第3話ー嘘ー

数日後、私は再び緒方探偵事務所を訪れていた。

「こんにちは。今日はブルーマウンテン持ってきました。」

「ありがとう。豆くんの作る珈琲は美味しいよ。」

「ありがとうございます。じゃあ淹れますね。」

お湯を沸かし始めると小林さんが入ってきた。

「先生。無事に逮捕出来ましたよ。」

「犯人は家政婦だろ。」

「そうなんですか?てっきり旦那さんかと。」

「彼女は、夫人からお金を巻き上げられていたようで生活が苦しく殺したと供述しました。ですが……」

「どうしたんですか?」

「牧さん、気になる?」

「はい。他には話さないので。」

「実は、養子にしようと考えていたみたいです。」

「家政婦を養子にですか?」

「うん。実は、夫人の隠し子だったようでその事を話そうか悩んでいたようです。旦那さんにもその事を話していて彼女の旦那にも話しはいっていたようです。」

「悲しい事件ですね。もう少し早く話していれば……」

「で、小林今日はその報告だけじゃないんだろ?」

今まで黙っていた緒方さんが口を開いた。二人に珈琲を出してソファに座る。

「実はそうなんです。」

そう言って小林さんはファイルを開いた。

「今回殺されたのは、原毬音。19才。都内の大学に通う大学生です。この町の出身のため合同捜査になりました。夜8時頃バイト先からの帰り道いつも通る公園で後ろから刺されているのを翌朝犬の散歩をしていた近所の男性が発見しました。」

小林さんは写真を並べながら続けた。

「凶器の包丁は一般的な万能包丁。背中に刺さったまま現場にありました。容疑者は3人です。まず、被害者の彼氏の井上祐作。22才。被害者と同じサークルに入っている笠原学。20才。それと大学教授の近藤健太郎。53才です。最近、井上は喧嘩が耐えなくて学内でも大喧嘩していたようです。本人に聞いたら喧嘩はしていたと認めました。喧嘩の理由は井上が被害者の原さんからお金を借りていて返してと何回も催促されていたようです。笠原はサークルの飲み会の度に原さんに言い寄っていたようです。本人は否認してますが周りからの証言があります。最後に近藤ですが原さんに何度も告白していたようです。最近は家にまで行っていてこれは警察に相談されていたようです。」

「親子ほど年離れてるのに告白ってキモッ。」

「まぁ、断っていたようですが。因みに3人とも容疑は否認してます。」

「サークルは何に入ってたの?」

え~と言いながら資料を捲る。

「キャンプサークルですね。原さんは友達の誘いで入ったサークルでキャンプは初心者で笠原が親身に教えていたみたいです。」

「その、笠原って人原さんに恋人が居る知らなかったんですかね?」

珈琲を一口飲み、質問してみた。

「最初は知らなかったみたい。けど、直接原さんから言われたようです。因みに、笠原にはちゃんと彼女居ますけどね。後これは関係あるかわかりませんが、原さんと井上は同じ経済学部。近藤はこの学部の教授です。笠原は生物学部です。」

「笠原の彼女は調べてるのかい?」

「彼女ですか?名前ぐらいならわかりますけど……必要なんですか?」

「一応、関係者だろ。直接関係なくてもね。」

「ハァー、そうなんですか。名前は、小野真理です。年は24才。笠原のバイト先のコンビニで働いてます。」

「なるほど、そういえばさっき「いつも通る公園で」と言ったけどなんでそんなことわかった?防犯カメラとか?」

「いえ、原さんにはルームメイトが居たんです。佐藤麻里花。20才。」

「皆、マリちゃんなんですね。なんか意味あるんですかね?」

「なるほどね。」

「何かわかったんですか?」

「まだ、仮説とも言えないほどだけどまぁ想像って感じかなぁ。推理とも言えないけど。」

「夜の公園って暗いところなんで通ってたんでしょ。」

「佐藤さんが言うには、近道らしくて佐藤さんも通らない方がいいって言ってたみたいだよ。」

冷めきった珈琲を一口飲み緒方さんは小林さんに何か耳打ちして小林さんは部屋を後にした。

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