第1章 10話 地下遺跡

アズの事は一月ほどで落ち着いた、アンナ(シャナの母)とも

気兼ねなく話す様になった。

今回の仕事についてシャナと話をしたら、同行したいと言われて

しまった。

理由を聞いたら一つはエルフ族が関わっている事と比較的の安全な

探索の仕事。

それと久しぶりに僕と出掛けてみたいとのこと。

リケッツを呼び確認したら、すんなり「いいやん」と言われた。

出発は14日後と決まり、僕の家が集合場所になった。

急いで出掛ける準備をしなくては。


『ユウさん久しぶりね、元気だった?』


『メーディアも変わりない?

 あ、隣にいるのが妻のシャナだよ、今回同行する事になったんだ

 よろしくな』


『よろしくね、同じエルフ仲良くしましょうね。

 私はパーティー内で治癒とちょっとした攻撃を担当してるのよ

 行動を同じくするので何が得意なのか教えて下さるかしら』


『私は冒険者ではありませんので攻撃なんかは出来ないですね、

 魔法も生活魔法とか防御魔法くらいです。

 その代わり料理であればお手伝いできると思います』


『それは頼もしいわ、私は料理に関しては全然ダメですし、前回の

 仕事の時はユウが作ってたし・・・

 リケッツ!今回の仕事は食事の心配はしなくて良さそうね』


『あまり期待はしないでくださいね、家庭料理ですので』


 地下遺跡には7日程で到着した、途中にドワーフの村に寄り

状況の確認をした。

地下遺跡を超えた所に金属鉱石の採掘場所があるのだが、遺跡に

あったエルフの石像を移動中に壊した事で異変が始まったらしい。

命の危険は無いのだが石像の先に進めなくなったらしい。

つまり彼らは鉱石を採掘できなくなったのだ、石像が原因と考え

石像を直そうと試みたが触れる事もできないらしく調査を依頼

したのだ。

僕たちは遺跡の石像の場所に到着した。


『これやな』


『これですね』


『あらま、エルフの石像ですわね』


『シャナさん、石像について何か気づいた事はないかな?』


『はっきりは分かりませんが、古代エルフの一部に付与魔法を

 得意とした集団がいたと聞いた事があります。

 ドワーフの村で現象を聞いた時に思ったのですが、転移魔法

 に近いのではと・・・』


『転移魔法でっか・・・今では失われた魔法やな。

 使う者がおらんなら解除方法も失われた事になるんやろな

 シャナはんは知ってたりします?』


『申し訳ありません、私にも心当たりはありません』


『リケッツ、魔法の範囲はどれくらいなんだい?』


 答えは予想していたが鉱石採掘場所を大きく超えているらしく

単純に迂回とかの方法は無駄らしかった。

当然、石像も範囲内であり排除もできない、

古代エルフの目的は外的からこの場所を守る事なんだろうな?

そう考えると転移と結界の組み合わせって感じかな。

 これは謎解きのレベルを超えてないか?

安全だけど打つ手なし、リケッツに考えは有るのだろうか・・・


『ワイもお手上げや、急ぐ依頼でもないよってな時間がかかる

 ようならユウ達は一度家に戻ってもいいんとちゃうか?』


『なら家の事も心配だから30日を目安にするよ、どうかな?』


 この条件で良い事になった、リケッツはここに居続けるらしい


『ほな、何か手がかりでも探しましょか』


 僕たちは遺跡周辺の調査を行った。

思うに間違って石像が壊れる様な事態は住んでるエルフ達だって

予想していただろう、であれば何かしらの対応策はあったのでは

ないか?

解除方法が仕掛け的なものか魔法かは不明だが、必ずあったと

思う。

僕はシャナとリケッツはメーディアとで手がかりを探す事になった。


『シャナ、解除方法って魔法だと思う? 魔法で仕掛けを作って

 る事を考えると解除方法も魔法的なものじゃないかと・・・』


『私は違う感じがします、この様な仕掛けがあると考えると

 この場所は城門かそれに代わる施設があった様な気がします。

 ならば門番みたいな人がいたのではないでしょうか?

 非常事態に対応するのであれば発動に個人差がある魔法では

 万全とは言えないと思うのです』


『なるほど、誰でも速やかに発動と解除をするには魔法より仕掛け

 の方が適しているね、でもそうなると外側より内側に置くのが

 安全と言う事になるよね』


『はい、私もその様に考えていました』


『打つ手無しかな・・・・・』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『リケッツ・・・この依頼って解決できるの?

 相手は古代エルフなんでしょ・・・伝説に近い種族相手に

 私達以外にも冒険者や識者が挑んだのでしょ?

 何か勝算でもあったの?』


『全然あらへんよ、ユウと嫁はんが二人で出掛ける機会があっても

 ええやん、こうでもせな・・・新婚さんなんやし、分かるやろ』


『え〜、リケッツって・・・以外!』


『ほっとけ!』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 強制転送される範囲は正確にマーキングされていた

これまで多くの人員が挑戦してきた結果なのだろう。

僕とシャナは何度も往復しながら手掛かりを探していた

シャナは物探しに便利な拡大視の魔法使い僕はロックヒットを威力を

抑えて打ち込むスタイルで何か変化がないか探っていた。 


『雄靖さん変わった所は無いみたいですね』


『そうだね、こっちも打ち込んだ物が戻って来るだけで変わった

 所は見当たらないよ』


 そもそも侵入者用の仕掛けだしな・・・簡単には解除できるとは

思えない、見えてる光景も変えてる可能性だってある。

魔法でも仕掛け的な物でもないとしたら何だろうか?


 その時シャナから不自然な箇所があると教えられた、それは肉眼

では気付かない程度の遺跡内での景色だった、僅かだがズレていた。

まるで繋目があるかの様に縦に上下にだ。


『あれは何でしょうね?』


『何となくだけど予想はしていたんだ、遺跡内の景色は作られた物

 じゃないか・・・でもあれを見ると僕の考えが正しいのかもし

 れないと。

 侵入者を惑わし外部からは解除できない様にするには内部を見せ

 ない方がいいからね、でもこれで内部状況を見れば解除方法が

 解明できるって事だと思うよ。

 見つけたズレから内部が確認できないか、もう一度試してくれ』


『わかりました、もう少しだけ拡大視できます任せてください』


 今のところ手掛かりはシャナの見つけた所だけだ、僕はシャナが

集中できりる様に側で見守る事にした。

暫くするとシャナは何かを見つけたようだ。


『雄靖さん、ズレには僅かに隙間があったのですが

 その先に微かに点滅する光が見えました』


『それだよ、ここは遺跡なんだし点滅は不自然だと思う

 考えられるのは仕掛けが起動した事による変化、つまり装置本体

 と考えられる。

 ズレはそこから転送装置に起点になってるからだよ、どのくらい

 離れてる?』


『そうですね、拡大視ですから正確に距離はわかりかねますが

 私の背丈の3〜4倍くらいでしょうか?』


『どの辺か指さしてくれないか?

 駄目かもしれないけど打ち込んでみる((ロックヒット!))』


 僕の攻撃は予想どうりこちらに跳ね返って来た。


『あちゃー、予想はしてたけど・・・

 シャナは攻撃的な魔法って使えたっけ?』


『攻撃魔法は使えませんが証明用の光球なら放てますが』


『ちょっと試してみようよ』


『では((ライト!))』


 シャナの魔法は転送されずに目的の場所まで到達消滅した。


『なるほど、全ての攻撃が転送されるわけではないようだな

 一度リケッツと合流してこの事実を報告しよう』


 そしてリケッツと合流、この事をリケッツ達と話し合った。

まず、シャナの魔法が通過した事については同じ魔法でも

種族によって性質が若干異なるらしく、エルフの行使する魔法は

受け入れられるのではないか?(推測ではあるが・・・)


 今までもエルフの調査隊もしくは冒険者は来なかった

のだろうか?

それともシャナの能力が高いのか?

その疑問をリケッツに聞いたところ、エルフ族は調査隊の様な

組織には加わる事は無いそうだ(能力を他種族に知られたく無い)

また、エルフの冒険者は攻撃魔法を得意とする者が大半で

調査には不向きらしい。


『今回はシャナはんにお願いするしかないわな、ほんま来て

 くれた事に感謝や。

 ワイが何か効果的な魔法を教えるよって、かまへんか?』


『はい、役に立てそうで嬉しいです よろしくお願いします』


 その日は発見した場所の近くでテントを設営し休憩と対策

を考える事となった。


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 翌日、リケッツは再度シャナに拡大視による確認作業を願い出で

それにより詳細を聞き取り図化していた。

その結果、幾つかわかった事があったようだ、点滅している側に

魔法を感知する刻印が2つ見つかった、刻印の下にある文字は古代

エルフ文字らしくシャナは知っていた。

1つは「受け入れる」もう一つは「拒否」と書かれているらしい。


『この仕掛けは防衛が目的と考えれば、外部からは解除はできない

 構造やろな、おそらく刻印の場所に衛兵なんかおって操作してた

 んとちゃうかな?

 しかし奥さんの魔法が通過できるんやったら、外部からの解除も

 不可能ではないやろ・・・ただ解除魔法を突き止めなあかんな。

 手始めに解除魔法を試してみよか』


 どうやらこの世界には魔法鍵と言うのがあるらしい、特定の者だけ

が解除できる鍵と不特定多数(魔法を行使できる者)に分かれるらし

いが、衛兵が管理してるのであれば後者の可能性が高いとリケッツは

考えているようだ。

 リケッツも解除魔法は使えるので試してみたが予想通り弾かれた

やはり同族の魔法でなければならないようだ。

エルフ族にしか解除できない事は理にかなってる、少なくても同族

が敵になることは確率的に低いだろうし。


 そしてシャナに対してリケッツの指導が開始された

魔法の行使は種族に違いは無く発動する際に効果に違いがでるらしい。

この機会に僕もシャナと共に練習する事にした、解除魔法を習得する

事は冒険者として有利だとリケッツに聞いたからだ。


*練習を初めて14日が過ぎた


 シャナは魔法の才能が高くリケッツに言わせれば、あと数日で習得

できるとのこと。

僕の方はこの仕事が終わったらシャナから学べと早々に言われてしま

った。


『(&$^+!@$^』


(カシャ)


 リケッツの作った魔法鍵は解除できた。


『やりおった! 成功やな』


『ありがとうございます』


『良かったね、シャナ。帰ったた僕にも教えてね』


『はい!』


『ほな、試してみよか・・・』


 僕とリケッツはシャナとメーディアの両脇で護衛の役目

メーディアはもしもの時の回復の準備。


『行きます、「(&$^+!@$^」』


 眩い光を放ち見える景色が一変した、何となくだが古びた

様に感じる。


『リケッツ、これは成功だよね・・・』


『そやな、よ〜やったシャナさん』


『私・・・何だか・・・嬉しい。この仕事のお役にたてたの

 ですね』


『シャナさん、疲労感とかない?、あれば私が回復してさし

 あげますけど』


『大丈夫ですよ、メーディアさん。あ、待ってください

 何か聞こえるのですが?』


『僕には聞こえないが、リケッツ、メーディアは聞こえる?』


『ワイには聞こえんけど』


『私にも聞こえませんわ』


 どうやら、何かは分からないがシャナにだけ聞こえているようだ。

ここは遠い昔に放棄された街の遺跡なのだ、罠?、魔物?いや待て

ここはドワーフが鉱石採掘目的で遺跡を調査していた場所なのだ

魔物や罠があれば彼らが気づいていたはずで依頼時に告げるはず。

 もしかして転送装置の解除が引き金となったのか?

そうであれば安全確認が最優先だと感じリケッツの方を見た。


『わかっとる、ユウ!油断すんなよ』


 その時20m程先に光の玉が出現した、何だあれは・・・


「+&^$(1$$__+#**!@?〜`””;」


 これは古代エルフ語?シャナの詠唱の似ていたが・・・


『シャナ、古代エルフ語じゃないか?』


シャナの方を見ると、光の玉を見つめていた。

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