第1章 8話 仕事終わりと秘密

*シャナはヤニスの雑貨屋に来ていた、薬草を売りに来たついでに

 不足した生活用品を買いに来たのだった。


『シャナ、久しぶりだな。二人の新婚生活は順調かい?

 雄靖は甘えさせてくれるかい?』


『ヤニス、心配してくれるの?

 そうね、雄靖は優しいわ、でも冒険者の仲間になってからは

 家を空ける事が多くなってるのが少し寂しいかしら。

 でも、それは仕方のない事と割り切って考えているの』


『そうだな、冒険者ってのは誰でもそうさ。

 その分、帰ってきたら甘えればいいんじゃないか?

 でも・・・少し雰囲気が変わってきたな、明るくと言うか

 幸せが滲み出てるて感じるんだが・・・

 所帯を持ったからなのか?』


  タカディールよ、シャナを守り犠牲になった事は仕方がないが

 残された彼女は寂しさに耐えていたよ。

 そして彼女に笑顔を取り戻させた男と今は暮らしているよ

 お前は嫉妬するかもしれないが、見守ってやってくれないか?

 その男も、お前に負けないくらい彼女を愛しているし、守るだけの

 力も十分にある。

 必ず彼女を幸せにするんじゃないかな・・・たぶん

 二人を空から見守ってやるんだな。


『スパイスは扱っているのかな?雄靖さんは辛めの料理が好きみたい

 なのよ、私は作った事ないから挑戦してみようかなって!

 美味しく作れるか心配だけど、食べさせてあげたいよね』


『そうか、喜ぶと思うぞ。

 確か赤唐辛子が好きだったと思うぞ、持っていきなサービスだ』


『ま、辛そう・・・ありがとうヤニス、頂くわ』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『ほな行くで、準備はええか?』


*リケッツ達は洞窟に潜入しようとしていた、リケッツとメーディアが

 先行しユウ、カルロス、アバンが続いた。

 リケッツは潜入後数分で人の気配を察知し後続に身を隠す指示を出す。

 リケッツ、メーディアは隠密魔法を発動し気配と身体を認識できない

 状態で見張りの兵士に気づかれずに奥に進んだ。


『メーディア、見てみ。 囚われた村人やで』


『どうするの? 警備兵も数人いるけど倒すのは簡単ね、でも囚われて

 いる人数が多すぎない?

 見つかったら兵士全てと戦闘になるわよ』


『せやな、戦闘は問題ないんやけど正規兵って事は国家を相手にする

 わけや・・・慎重にせんとな』


『殺さなきゃいいんじゃない?』


『それだけやないで、救い出しても村に残したら秘密保持とやらで

 殺されるんとちゃうかな? あそこ見てみ。

 何か分からんが人体実験機みたいのあるやん、ヤバイ感じするで』

 

『監禁されとる獣人と、この施設の配置を把握して一度戻りまっせ』


『わかったわ』


*リケッツとメーディア後方で待機している仲間と合流した。


『リケッツ、村人はいたのかい?』


『いたで、男女、子供を合わせて50人は監禁されとったわ』


『50人って、少なくないか? あの村の規模なら100人は

 いそうだがな・・・ユウはどう思う?』


『たしかに少ないと感じますね、村には洞窟以に村人は確認でき

 なかったし、嫌な予感がしますね』


『今は監禁人数はどないでもよか、問題なんは50人をどないする

 かや、仮に助けよっても村には戻せんちゃうか?

 ワイらが去った後に機密保持の為、殺害される可能性だって

 あるさかいな』


『貴方の言いたいことは理解できるわ、それでもね私は一人でも

 多く助けたいと思うの、村での生き残りが御婆さんだけなんて

 残酷だわ』


 彼らの会話から想像すると異世界には、この様な人々を救済

保護する制度は無いのだろうなと思う。

でもメーディアの気持ちも理解できるよな〜


『リケッツ、メーディアの考えや気持ちは分かるんだけど村人達

 の意思を確認した方がいいと思うんだが。

 我々は冒険者であり国の機関じゃないんだ、50人の村人を

 気づかれずに救出するには兵士を全て殺害しないと無理だし

 そんな依頼は受けていない、村人の代わりに兵士を殺しても

 いいなんて理屈は僕には正しいとは思わない。

 メーディアの様に心で動くなら僕たちも納得できる理由がないと

 ダメじゃないかな?』


『俺もユウの考えに同意する』


 無口なアバンが僕の意見に同意してくるなんて・・・

何か思う事があるのだろうか?

 

『そないなら、村人の意思を聞かな、行こかメーディア。

 カルロスはどないや?』


『皆も納得してるなら私も従うさ』


*リケッツとメーディアは再び囚われた村人に会いに監禁場所

 へ向かった。

 一人の離れて座っていた年配者に他の村人達には気づかれな

 いよう話しかけた。


『驚かないで聞いてください』


『え!誰じゃ』


『静かに!私は冒険者のメーディアといいますこの村の異変を

 調査しに来た冒険者です。

 私達はこの現状を確認したのですが、冒険者ですので村人の

 開放には手助けは可能ですが、保護までは出来ません。

 でも見過ごす事は私達の本意ではありません。

 囚われている方々の意思を確認してはもらえませんか?』


『ありがたい・・・村長と相談してくるから少しの間待って

 もらえるか。

 メーディアさんと言ったか、私には姿が見えんのじゃが

 返事するにはどうすりゃええんじゃ?』


『視界阻害の魔法で見えなくしています、相談が終わりましたら

 手を上げて下されば、こちらから声をかけます』


*男は村長の下に向かった。


『村長、落ち着いて聞いてくれ』


『なんじゃ、アルクよ。何を慌てておるんじゃ?』


*アルクは冒険者が調査に来ている事、この状況を見過ごせないが 

 全員を保護するのは困難な事などメーディアからの言葉を伝えた。


『冒険者が・・・僅かだが希望が見えてきたの。

 このまま待っても死を待つだけじゃからな、この連中は軍隊じゃ

 からな・・・国が関与してたら冒険者の出来る事は限られる。

 保護は困難でも逃げ出す手伝いは可能だったら考えがあるぞい。

 代々長だけに受け継がれてきた隠れ里があるんじゃ、そこまで

 行ければ何とかなるじゃろ。

 アルクよ、この事を冒険者に伝えてくれ』


『隠れ里!皆で逃げるって事だな、冒険者合図するよ』


*アルクは静かに手を上げ合図した。


『相談は終わりましたか?』


『メーディアさん、村長が話しますじゃ』


『冒険者の方よ、申し入れ感謝します。

 我々の開放の手助けをしてもらえるとか・・・

 ここから出たら隠れ里に身を隠したと思います』


『わかりました、ここからの脱出を手伝いたいと思います。

 この事を仲間に伝え行動に移りますので、落ち着いてこの場

 でお待ち下さい』


*メーディアがリケッツの方を覗うと頷いていた。

 二人は仲間と合流し救出方法をリケッツから説明されていた。


『ほな説明するで、善悪は分からんけど相手は国の機関やし

 戦闘は仕方あらへんけど殺しは避けたいわな。

 拘束する感じでいきましょ。

 そこで各自の役割分担やけどな、アバンは入り口で侵入者が

 いれば阻止と村人の救出後の安全確保。

 ユウとカルロスは村人を出口まで誘導や前後に分かれて

 警戒をするんやで。

 ワイとメーディアは先行して救出と軍人さんの無力化する

 よって、ほな皆行くで!』


 僕はメンバーの実力の高さを思い知った、100名近い

軍人をいとも簡単に麻酔の効果がある魔法で眠らせ、メーディア

が万が一に備え縛り上げていく。

カルロスは倒れてる軍人を移動させ通路を確保し流れる様に

村人を誘導していった。

僕は皆の動きを後ろから見ているだけ・・・一応は後ろの警戒を

しながら付いて行く。

救出は一時間程で終了となった、凄いな!

そしてリケッツは村人に話しかけた。


『皆さん、我々がお手伝いできるのはここまです

 この後は隠れ里に行くと聞いてます、ではここでお別れです』


『冒険者の方々、本当にありがとうございました、生活が

 落ち着きましたら、是非お礼をしたいのですが』


『メーディアさん、御婆さんを届けるんやろ?

 隠れ里の場所を聞いときなはれ、村長さんの話はそん時にでも

 良いとちゃうかな』


『では村長さん、隠れ里の場所を教えて下さいな。

 村に隠れていた御婆さんを保護してますので、数日後にお連れ

 しますね』

 

『あの状況で隠れていた者がおったとは・・・保護して頂ただいた

 事、感謝いたします。

 では、メーディア殿、隠れ里の場所ですが・・・・・』


 僕たちパーティーは事態の報告の為、ギルドに戻り

村人は隠れ里に向かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


 僕は仲間たちとの依頼を終え自宅に戻っていた。

今回の依頼でも報酬と魔物討伐で得た素材があり換金の為シャナと

ヤニスの店に来ていた。


『ヤニス、素材の買い取りを頼むよ』


 弁当作りの際に採取した薬草と猪に似た獣の解体時に出てきた

虹色の鉱石が換金対象だ。

ついでに元の世界で売るものを仕入れたい。

 薬草はいつも通りの買い取りだった、虹色の鉱石が予想よりも

高額で売れた。

どうやら獣の生息している土地の地質に含まれた物質が餌と共に

体内に取り込まれ排出されずに蓄積され固形化された物らしい。

この鉱石は剣などの製造時に鋼材と混ぜ合金にすると鋼材に柔軟性

が増し欠けにくい丈夫な剣になるのだそうだ。

特定の生息場所である事と絶対数が少ない事から高額で取引される

ようだ・・・運がいいな!


『ヤニス、シャナにプレゼントしたいいんだが何か良さそうなの

 ないだろうか?』


『お!暫くほったらかしにしてた詫びかい?』


『あはは・・・そんなところかな。シャナは欲しい物あるかい?』


『雄靖さん、気を使わないで良いのですよ、私は貴方が側にいる

 だけで幸せなのですから。

 でも、今回は少し長かったし・・・何か買って頂きたいかな?

 なんて・・・』


『か〜〜何でも好きな物言ってくれ!報酬は沢山貰ったからな』


『これなんかどうだ二人とも、昨日入荷したんだがな

 何でも南方の海で取れる貝の中で稀に見つかる物らしいんだが

 それをネックレスにした物さ。綺麗だろ?』


 これは真珠だよな、こっちの世界でもあったのか・・・

大きめの一粒真珠ネックレス、控えめなデザインはシャナに

似合いそうだ。


『シャナ、どうだい? 僕は似合うと思うんだけど』


『何か高そうですが、よろしいのでしょうか・・・』


『遠慮なんてしないでくれ、シャナも気に入っているなら

 受け取ってほしい、どうだろうか?』


『シャナよ、雄靖の気持ちなんだし買ってもらいな』


『雄靖さん、ありがとうございます、嬉しいです』


 シャナって結婚して暫く経つけれど僕に対して控えめって

感じだし、何となく一緒にいて好きって感情以外に心が安らぐ

んだよな。

彼女の一つ一つの振る舞いが彼女を大切にしたいと思わせる。

僕の方こそ、ありがとうシャナ、幸せになろうね。


『ヤニス、これを頂くよ。薬草の買い取りと置物の精算も

 よろしくな』


『雄靖さん、これらの置物は家に飾るのでしょうか?』


『ん〜、これらはちょっと使い道があって買ったんだ

 夕食を終えたら話すよ』


 そろそろシャナに異世界から来たこと、そして自由にこの

世界と行き来できること。

2つの世界を行き来して収入を得ている事など話さなければ

ならないだろうな。


『用事は済んだし、そろそろ帰るかシャナ』


『はい』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


 帰宅し夕食を終え、二人の時間を寝室で過ごしていた

今晩、シャナに秘密にしていた事を話そうと思う。


『シャナ、話したい事があるんだ。話の内容で信じられない様な

 事もあるだろうが、最後まで聞いて欲しい』


『分かりました雄靖さん、お話ください』


 僕は異世界から来たこと、こちらに来てから特異な能力を得た

事など順を追って話した。

異世界から来たと話した時は少し驚きの表情を見せたが、特異な

能力辺の話では冷静に聞いていたようだった。

こちらの置物などを元の世界で売却し投資(株式)している話に

ついては理解し難いようで詳しい説明は避けた。 

一通り事情説明を終え僕は彼女に謝罪をした。


『シャナ、話すのが遅くなった事を謝るよ・・・許してもらえる

 だろうか?』


『ふ〜・・・今更ですよね、初めて出会った時に何か事情がありそうな

 感じはしてましたけど、異世界から来ていたとは・・・

 少し驚きました。でも、あの状況では話せないのも理解はしますわ。

 親しくなった頃合いで打ち明けていほしかったですわね』


『ごめん、出会いの時から僕はシャナに一目惚れだったんだ。

 あの時正直に事情を説明したら警戒されるんじゃないかと思って・・・

 その後、何度か打ち明けようと思っていたんだけど話すのが今になって

 しまった事を許してほしい』


『お互い隠し事はしないようにしませんか? 

 全てって事ではないのですが・・・何か心が離れている様で不安に

 なります』


『そうします、全てを打ち明けた今は心が軽くなりました

 大切な事は僕もお話します。

 それでなんですが、先日の仕事で得た収入を使いヤニスの店で

 仕入れた商品を僕がいた元の世界で売りに行きたいのですが

 いいでしょうか?』


『・・・・先程お伺いした内容ですと行き来する時間は選択できる

 のですよね?その辺を詳しく教えて下さい』


『分かりました、今回は二回、行き来する予定です。

 一回目は一月程先に転移して、この世界には転移した日時に

 戻って来ます、目的は先程お話した投資に関する情報を得る

 事です。

 二回目はヤニスの店で購入した商品を売るためです、転移先で

 過ごした日数に合わせてこちらに戻ります』


『では二回目はこちらに戻るのに数日かかるのですね・・・

 ならば私も連れてって下さい、ダメでしょうか?』


 何となくだがこの展開は予想はしていた、今回の依頼でシャナには

寂しい思いをさせてしまった。

戻ってきて驚くような話をされて、今度は別の世界に行くなんて

聞かされたらこの要求は当然かもな。

それに少しだけかもしれないけど、僕の来た世界を見せたい気持ち

もあるし、連れてくか。


『はい、一緒に行きましょう』


 僕は一度目の転移で経済新聞を購入し二度目の転移をシャナと

行った・・・・・驚くかなシャナ。

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