濃紺と銀色–6


 まだ三分の一も食べていない手元のコーラ味のアイスを、私はちらりと見る。そのアイスの中に「当たり」が隠れているかどうかはまだわからない。



「いや、別にそれ普通に私が食べたら、私が当たり引いたってだけだから。むしろ当たりを横から取られて、好きなもん食べられなかった上に追加アイスも食べられなくて、結局損したってことじゃん馬鹿」



「星野はよどみなくおれに馬鹿って言い過ぎ。今度馬鹿って言ったら」



「言ったら?」



「……んー、この当たりの棒を洗わずにベタベタのままプレゼントする」



「……それはすごい嫌がらせだ」



「嫌がらせしたいんだよ」



「なにそのすごい主張」



「食わないと溶けるよ」



 突然手元を指差される。ちょっと洗ってくるわコレ、とコンビニの駐車場の端にある水道に向かう陽太の背中を見ながら、私は慌てて、軽く液体になりかけていたコーラ味アイスの先を大きめにかじった。唇と前歯がひんやりと冷たい。



 久々に食べるコーラ味のそれは、いつも食べるミント系よりも、ぺたりとした甘さがちょっとだけ濃くて、舌の先が少し痺れるような感じがした。でもそれは決して不快な感触ではなくて。



「……たまには違う味食べるのも悪くないのかも」



「だろ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る