103号室 さすがり亜美さん

笑いのヒトキワ荘・第一回住人募集中 ドタバタコメディ杯 2020年、師走の戦いをご覧あれ!

https://kakuyomu.jp/user_events/1177354055088183278


今大会、実は途中まで「これで決まりかな」と早々に決めていた三作品がありました。作品数はこれ以上増えないだろうと軽く思っていたのかもしれません。ところが、期間半ば突如起こった「さすがり&風都の乱」。鮭さん作品は私の中でぶっちぎりだったので、ここで正直に打ち明けますと、杜松の実さん、白里りこさん、さすがり亜美さん、風都水都さん(竹取物語の方)の四作品で厳しい住人選考が(私の脳内で)くり広げられたのです。


仕事のお昼休みに考え、スタッドレスタイヤ交換中にも考え、青汁をイケヤのミルクフォーマーでかき混ぜながらも考え……。あきらかに私のリアルな生活を浸食してくるほどだったので、えーい、めんどくさーい、もう全員住人にしちゃえー、とできたらどれほど楽だったか!


でもそれではあまりにもおもしろくない。悩ませてもらえるほどの戦いになったのは喜びだし、住人は3名くらいにする、と最初に決めていたので。で、選びましたのはこちら──。


非性的ストリップ劇場に集い、秘密裡な炙りに興じる、寄る辺なき人々

/さすがり亜美

https://kakuyomu.jp/works/1177354055244420441


【ヒトキワ荘・作品分類】

ユーモア小説 (言葉遊び系)


【作品概要】

ストリップ劇場風の居酒屋『大黒柱』で夜な夜な行われる『ネコネコワールドツアー』の妖しい「炙り」の会。スペースに取り憑かれた男・田中、会のリーダー的存在・長老、そして私。秋刀魚の煙とともに浮かびあがるのは彼らの孤独な魂、無垢な魂、発せられる慟哭という名の言葉たち。そう、そんな感じ、そんな感じね。



管理人からのお便り


先ほども述べたとおり、ほぼ決めていた住人選考を覆した恐るべしな作品。

すでにこの「笑いのヒトキワ荘──驚くべき住人たち」で、さすがり亜美さんのことはご紹介済みで、私の中ではさすがりさんは「スーパーサイヤ人」的扱いになっていたために(なんか引田天功とかいろいろ言ってすみません)、まさかご参加いただけるとは思ってもみず、そのお名前を我が企画の欄で見たとき「来ちゃったの? 嘘でしょ?」と脳みそが沸騰しそうになりました。しかも「軽く投稿しとくかー」みたいな感じかと思って読んでみたら結構な"お手前"で、「この人は手抜きというものを知らないのか!」と思わず叫んだ。

もちろんご本人は軽く書かれたのかもしれませんが……。


決め手は、そうですね……「書き下ろし」ということもありますが、書き下ろしじゃなくても白里さん、風都さんの作品はすばらしかったので選びたかった思いもありました。それにこの作品はお二人の物語とは違い「ドタバタコメディ」ではない。なのになぜ選んだか──それは、近況ノートにも書きましたとおり、文芸の妙──ですかね。先に挙げたお二人の作品はどちらかというとそこまで奇を衒っていない、丁寧に書かれた作品。で、この作品は正真正銘「奇」です。


物語という物語はほぼない(多分)。作者からのメッセージというメッセージはほぼない(おそらく)。あくまで言葉遊びに徹底した作品でここまで「濃ゆく」なおかつ「珍味」に創りあげたという力量に心を打たれた、という感覚でした。


良かった点


さすがり作品の魅力は、単語と単語のコミカルなパッチワーク、組み合わせの妙、脳内を流れるときに知覚される意味とリズムの心地よさ、といったところ。今作でも、「自費出版的に身銭を切った」「後のパン祭り」「自己憐憫のくたびれもうけ」「希望ましましのトッピング全部載せ」などなど、独特のさすがり流言い回しがまるで脳内にドーパミンを生成してくれる気がして、まさに知的快楽が溢れていました。


それから、韻。私はさすがりさんの他作品も読んでいますが、ここまで韻を踏んでいた、というイメージはなかったですね。私の場合、長編小説の中でときたま遊びで韻を踏みます。これもやりすぎは禁物と思いますが、今作のような遊び満載の中にあると不思議に自然でした。多投されていますが、おそらく「さすがり語」の主張の方が強いので、いいアクセントとなったのかな。


物語も、田中に拘泥こうでいしなかったのがよかった。のっけからすっ飛ばしてきた田中ですが、どちらかというと長老の方がおもしろかったしキャラ立ちしてました(「むーん」よりやっぱり「むんず」ですな)。途中で長老と私が、つまり老人と若者の対立みたくなるのかな、とも思いましたが、この二人もそこまで「頭でっかちさん」ではなく波風も立たなかったっぽい。とにかく一番のご馳走である言葉を咀嚼してもらうことを前面に出し、あとは「お茶漬けサラサラ」的にお茶を濁してくれたおかげで脳みそが混雑せずに済んだ。


オチは「ハイスペック」でいいんですかね? 弐話目を読んだとき、これで参話も大丈夫なのか? と思った不安も、参話目で語られた主人公「私」の会に入ったきっかけなど読者に応える流れもあり解消されました。なにより言葉のクオリティーが最後までまったく下がらなかったのがすごかったです。


ところで、「マカロン先生」って一体何者ですの? 



さすがり亜美さんへ


管理人がつけたあだ名  

「言葉はほぼ彼女の眷属 〜なので『私にも使わせてください』ってお願いしに行くよ〜 だからもうすぐスペース埋まる予定です」

(長いなー。でもカクヨム風)。


さすがりさんの作品、最近もいろいろ読ませていただきましたが、本当に、覗けば秀作ばかり、という感じです。恐ろしいよね。

最初はちょっと怖い作品を書いてらっしゃる方なのかと思っていましたが、ユーモア作品もたくさんあり、人間の滑稽さというものを旨味にしたその作風に、使われていることがうれしそうな言葉たちの躍如に、私の心は毎回激しく揺さぶられています。


長編の方もぜひ読んでみようと思っております。私はサイト投稿素人作家としてはまだまだ新人なのですが、自分の好みの作品、作家さんに出会えて、続けられるモチベーションを与えてもらったことが本当にうれしいです。


これからもユーモア短編、ありましたら遊びに行きます。変なノリになってるときがあってコメントやらかしてることもあるでしょうが、鼻で笑ってあしらっていただけたらと存じます。103号室、次の企画までご自由にお使いください。もうなんらかの栄誉はいくつか手にされていますでしょうか? ヒトキワ荘というボロアパートの味わい深い部屋はさすがにもらったことのないめずらしい賞品だと思います。ここでまたまた奇怪な作品を生みだしてください。


追記、これからも企画にご参加いただけるのでしたら喜んでお迎えしたい。他の方にとっては脅威でしょうね。でも私の脳みそはきっと沸騰します。今後もなにとぞよろしくお願いします。


ヒトキワ荘・管理人 崇期より。

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