第1章 6話 夢に向けての第一歩

◆夢に向けての第一歩◆


 リケッツは帰り道で僕の戦い方や魔法についてのアドバイスを

受けた、次の仕事まで何とか解決しないとな・・・


『ところでリケッツ、聞きたい事って何なのかな?』


『ちょっと確認せなあかん事あるよって・・・

 そろそろ着くやろ、お茶でも飲みながら話すよって』


『はいはい、安物のお茶しかないけどね』


 しかし何なのだろう・・・仕事?、家まで来るって

メンバーには聞かれたくないって事だよな、そして長話になる

のだろう・・・何だろ?


『着いたよ、中に入ってくれ』


『ほな、おじゃましますわ』


『お茶、持って来るから適当に座っててくれよ』


 リケッツが椅子に座ったのを確認して、お茶の用意の為に

台所に移動した。


『ほい、安物だけど旨いぜ』


お茶をテーブルに置き僕も正面に座った


『あんがとな、いただきますよって・・・ん〜旨い』


『話って何なの?気になるよ』


『ヤニスから聞いたんやけど、ガラス食器なんかを売ってるんやろ?

 ワイにも見せてくれへんかな? ちょっと興味があってな』


『リケッツなら仕方ないな、ヤニスからは危険を呼ぶから簡単には

 見せるなって言われているんだよ』


 雄靖は収納魔法で虹色ガラスコップを取り出しリケッツの眼の前に

置いた。


『へ〜綺麗なもんやな〜、手に取って見てもええか?』


 僕が頷き同意を示すとリケッツはそっと手に取り、底や光に翳し

たりと真剣に観察をしていた。


『なあユウ、ヤニスからは両親の残した物と聞いたんやけど

 ほんまか?ワイはその事に違和感を感じるんやけど・・・』


『え・・あ、ん〜、そんなに変わっているかな(汗)(汗)』


『そうやな、ワイも世界中を旅してるさかい、珍しいもんも

 仰山見てるんよ。

 けど、こない綺麗で形が整いている、何より厚さが均一で

 透き通っているガラスは始めて見たわ。

 何て表現したら・・・別世界の物?の様な・・・・』


 リケッツの疑問分かるな、僕らの世界の大量生産品は品質が

均一でそれなりの美しさは有るけど、言い換えれば安っぽい感

がある。

しかしこちらの価値観では珍しく製造は難しいいのだろうな。

彼の感性は鋭い、誤魔化すのは無理かもしれない、信じるかは

分からないが正直に話してみるか、それに話したところで

誰にも話した事を咎められないと思うし。

でも口止めはしよう・・・面倒になりそうだし。


『わかったよリケッツ、でも少し待ってくれ。

 この事はシャナにも話さなくてはならない内容を含んでいる

 だから二人の前で打ち明けたいんだ・・・いいか?』


『シャナ?あ、ユウの想い人やな、わかった準備ができたら

 呼んでくれたらええ、それまで外で待ってるさかい』


 僕はシャナに会いに彼女の家に向かった、これから話す事は

シャナと生活を共にする為には話さなければならない。

彼女には僕の愛する気持ちと同じ位大切な事だ、真実を話す

所から全てが始まる、そう信じたい。


 家にはシャナと母親のアンナが居た、僕は二人に大切な話が

有事を伝え、リケッツが同席する旨を伝えた。

ちょっと信じがたい話であり第三者も加えた方が皆、冷静に

なれるのではと思う。

アンナの希望で話はこの家で行う事になった。


『リケッツここに居たか、待たせて悪い。

 先方に話したらシャナの家で話す事になったよ、付いてきて

 くれ』


『わかったで』


 居間で三人の前に座り僕は今までの事と、今後について

どうしたいか話し始めた。


『これから話す事は信じがたいかもしれないけど、最後まで

 聞いて下さい、そしてシャナさん本当のこと言えなくて

 ごめんなさい。

 記憶が無いのは嘘なんです、僕はこの世界の人間では

 ないのです、理由は分からないのですが貴方達からすれば

 僕は異世界人になります・・・』


 それから僕は元の世界で生きる希望を失い死を覚悟していた

事、街で拾った紙に書かれた紋章に導かれこちらの世界に来た事。

神なのか不明だがユミルと出会い腕輪を渡されロックラビット

の願いの石を使う事で元の世界と行き来出来る様になった事や

腕輪の能力で魔法が使える様になった事などを話した。

話の最中、驚きからか目を大きく見開き無言となっていた。

複数人で聞いていた事もあり互いを意識しながら混乱する事も

なく聞いてもらえた。


『話は以上です、シャナさん、お母さん、ごめんなさい本当の

 事を話さなくて。悪気は無かった事は信じてください。

 でもシャナさんへの想いに嘘はありません、貴方の優しさ

 に惹かれ心の底から愛してしまったのです。

 この世界で生きてく見通しも覚悟もできました、ですので

 この場を借りてお願いします、僕と共に人生を歩んでください

 シャナさんを幸せにさせてください、お願いします』


『雄靖さん・・・・ごめんなさい。今、混乱しちゃって・・・

 正直に話してくれた事は嬉しいです。

 心が落ち着くまで少し時間を下さい』


『そうね……雄靖さん、この子が心の整理がつくまで少し待って

 頂けないでしょうか・・・お願いします。

 落ち着くまで隣の部屋に行ってますので』


『申し訳ありません、シャナさんの事をお願いします』


 二人は隣部屋に行くのを僕は見守っていた、やはりショック

だっただろうか……


『ワイ話してもええかな?』


『なんか気を使わせてしまいました、リケッツさんが聞きた

 かったガラスは先程お話したとおり僕が元の世界から持ち

 込んだ物です、その事以外ですか?』


『ユウが持ち込んだのは理解したよって、これからも行き来

 して持ち込むって事でっしゃろ?

 何でそんな面倒な事すんねん、元の世界で以前の生活を続ける

 って考えへんの?』


『僕は元の世界で挫折した人間なのさ、今のまま戻っても前の

 状態に戻るだけさ、でも異世界に来た事で僕は変わり始めて

 いる。

 愛する人、頼りになる仲間、優しい人々に出会い僕は生きる

 事の意味を感じている。

 だからこちらでの生活も大切にしたいし最終的には二つの世界

 で生きていく事を望んでいる、その為にも資金を稼がなければ

 ならないのさ』


『せやな・・・生活するんや金は必要やな、せやけど異世界って

 ホンマにあるんやな。

 ユウ、ワイも資金稼ぎに協力するさかい異世界の事を教えて

 くれへん?』


『リケッツには色々助けてもらったし、教えるのは構わないけど

 条件がある。

 異世界についての話は誰にも口外しないでほしい。

 それが条件だけど良いかい?』


『ああ、それでかまへん』


 リケッツは約束を守ってくれると信じてたから話したのだし

協力者と考えれば大いに頼りになる。


『ところで異世界について何か知りたい事でもあるのか?』


『まずはガラス以外にこちらで商売できそうな物はあんのか?

 武器みたいな物は入手できるんか?

 あとワイも同行できるんかいな? こんなところやな』


『ガラス以外にも有ると思う、僕が気をつけているのは

 こちらの世界にも有る物を選んでいるかな。

 全く存在しない物は騒ぎになると思うし、危険だと判断した

 からね。

 僕が仕入れているのは、百円ショップって呼ばれている所で

 こちらの言葉に直せば、銅貨商店かな?

 食料や食器、装飾品、物作りの材料など銅貨1枚から数枚程度

 で売っている店なんだ。


 武器は売っているけど、僕の住んでいた国では一般人は買う

 事は禁じられている。


 リケッツの同行は可能なのか調べておくよ

 これでいいかな?』


『ガラスのコップが銅貨数枚! なんか目眩がしたわ・・・

 たぶんやけど、ヤニスは金貨2・3枚で売ったと思うぞ

 ヤニスに売った値段はなんぼや?』


『多分、金貨1枚だったかな、僕はその値段で十分だよ

 それに色々と世話になったりしてるしね』


 ま、元値が100円程度だし高額商品なら仕入れ値として

考えれば妥当なのだろうな、今度はもう少し売値を考えても

良さそうだな。


『ガラスで作られてる飾り物とかないんかな?

 あったらワイも欲しいよって』


『ん〜、たしか宝石を仕舞う為の入れ物があったと思うな

 それでいいなら今度序でに仕入れてくるよ』


『ほんまか!嬉しいな〜、物によっては金貨2枚で買い取る

 さかい頼むで〜』


 流石リケッツ、何か当てがあるのだろうな・・・

やはりこの商売モデルは今後も僕の生活基盤の基礎になりそう

だな、課題は元の世界での株式トレードを如何に成功させるか

が今後の目標になりそうだ。

売り捌くだけの収入では元の世界では目立ってしまう、理想を

言えば商売を営む方が自然だし、その為の資金作りとしては

徐々に株で資金を増やす方法が怪しまれないだろう。

異世界では冒険者としてのクエストとヤニスやリケッツに商品

を卸す事で生活はできそうだな。


『雄靖さん、ごめんなさいお待たせしました』


少し落ち着いたのかシャナとアンナが奥の部屋から出てきた。


『いいえ、謝るのは僕の方ですよ、いきなりこの様な話を

 聞かされれば驚くのは当たり前ですよ、僕の事は気にしない

 でください』


『雄靖さん、娘とも話したのですが別の世界から来た方でも

 これまでの貴方の行いを見る限り誠実な方だと思います。

 ですので貴方にはこれまで同様のお付き合いをしたいと

 娘と決めました、それに娘も………後は娘から聞いて下さい』


『この事は貴方に愛を告げたとき気に話すべきでした、でも真実

 を話す事が怖くて言い出せませんでした。

 先の魔獣(デモニオライノ)退治、迷宮攻略、冒険者になった

 事で少しだけ自信が持て真実を話す決意ができました。

 改めて聞きます、こんな自分ですが愛していただけますか?』


 シャナは一度アンナに目線を移し何かを確認した後、僕に視線

を戻し口を開いた


『もちろんです雄靖さん、貴方を愛する気持ちは変わりません

 でも、これからは隠し事は”無し”ですよ』


『雄靖さん、娘の事をよろしく頼みますね』


『シャナさんに出会い運命を確信しました、僕と一緒に同じ物を

 見て欲しい、貴方に永遠の愛を誓います』


『雄靖さん・・・私、貴方と共に生きて行きます』


 そして僕らは誓いの口付けを交わした。

結婚の見届けはアンナとリケッツ、この日二人の祝福を受け

シャナと夫婦になった。


『お目出度いな〜ユウ、ところで住まいはどないすんのや?

 冒険者になったんや、家を空ける事も多いやろ

 嫁さん一人で家におるの心配なんとちゃうか?』


『それは僕も考えていたよ、お母さんに相談があります

 この家の増築し僕も住みたいと思うのですが許可を頂きたい

 のですが・・・・』


『それは嬉しい提案ですわ、家族になるのですもの三人で

 暮らしましょう、子供が生まれた時も安心できるでしょ!』


『お母さんたら・・・・もう………』


『あはは・・・お母さん、ちょと気が早いのでは・・・』


『家の方は誰に頼むねん?決めてんの?』


『僕の家を建てたズムコに頼むよ、腕も良いし信頼している』


『なら、ワイはメンバーにこの事を報告してくるよって

 落ち着いたら連絡よこしなはれ、それまで仕事を探しとくわ

 新婚やお金も必要やろ』


『そうですね、よろしく頼みます』


『雄靖さん、危ない仕事は心配なので・・・』


 シャナは俯いて心配そうにしている、僕も新婚早々に危険な

仕事は避けたい。


『心配しなさんな奥さんが心配になる様な仕事はユウには

 させへんよって安心してくださいな』


 流石リケッツ分かっている、良かった〜でもどんな仕事に

なるのやら・・・


 そしてリケッツは仲間の所に戻って行った。


 家の解体(僕の家)と増築(シャナの家)をズムコに依頼し

30日程で作業は終わった。

僕の家で作った臭わないトイレとシャワー付き浴室は元の世界

を参考にした作りでシャナ親子には好評であった。

それ以外は寝室と居間を増築し台所とダイニングは共用にした

家族で過ごす時間を大切にしたいからだ。


 因みに増築後に初夜となったのだが、僕は憧れのエルフとの

性交に興奮状態で何度も、何度も枯れ果てるまでしてしまった。

お母さん、ゴメンナサイ聞こえていたでしょうね・・・・

翌朝、アンナは意味ありげにニコニコしていた・・・は〜〜


 しばらくしてリケッツが訪ねてきた

僕の準備が出来次第に新たな仕事先に向かうらしい、仕事内容

は獣人が住む村へ調査に向かうらしい、獣人は特殊な能力を持ち

美男・美女が多く労働力、探索仕事、接客業などで需要多くこの

世界では貴重な存在らしい。

ところが、村からの連絡が数ヶ月途絶えているらしく調査の依頼

が出ているとの事。

本来なら国の正式な調査団が行う事だが、向かった調査団も行方

不明となり、事態を重要視した国は有能な冒険者に調査依頼を

出すことになったらしく、それをリケッツが受けたらしい。


『仕事の内容やけど・・<中略>・・って事やねん』


『なんかそれってヤバイ仕事じゃないかな・・・大丈夫なの?

 一応言うけど僕、新婚なんですけど・・・』


『調査だけやしな、それに報酬は大金貨5枚や、一人1枚なんて

 こんな高額報酬なかなか無いで〜

 それにワイのパーティーは実力者が揃っている安心しなはれ』


 そうだな・・迷宮で見せたのは実力の一部って感じだった

リケッツを見れば他のメンバーの戦闘力が高いのは想像できる

それに・・獣人か〜ファンタジーの定番だし見てみたい!

報酬が高額なのが危険を感じさせるが・・・


『わかった、参加するよ。装備は前と同じで良いよね?

 シャナにも話したいし、準備できたら連絡はどうしたら?』


『そやな、装備は同じでええよ、連絡は前に渡したペンダント

 に念じればワイが感知できるねん、待っとるで』


 仕事の事をシャナとアンナに伝え、不安なアンナを安心させ

るのには一晩の時間を要したが無事に許しを得た。

装備を整えペンダントに念じた。

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