りんご

@kotoba_no

第1話

「ねぇ。赤と緑、りんごの色はどっちが好き?」


「僕は赤色かな。食べてみたい、と思える色だからね」


「私は緑かな。新鮮に見えて、みずみずしくて…とても美味しそうだわ」


「じゃあ、人類で初めてりんごを食べるならどっちがいい?」


「どんなに話を飛躍させても、私は緑色を選ぶね。ほら、私は緑色が好きなの知っているでしょう?」


「知らなかった。ほら、頭の隅にメモしておくよ」


「そうね、私たちはもっとお互いをわかり合うべきよ」


缶ビールを買おうと向かった近所のスーパー。

レジに並んでいる若いカップルが、林檎に対して一喜一憂していた。


店内を流れる大げさなBGMよりマシと、何気なく聞いていたその話が、私に強い郷愁を抱かせた。

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