛んでいるし、内容も単色にならないよう工夫されている。ここまでの完成度のものを七話も作れたという作者さまの腕に驚きです。ただちょっと「下の話」が多すぎましたかね? あと芸人さんのお名前がちとかわいそう……。これで笑わせようという魂胆なのかもしれないし、「これがいいのよ〜」という読者もいることでしょう。この辺はもう、好みの世界ですね。また読ませていただきます。




タイムリミットです、小河くん/白里りこ


この作品、大好きでした。ぜひヒトキワ荘の住人になって頂きたかったのですが、今回は管理人が驚くほどの力作があったために選考できなくてスミマセンです。物語ですが、シリーズ化されているようですね。まずどこか常識ある悪魔らしくない悪魔の登場。5分間という時間制限がスタートし、廊下に飛び出す(放り出される?)小河くん。ドラマなどでよくあるように、長〜い廊下が目の前に浮かび、そこをまっすぐカメラが追っていくように流れていく物語。ファンクラブ会員など、モブの生徒たちにも口調に個性があり、セリフを読んだだけでどういう人物なのか想像できるわかりやすさもお見事でした。トランクスにタトゥーに鼻から牛乳などはっちゃけた展開もあったのですが、まったく下品な感じになっていないのは、作者・白里さんの筆致によるものと思います。またコメントした私に、悪魔の裏設定なども教えてくださり、物語をさらに楽しむことができました。本当にありがとうございました。また機会があれば読ませていただきます。




今宵、魔王様が復活します。/雪桜


魔王様、異世界ファンタジーと聞くと私のような泥臭い人間は敬遠してしまいがちですが、文章がとてもきれいで、表現もかなり手慣れた方、という感じで大変読みやすい作品でした。物語もよかったと思います。◯◯するのに◯年かかってしまった──というのは結構定番のネタですからかえって扱いが難しかったのじゃないかなと思いましたが、登場人物のやりとりで楽しく読めて、ファンタジーでおなじみな型でありながら、作者さまの腕を感じられたところが魅力になっている気がします。オチが思考タイプでいいですね。読者の好みもあると思います。魔界が舞台にしては少しおとなしすぎるかな? とも思えるかも。でもまた機会がありましたら読ませていただきたいと思います。




物語終了課―料理バトルものは料理できる人が書いた方がいいー/lachs ヤケザケ


物語をなんとかやりくりして終了させるというお役所仕事がなんともユニークでした。本間さんと小牧さんのやりとりもいい。長編があって、派生作品なのですね。一定数評価されている理由もよくわかります。物語は異世界ものがほとんどなのか、それとも物語なら全ジャンル取り扱っている役所なのか。変な意見で申し訳ありませんが、本間さんが五十代くらいだった方がうれしかった気がする。三十代でくたびれてるのは、かわいそう。ただ、本編を読んでないのでキャラクターの魅力が掴みきれなかっただけなのかも。また機会があれば読ませていただきます。




生徒「先生のバナナはオヤツに含まれますか?」/ 嘉白 狐猫 Kashiro Koneko


この作品にあれこれ感想を付け加えるとおもしろさが半減するかもしれませんね。独特の内輪ノリ、という感じもするし、練られたギャグの世界という感じもする。不思議な作品でした。




改造人間サマーン~地獄変~/トモモト ヨシユキ


この作品、長編連載中ですが、途中まで読ませて頂きましたし、好きな作品ですので書かせてもらいます。ヒーローものは数多くあれど、こちらは笑いを主体としていたので私にも読めました。主人公がサマーンになったきっかけの「雑さ」、サマーンのあり得ないくらいひどいヴィジュアル。作者様はもしかするとマンガがお好きな方なのかなと思いました。少年マンガのようなノリ。雅ちゃん、田中君、所長など個性的なキャラが目白押しな中、唯一読者側にいるノーマルな主人公(いろんな意味で……?)──というスタイルも王道で、わかりやすく読みやすかったです。テンポもいい。私は公開分全部読みきれていません。ライバルキャラとか最強の敵キャラとかを投じて、これから盛り上げていくところかもしれませんね。シンプルに仕上げているだけに、展開とか物語の長さなどの調整が難しそうだな、という感じはします。トモモトさんの腕の見せ所ですね。私はもっと注目されてもいい作品だなと思いました。私の企画に載せてくださり感謝です。また楽しいお話をお待ちしています。




新しい大仏とフライデーの表紙(140字小説)/塩塚不二夫


もう出だしからして引き込まれました。自分のあられもない姿を大仏として見せられたら、そりゃ言葉も失う……。塩塚さんの作品は、内容紹介の部分ですでに半分以上、読者に中身が知られてしまうにもかかわらず、ついついどういうオチになるのか気になって読みたくなる──しかもほとんどがっかりさせないクオリティーですから、それが本当にすごいと思います。大仏とフライデーという両極にありそうな二つを組み合わせたのもおもしろいし、住職のオチが効いてる。何度読んでも味わい深いところがあります。次回、シュール&ナンセンス杯のときに作品があればぜひ読ませていただきたい。101号室をぶんどってください。お待ちしています。




首無し少女と行きましょう! 〜悪夢?の廃墟探検〜/猫とホウキ


抑制のきいた語り口が大変魅力的で、書き下ろし作品ではないですけれども、住人選考を結構迷ったほど好きな作品でした。タイトル群も語り手である幽霊の口調そのままで、キャラクター設定がしっかり作られているだけにまるごと作品世界を表現できているのがすばらしいです。(引用)「とりあえず、私も一階に移動しますかね。ワープ……はできないので、走ります。」こういったちょっとしたギャグも幽霊さんのセンスの良さ(つまり作者様のセンスの良さですね)が窺えます。霊感がむだに強くて超鈍感、という設定の蒼平さんも、別の物語にもまた登場してほしいと思えるくらい好きになりました。作者の猫とホウキさんはほかにも作品を投じてくださっていたと思いますが、こちらの方がお気に入りでしたので、こちらの感想だけで失礼いたします。




どこにでもいるドラゴンマニアの美少女が凶悪ドラゴンを召喚してハッピーライフ!/天太


語り口はとても楽しく読みやすい作品だったと思います。カレーの皿を使って召喚するというのがなんともナンセンステイストでいいですね。実は私も福神漬けの中のレンコンが大好きです。物語ですが、かわいらしいファンタジー、キャラクターものですね。もし可能であれば、せっかくなんでブラッキオスに家の外でも大活躍してほしかったかな、と思いました。もっとドタバタ感が出たのではないかと。家の中だけで完結してたらいけないわけでもないでしょうが、少しスケールとして物足りなかったかな。暗黒世界の帝王様ですからね、これからの活躍を期待しています。




みさきと私の五分の戦い/さいとう みさき


即席麺も高級品となるとこういう戦いになりますよね。お二人のいろんな意味での熱い戦いが楽しかったです。私は照れ屋さんなので(こういうこと言ってる時点で恥ずかしい)ラブコメは絶対に書けそうにない分野。しかも、ケチで器の小さい人間なので、みさきさんの行動を許せない自信があります。そういう意味でなんだか「モヤモヤ」してしまいました。なんだか、あれで収められてしまうのは「解せない」というような……。ええ、強引にあれで結末へ持っていくところがおもしろい作品なんだということはわかっています。わかっていますとも……。また機会があれば読ませていただきます。




ドラゴンの話/ハリー


私はゴルフにくわしくないのですが、サイトで調べさせてもらいました。漫才、とてもおもしろかったです。やりとりをシンプルにして極力既存の漫才師を思い浮かばせないような仕掛けにしているのかもしれませんね。読者が自分の好きな漫才師を当てはめて楽しめるように、といったところでしょうか。作者さまの丁寧な作品づくりに好感がもてます。真摯な作り手、という感じがします。でも贅沢言うなら個性もほしい。ぶっ飛んだギャグもほしかった気がします。また機会がありましたら、ご参加お願いいたします。




abunaiyo/辰木誠一


この作品は読んでみるか、遠慮するか……読者にそういう究極の選択を迫るところが正直ありますね。それが辰木さんの狙いかもしれない。「こんなもの誰も読まない」と予想しながらも真面目にこのような作品の意義について語っていて、そこまで危なくないんじゃないか、結構まともな作品じゃないかと頷かされてしまいました。でも一生懸命に文を追っている自分に笑ってしまった。とんでもない変化球を投げ入れてくれ、私の企画を盛り上げてくださったことに感謝します。辰木さんは他にも実験的なSF(?)作品を書かれていますね。そのうち、文字が壁になっていて行間が迷路になってる作品とか、ノベルアップ+に2行目、ノベルデイズに3行目が書かれていてサイトを移動しないと全部読めない作品とか、そういうゲテモノたちが現れてくる日も近いと思います(もうあるかもしれないですが)。その異色作家メンバーの中に辰木さんが普通に存在し創作し続けていてくれることを私は願う。またトンデモ作品をお待ちしています。




ある朝うちのネコが織田信長になっていたんだけど。/杉浦ヒナタ


私のような者が言うのもなんなのですが、うまいですね。猫が信長のつもりになっているというのが突拍子もない気がしましたけれども、町やお店の名前、猫同士の抗争などでうまくまとめているなあと思いました。バカネコなどと言って軽くあしらいながらも主人公・しずくちゃんのノブナガに対する愛情がひしひしと伝わってくる文章。テンポの速さも、目に浮かばせる場景もいい。素直に入り込める、本当によくできている作品だと思います。少女マンガとかお好きではないですか? 多分、物語の下地というものが体に染み込んでおられる作家さんだと思います。




お騒がせな二人。/鹿路田 マサハル


祐介くんと真琴さんの二人のやりとり、楽しく読ませていただきました。二人の友人とのからみもいいのですが、これは別の物語の続きであるとか、派生したものがあるのでしょうか? 私としては真琴さんのキャラにもうひと加えほしかった気がします。性格が良すぎる子なのかな? あとは地の文ですね。とても淡白でしたので、二人をもっと包み込むような雰囲気のやわらかさがあれば、もっと物語に入り込めた気がします。あるいはもう、セリフだけにしちゃうとか。個人的には、二人にやたらと興味津々な通行人たちがおもしろかったです。




アホ昔話・竹取物語(かぐや姫)/風都水都


この作品も、白里さん作品と同様に最後まで住人選考を悩みました。はっきり荒唐無稽な作品ですよね。休みの日の朝に読んで、大爆笑してしまいました。「奈良時代」と言っておきながら冒頭から時代設定ガン無視ギャグを連発(それは最後まで貫かれていた作者様のこだわり? でした)。しかし石上麻呂や大伴御行など実際の竹取物語に出てくる登場人物も扱い、よくよく読んでみるとちゃんと「竹取してる」というまともさもあり。それぞれのエピソードごとにバラエティーに飛んだ現代風ギャグを(少しも笑いの質を落とすことなく)織り込んでいるところもコント好き、コメディ好きにはたまらない内容でした(かなりきわどいギャグもありましたが)。また、これは私の好みではありますが、「どうやって月に駆け落ちするのか」と石上に問われた輝夜が、お互い肩車しあってそれをくり返していけば行ける──という古典的ジョークを入れてくれたのもよかったです。作者様、なかなかわかっておられる。新世代のギャグのみにせず古き良きも忘れない、その笑いを愛する姿勢に感服し、お腹いっぱい楽しませてもらいました。この作品はもっと読まれてもいいと思います。ただ昔話のパロディーであるというところは定番は定番とも思えるので、住人選考の際、他の作品の方がほんのわずかだけ「ウエイト」が勝ってしまった、というところです。またとんでもない作品ができあがりましたら、ぜひぜひ見させて頂きたい。よろしくお願いいたします。




マジックショー/そのいち


私は好きな作品でした。何度読み返してもきちんと追っていける物語、というものがあります。最近は少なくなってきた人情ものドラマですね。作者様の読者に対する丁寧な説明、ベガスの冒頭のクズさ加減からの往年の人体消失マジックへ流れていく胸打つ展開、そして意外な終焉。私はもっとたくさんの人に読んでほしいと思いますけれども、テーマが「昭和」であるところは少し人気の面で引きを左右するところなのかな、とも思いました。カクヨム内で、あの長々々々……としたタイトルと転生やら魔法やらのディジタル文学が盛り上がっていることを思えば、こういう作品を生み出せる作家さんは貴重だし逆に「めずらしい」となりそうなんですが……。私は応援し続けたいと思います。派手なものばかりがすばらしいというわけでもないと思う。素敵な物語をありがとうございました。




アル中勇者はリハビリ中/髭鯨


RPGコメディ作品ですね。勇者なので戦うためのパワー増強アイテムが必要、それが不運にも酒だったためにアル中になってしまったという悲劇(そして喜劇)。アイディアは大変おもしろかったですが、少し情報量が多く、説明過多になってしまいましたね。一口で言うと「詰め込み感」というものがあった気がします。短いお話なので、もっとシンプルに書かれてもよかったかもしれません。ですが、作者様が描きたかったのがアル中云々アイテム云々ではなく「物語」ということでしたら、設定を活かすためにもっと長い物語でもよかったのかもしれません。酒を使ったダジャレ文はなかなかグッドでした。




便所ロワイヤル/主務


トイレに関する考察、大変に興味深かったです。また独特のセンスをお持ちの作者様だと思いました。いい意味で文章が個性的でした。ただ説が少し乱暴な気もしましたので、もう少し練られた考察で丁寧な筆で書かれてあればもっと笑える作品になったのではないかと思いました。作者様のページを覗かせていただきましたが、小説のキャッチコピーがなんともいえぬ味わいのものばかりで、ほかのものも読んでみたいと思いました。プロフィールもすごく……#素敵です。ぜひまた次の機会に私の企画にぶっとんだ作品を投じていただければと思います。シュール作品なんか、似合いそうな気がします。




神サマ達に八百万回殺された俺はきっと嫌われている。/疾風 颯


これが噂の転生もの? 私くらいの年齢の者には残念ながら「流行りのテンプレ」というものがよくわからず、正直はじめて読んだのではないかと思います。なんというか、横向きのハートなどの記号も含めて、次世代5G的な(?)作品のような気がしました。主人公の心の声を読んでいく形になっていますが、(筆名もそうですが)疾走感がすごくて、ついていくのがやっとでした。「真っ白な空間」というのはわかります。でももう少し心の声以外の、風景描写みたいな、なんらかの部品がほしかった気がする。たとえば真っ白な空間に意外にも花が飾ってある……などなど。蛇足ですかね? それはともかく、独特の脚力というか、若い勢いのようなものを感じましたので、今度また機会がありましたら、私の企画に作品を投じてください。お待ちしております。




以上が感想になります。また企画、やると思いますので、参加作品をお待ちしております。2021年もよろしくお願いしまーす。

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