濃紺と銀色ー8
「……は!?」
ぐるぐるぐるぐるぐる。
屋上で感じたわけのわからないあの気持ちが、この体の中に一瞬にして戻ってきたような気がした。
「好き……って何が?」
「ミント」
「……はあ」
その答えに、後輪の留め具に引っ掛けていたローファーの踵が、ガクッと滑る。
同時に、この体の中のぐるぐるの流れが一気に堰き止められて、行き場をなくして困惑するのを感じた。
「星野さ、いつも旨そうに食ってるじゃん。チョコミントとかミントタブレットとかこの」手に持った当たりの棒を、陽太は再び軽く振る。
「アイスとか。ミント好きなんだろ?」
言われて改めて思い返す。食べ物に限らず、リップクリームはアプリコットミント、ほんの少しだけ香らせているフレグランスはラズベリーミント、なんならミントフレーバーが一般的な歯磨き粉に至っては、ミントをそのまま食べているかのような味が売りの「トリプルミント」のものを使っている。
と言うことで、確かにわたしはミントが好きだ。でもそれがどうしたというのだろう。
「なのに、さっき食ってくれないしさ、ガム。あれもめっちゃミント味なのに」
「……いや、食べないでしょアレは」
まあ、そうだよね。わかってるけどさ。陽太は笑って、再びペダルの空漕ぎを始める。
「星野は、ミント味のどういうとこが好きなの?」
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