濃紺と銀色–7


 びしょ濡れになった当たりの棒を軽く振りながら、陽太が戻ってくる。自分の自転車のサドルに跨り、カラカラと音を立ててペダルを空漕ぎしながら彼は言った。



「この音さ、あれに似てない? 福引のガラガラ回すやつ」



「えー? もっと派手なジャラジャラいう音じゃなかったっけ?」



 という私の反論はあっさり聞き流されたらしい。当たんねーかな一等賞。謎のメロディをつけたそのフレーズを、陽太は空漕ぎを続けながら呟いた。



「おれ、実はさ、初めてなんだ。こういうので『当たり』引くの」



「え、だって絶対当たり引く自信あるって」



「ん、あれ、嘘」



「なんだよー、屋上では大いばりで『王様を信じろ』とか言ってたくせに」



「あのさ」



カラカラカラ、カラ、カラ。



車輪の回る音が止まる。



 ふと、こちらを振り向いた陽太の顔は、いつになく妙に生真面目で。



 私の目は、少しだけうろたえる。



「何?」



「好きなんだよね」

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