第1章 12話 娘たちの成長と新たな仕事

しばらくして家の改装が終わった、以前の二倍は広くなった感じがする。

アズやアゼロの部屋は個室になったのだが、アズは幼いので当分の間

アンナと寝起きは共にするようだ。


 さて今後だけれどアゼロの扱いをどうしたものか・・・

一緒に住む事は本人に確認済みだけど、それ以外は聞いていない

何かやりたい事とかあるのだろうか? 確認してた方が良いだろう。


 今回の報酬はアゼロを保護する事になった僕ら夫婦が全額受け取る

事になった、家の改修費用も報酬で賄い残りはアゼロの将来に使う

予定だ。

仕事の方はアゼロを気遣うリケッツが僕を外して行うらしい

ここはしっかり面倒をみなくは・・・


*半年が過ぎた


 アゼロはすっかり家族の一員になった、シャナがエルフであった

事も良かったのだろう。

一緒に暮らしてわかった事は彼女の社交性だった、街に買い物に

行くと店の店主と積極的に会話をするのだ。

商品の説明や食料品なら味など実に楽しそうに話しかけている。

もしかしたら人と関わり事が合っているのではないか?


 僕には誰にも話してない夢がある。

それは元の世界でコスプレカフェを開きたいのだ、投資だけでも

生活はできるのだが、何となく寂しく感じる。

アニメ好きと言う事もあるがコスプレには以前から興味はあった、

それにカフェで過ごす時間も好きであり両方を合わせたら自分が

満足できる空間ができるのではないか・・・などと夢を見たが

開業資金は投資や異世界で手に入れた物を売ったりする事でで

何とかなりそうな感じがしている。

僕がコスプレカフェを営業するなら衣装には拘りたいと思って

いる、生地や縫製をアパレル製品と同等レベルにしたいのだ。

何故ならコスイベなどで見かける衣装のクオリティーを僕は

物足りなくも感じていたからだ。

 そしてもう一つ、異世界に来て亜人種と言われている獣人や

エルフなどとの出会い、今の妻はエルフだし!

レイヤーさんが本物ならコスプレは本格的な物になるよね。


 資金があり異世界を行き来できレイヤーさんは本物、縫製の

問題はこれから考えるとして、実現可能な夢になって来たと

思う。

カフェの規模は20席程度の小さな店でレイヤーさんが

ウエイトレス、そんな店を経営して生活していけたら幸せに

なれると思う。

その実現の為には異世界で人材を見つける事が必須だ、秘密を

守れる信頼できる人材、理想は家族なんだよね。


 前にシャナを元いた世界に連れて行ったけど、案外順応して

いた感じだった。

もしかしたらアゼロやアズも時間をかければ僕の居た世界に

慣れてくれるかもしれない、家族経営・・・なんて・・・

みんなで楽しく働いたり遊んだりする場所、いつか元の世界に

アズよアゼロを連れて行きたいと思う。


*1年後


 二人は更に成長した、子供の成長は早いものだ

特に猫人族であるアズの成長には驚いた、シャナの話では

ある時点で成長が加速するらしく種族特性とのこと。

最初はアゼロの方が身長は高かったが今はアズが追い抜いて

しまった、アゼロも伸びたのだが・・・

二人ともシャナより少し低いくらいまで成長した。

精神的にも落ち着いてきたし、もうアンナと三人での

留守番も安心だと思えた。

 そんな時だ、リケッツが訪ねて来た。


『ユウ久しぶり〜子供達は元気かいな?』


『いきなりだな、リケッツ。僕も子供達も元気だよ

 成長も早くて驚いてたところさ』


 そろそろ落ち着いたと思って仕事の話でもしにきたか?


『早速本題やけど仕事の話や、子供らはユウがおらんでも

 大丈夫になったんやろ?』


 今は金銭的に困ってはいないので無理に仕事はしなくても

いいんだけど、リケッツや他のメンバーには世話になったし

特別な事情が無ければ断りづらいな・・・


『この前の仕事での報酬で家も改築できたし、みんなと

 過ごす時間も増えた、お陰で子供達も落ち着いたよ。

 仕事で家を開けるのは大丈夫だと思う、仕事の事を

 聞かせてくれ』


『ここから半月ほど行ったペルベントって村があるんやけど

 な、この村は貴重な薬草の産地なんや。

 その貴重な薬草が商業ギルドに入荷が滞っていんのや。

 ギルドも直接村に出向いたんやけど、護衛の冒険者共々

 消息を絶ったようや、護衛の冒険者は何れも実力者で

 これ以上の派遣は続けての被害があると判断したようだ』


『そんな危険な依頼が何で此方に来たんだい?』


『そんなん決まってるやろ、わいら最強やし前回の難解依頼も

 すんなり解決!、強さも知性も優れていると証明できたんや。

 この案件に相応しいと判断されたんやろな』


 確かに・・・ギルドでの評価はそうなのかもしれないな。

でもこの仕事については先の派遣された冒険者が生還していない

点がかなり不安要素なんだよな、大丈夫かな・・・。


『なあリケッツ、派遣された冒険者が帰ってない事は不安に

 感じないかい?メーディアや他のメンバーは何て言ってるの?

 それとリケッツ自身の考えを聞かせて欲しい』


 でもな〜リケッツが決めたら他のメンバーも「行く」って

言いそうな気がするけど・・・暇そうだし、実力もあるからな。

一応、聞いてみたかった・・・。

 リケッツの答えは予想通り、二つ返事で参加と答えたらしい。

特にメーディアはノリノリとの事、前回の仕事では物足りなかった

のだろう。


『そやな、今回は戦闘の可能性が多少はあるかもしれんしな・・・

 嫁さんは連れて行かん方が良いやろ。

 ユウの戦闘能力を考えればワイらと行動をするんは問題ないし

 今回ユウは後方警戒にして直接戦闘はワイらがするよって

 安心しなはれ』


 やっぱ僕の実力はリケッツ達と比べると、まだまだみたいだ

こんな僕が仲間になるメリットは何なのだろうか?

以前に話した異世界の商品?それとも異世界そのものに興味があり?

どちらにしてもこの世界は危険が多い、頼りになる仲間がいる事は

心強い。

最悪ヤバくなれば元の世界に避難する事も考えている。

シャナや家族で暮らすには現状を考慮すれば異世界になるだろう。

そう考えると僕は十分な強さを持っているとは思えない、リケッツ達

に教わり異世界で生きる術を身につける必要があるだろうな。

そう考えるとリケッツ達と行動を共にするのは僕の実力を向上させる

のに必要な事だと思う、今回の仕事も同行すべきだよな。


『わかったよリケッツ、いつ頃まで準備すればいい?』


『10日ぐらいでどうや?ユウの所で集合の予定やし』


『大丈夫だと思う』


 10日後にリケッツ達は迎えにきた、みんなも元気そうだ。

移動の間に詳しい話を聞くことにした、特に先に行方不明に

なった冒険者についての情報は多少でもあるのか?

幾つか気になる事もある、行方不明と死亡確認でも大分違うし。

でも、メーディアは元気だな・・・前回の仕事が物足りなかった

のだろうな多分、代わりにシャナの功績が大きかったエルフだしね。


『ところでさリケッツ、行方不明の冒険者については何か

 情報は無いのかい?』


『今の所は何もないな・・・情報も含めての依頼やしな、

 生存してたら保護、死亡なら遺品回収が含まれとる。

 安心しなはれ、ユウは守ったるさかい』


 守るって・・・何となく複雑な気持ちだよな、僕も男だし

ちょっと落ち込む・・・でもこれが実力差って事か・・・


『どうしたのユウ、私達もいるのよ!安心して』


『『そうだぞ心配するな』』


『メーディア、カルロス、アバン、ありがとう』


 気にしてもしかたないな、力不足なのは事実だし無事に帰れる事を

今は優先すべきだな。

彼らと行動を共にしてれば僕のレベルも上がっていくと思う。

家族を守れる力を持たないと・・・異世界で行動範囲は狭くなるし。

シャナと結婚し理由あって此方の世界の住人二人を保護する事に

なった、異世界で安定した生活を送る為にリケッツとの仕事を

増やせば収入的には良いのだが危険も伴う。

平和な世界で生きてきた僕にとって冒険者の様な仕事は危険が

大きすぎる、世界を行き来しながら商品売買と転移による確実に

値上がりを見越した投資で収入的には何とかなりそうなんだけど

異世界で暮らすには外敵を退ける程度の力は必要と思える。

元の世界ではエルフや獣人であることが障害になるだろう。

生活の拠点は他種族が存在している異世界の方が良いのは確かだ、

異世界での僕単体での実力を考えればギルド受けれる仕事は報酬の

低い仕事を選ばないと命の危険がある。

そう考えると元の世界での収入で商品を仕入れ異世界で商売する

方法が安定して収入を得られる。

もうしばらくは現状維持かな・・・

 

『ほな行きましょか』


 そして何か軽いノリで出発し、半月後ペルベント村の近くに

到着した。

偵察の為、村から500m程離れた所に拠点を置きメーディアが

斥候として向かった。


<人の気配がないわね、って当然よね・・・村の中に入らないと

 ダメみたいだわ、行きましょう>


 半時ほどでメーディアは戻ってきた、村の中には誰も居なかった、

そして状況は異常で日常の生活を送ってる時に人だけが突然消えた

と思える状況だったらしい。

食卓は食事中であったり、居間にはお茶の用意がされたままであり

全ての料理やお茶が温かく直前まで誰かが居た気配があった。

あまりの不自然さを警戒し早々に引き返したのだった。


『村の奥までは行ったん?』


『いえ、入口付近までよ。異様な霧が立ち込めてたし、私の中で

 危険を知らせる感覚があったのよ・・・だからね、戻ってきちゃ

 ったわ、仕方ないでしょ?』


『そやな、で・・・どないしょ?』


『メーディアの危機感知は信頼できる、単独行動は避けるべきだな』


 カルロスの意見に僕も同意見だ、他のメンバーも頷いている。


『で、どないする? このままでは埒が明かんよって・・・

 偵察で危険も予想される・・・せやったら纏まって周囲を警戒

 しながら突入でいいとちゃう?

 ユウを中心にワイらが囲み前進でどないや、ユウは魔法を放つ

 準備をして、動きがあったら迷わず打なはれ』


『いいんじゃない』


『それで良い』


 どうやら方針が決まったようだ、体術が未熟な僕が皆の中心に

位置して何かあれば魔法での先制攻撃で相手の隙を作り、その後

相手の状況次第で攻撃続行か撤退を判断するみたいだ。


 方針が決まり村に入る、メーディアの報告通り深い霧が視界を

遮り何時襲われても不思議じゃない感じだ。

そんな事を考えながら進み村の中心と思われる所まで進んできた。

近づくに連れて霧が晴れてきた、視界が開けてきた事で異常な

光景が目に飛び込んで来た。

 人骨なのか、動物の骨なのか辺り一面に散乱していた、注意深く

見れば剣や防具、破れた衣服も確認できた。


『なんやあれ・・・少し厄介な感じやな』


 この光景を見て少し厄介って・・・リケッツにとってはこの程度は

厄介レベルなんだな・・・僕はかなり危険だと思うのだが、他の

メンバーもリケッツと同意見なのだろうか?


『厄介って、かなり危険じゃないの?、そう思ってるのは僕だけ?』


『ユウ、安心しなさい、確かに情報は不足しているけど単独じゃない

 のだし現状は警戒レベルだわ』


『そうだな、メーディアの言う通りではあるな』


 流石、アバンとメーディアです心強いな、今のところ僕の出番は

無いようだ。

このまま出番無しだと嬉しいが、このままとは考えられない。

この後の行動は経験不足の僕にとって予想は難しい。


『さ〜てどないしよか?ワイとしては、このまま調査続行でと

 思っとるけど、皆もエエか』


『いいんじゃない』


 メーディアの返事に他のメンバーも同意した。

ま、僕も同意せざるを得ない、何故なら一人で帰る自信は無いのだ。

この世界は町などの集落は比較的安全だが生活圏から外れた森や草原

などは危険が隠されている、ここに来る道中でも数回は魔物の襲撃が

あったがリケッツ達が退けてくれた、僕も魔法で参加したが、単独では

退ける自信は無い。

でも今はそれで良いと考えている、強くなり進んで危険に飛び込む

より弱くても危険を避ける生き方を選びたい。


 村の中心部だけでなく霧が晴れている場所、概ね半径300mくらい

の範囲で先程の惨状と同じ様子を確認できた。

おそらくだが、ここまで来る途中の霧の中でも同じ光景が広がって

いたのかもしれない。


 これ以上の探索は霧の中になる事から一度攻略方法を検討する為に

村の外に引き返し拠点を作る事にした。

人数分のテントと竈門と獣避けの焚き火のスペースを用意した。

拠点の準備と食事を終え今後の行動を議論する。


『聞いてや、あの状況から推測するとやな、村の生存者と調査に来た

 冒険者は絶望的やろ、生存者の捜索はせんと原因の究明を優先

 せなあかんな。それでええか?』


 他のメンバーも僕もリケッツの判断は妥当だと思っている

あの惨状では生存者は絶望だろうし、原因不明であれば僕たちも

危険である、しかしどんな方法で探るつもりなんだろうか?

何か有効な魔法を知っているのだろうか?


『でさ、何か調べる方法でもあるの? 私は戦闘系の魔法しか

 使えないわよ』


『当然、アバンも私も魔法は使えないですよ。ユウの魔法は?』


『そうですね・・・皆もご存知でしょうが、放出系の攻撃魔法

 しか今は使えません』


 前回の仕事の時もリケッツが探査系の魔法は使ってなかったはず。

今回も探査か調査系の魔法は有効だと思う、何か考えがあるのだろうか?


『ユウ、今日は一度も魔法は使ってないやろ?

 なら魔力量は十分やな、広域的な放出系の魔法は何か使えるか?』


『そうですね、アイスミストは使えますが』


『なら、それでいこか!』


◇◇◇◇◇


『ユウ、村を包み込む感じでやな、ありったけの魔力を放出で

 頼むで、ユウの事はワテらが守るさかい』


 何とも無茶な・・・魔力を使い切るのは脱力感が半端ないん

だよ、しばらく動けないし・・・

ま、みんなが守ってくれるみたいだし大丈夫か。


『じゃ、始めるよ「アイスミスト・・・」』


 村全体を覆うのに30分ほどの時間を有した。

霧が氷になりダイヤモンドダストの様に空中でキラキラと

輝いていた、僕は放心状態でその光景を見つめていた。


 霧が晴れ視界が開かれたその時、村の入口の反対側から

膨大な魔力が放たれた。え〜ヤバくない?その時!

リケッツの声が聞こえた。


『今や、メーディアあそこに行くで!』


 僕は二人が突撃して行くのを見つめていた。

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