1.ナイトメア
廃ビルを出ると、そこには武装した年齢性別様々な人たちが集まっている。一見して共通点のない彼らが、俺の仲間たちだった。
カトレアと共にその人だかりに近付く。
すると、数名の仲間内でも最もガタイの良い男性がこう言った。
「あぁ、カトレア様。本日もよろしくお願いします」
「よろしく、賀東。他のみんなも忙しい中、感謝するぞ」
男性――賀東の挨拶に、俺には見せないにこやかな笑みで答える少女。
それに少しばかりムッとしながら、俺はメンバーを確認した。
「あれ……?」
そして、気付く。
「
そこに同級生の姿がなかったことに。
俺の疑問に、賀東が答えた。
「あぁ、立花のことか。彼女は外せない用事がある、とかでな」
「仕事よりも優先する用事、ね……。なんだろう?」
「あまり詮索してやるな。男だろう?」
「はぁ……」
首を傾げていると、賀東が大笑いしながら言う。
なにが、そんなにおかしいんだ……?
「とりあえず、今日の獲物はこの先にいるはずだ。みんな、準備は良いか?」
「はい、カトレア様!」
「準備はいつでもオーケーさ!」
そうしていると、カトレアが確認するようにそう口にした。
すると仲間たちは意気揚々、声を上げる。その波に流せるようにして、俺も仕方なしに頷くのだった。それを確認してから、リーダーのカトレアが宣言する。
「それでは、ナイトメア討伐を開始する!」――と。
◆
――この世界には、魔物というものが存在する。
言葉のイメージ通りに、魔物たちは人間を攻撃してくる生物。かといって魔物のすべてが害を為すわけではない。中には知性をもって人間に与する者もいた。
この辺りのことはまた、別の機会に話すとしよう。
「拓馬! 右に一体!」
「了解……!」
俺は賀東の声に反応して手にした銃を右へ。
そして黒い影に照準を合わせ、引き金を引いた。乾いた音が鳴り響き、もとより曖昧な形をしていた影は霧散する。
今のがナイトメア、という魔物だ。
俺たちがチームを組んで対処に当たる敵であり、人間に悪夢を見せる存在。先ほどの話にあった、いわゆる攻撃する魔物、というやつ。
「今度は、左か!」
――パンパン、という短い音。
どうして、俺たちがナイトメアと戦っているのか。
それを説明すると、少しばかり長くなってしまうのだけど。簡潔に言ってしまえば、金を稼ぐためだった。それ以外にも理由はあるが、それもまた別の機会に。
「ふぅ……。今日は、これで目標達成かな?」
俺は一息ついて、そう呟く。
子供のころから続けてきたナイトメア狩りも、高校生にもなれば板についてくる。銃の扱いだって、嘘みたいに上達するものだった。
――快調、快調!
俺は少しばかり余った時間で、廃墟の街を散策する。
だが、それが一つの判断ミスだった。
「危ない、拓馬!!」
「え……?」
角から飛び出した、その瞬間。
ひときわ大きなナイトメアの影が、俺を覆いつくそうとした。しかしそれより先に、賀東が身を挺して俺を守り――。
「う、あ……!」
「がとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
◆
「うわああああああああああああああああああああああああっ!!」
教室の中に、俺の絶叫が木霊した。
思わず立ち上がったこちらに、クラスメイトの視線が突き刺さる。
「おい、
「へ……?」
先生が、呆れたように言った。
そこに至って俺は、顔から火の出るような気持ちになる。
「は、はい……。すみません……」
そして、しゅんとして席につく。
するとクラスメイトからは、大きな声で笑われてしまうのだった。
「ほら、静かにせんか。次のページに行くぞ!」
それを注意して、先生は授業を再開する。
しばし騒然としていたクラスメイトだったが、次第に日常の静けさを取り戻していった。俺はそれをゆっくり確認しながら、深くため息をつく。
「…………あれ」
そして、ふと思うのだった。
「どんな夢、見てたんだっけ」――と。
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