第1章 4話 仲間と旅の準備
一週間後、僕はリケッツ連れられメンバーと顔合わせの場所に向かって
いた。
シャナさんからの返事がまだで気になっていたが、リケッツのパーティー
情報も重要なのだ。
実力者揃いのって事は危険な仕事が多いのではないだろうか?
そう考えるとシャナさんに打ち明けたのは早まったかな?
待ち合わせは町の酒場だった。僕とリケッツは奥まった席へ
と向かい3人が座るテーブルの前に立った。
『よ!集まっとったな、隣におるんが新しくメンバーになる
雄靖や、よろしく頼むで』
『はじめまして、リケッツさんからは前衛で魔法の担当と
聞いています、パーティーは初めてですので至らない点
は御指導をお願いします』
『カルロス・カイルだ、後衛で狙撃を担当している
よろしくな』
『メーデイアよ、治癒と遊撃を担当しているわ
よろしくね』
『アバンだ、盾役してる』
長身細マッチョ風カルロス、妖艶グラマーなメーデイア
アバンは盾役って感じのガッチリタイプだ。
『雄靖です、リケッツからは前衛の魔法担当を任されました
パーティーとしての行動は初めてなので、色々と教えて
ください』
『リケッツ、パーティー経験無いって大丈夫なの?』
『ま~うちらのパーティーの連携は教えなきゃならんし、それより
雄靖はな収納魔法のストレージが使えるんや、うちらの中では
わい、とメーデイアしかおらんしな、収納使いが増えるのは
有りがたい。
それに、パーティーの経験は無いようやけど、連携の戦い方は
知ってる感じがするんやけど・・・・』
だよね~この世界に来る前は異世界物のライトノベルなんかを
愛読してたからな、戦闘における連携の知識だけなら何となく
理解してるかも、誤魔化した方がいいかな?
『リケッツの戦い方を見て邪魔にならないように動いていただけで
連携とかは考えていなかったよ、そう見えたのは偶然さ』
『収納魔法持ちか、俺の狙撃は鉄球使うからな収納魔法使いが
多いと助かるな、期待してるぜ』
『任せて下さい、カルロスさん』
『良かった、今まで鉄球は私が担当だったのよ、今後は雄靖に
お願いするわ』
パーティーの雰囲気は良い感じだ、これなら何とかなりそうだ
後は自分に与えられた役割を確実にこなすだけだな。
『自己紹介が済んださかい仕事の話しよか。
今回は雄靖が参加での発仕事やし、互いの連携の練習を兼ねた
仕事がええと思うんやけど、どないする?』
『それなら迷宮探索なんてどうかしら?
難易度も階層で調整できるし、貴重なアイテムも手に入れる
可能性も有るんじゃない?』
『面白いねメーデイア、良さそうな迷宮を知ってるか?』
『俺は迷宮に詳しくないからな』
カルロスは詳しくないようだ、メーデイアは何処か当てが
有るのだろうか?
迷宮はゲームの様にアイテムが手に入るようだ、貴重な物
じゃなくても商売になる物が入手できるなら興味があるな。
『ミノス地下迷宮なんてどうかしら?
難易度は適度に良いし空間の広さも申し分ないわ、それに
下層に行けばアイテムもかなり残っていると聞いてるわ』
『今回は広いちゅうのはええな、連携の確認もあるしな
それにやアイテムが手に入るば雄靖はんは嬉しいとちゃい
ますか?
ヤニスから聞いてまっせ、珍しい物で商売してるって
聞いてますよって』
『あははは、知ってたんですねリケッツ・・・・
迷宮ではどの様なアイテムが手に入るか教えてくれないか?』
『カルロスは詳しいんじゃない?私達の中では迷宮攻略は得意
だったよね』
『得意って程でもないさ、そうだな・・・・魔法の道具が多いな
俺は狙撃に役立つアイテム目的だが狙って手に入らないしね。
他には装飾品かな、迷宮の物は高額で売れるぜ』
なるほど、危険に見合う物が手に入るって事か。
魔法系は元の世界じゃ売れないだろうから、装飾品狙いかな・・
『そうなんですか、何か迷宮に興味が出てきましたよ』
『雄靖がええなら決まりやな、出発は七日後でどないや?
集合場所はここや』
〈〈〈〈 了解 〉〉〉〉
メンバーは準備の為、酒場を後にした。
僕は帰りに師匠カルヴァンを訪ね迷宮に行く事やメンバーに
会ってきた事などを報告し、ついでにミノス地下迷宮につい
て聞いてみる。
『カルヴァン師匠、ミノス地下迷宮って御存知ですか?
注意点などあれば教えて頂きたいのですが・・・・』
『そうだな、私が知っている事は階層が50有り迷宮と
しては難易度と大きさは中規模。
魔法系アイテムや宝石などが手に入るらしく魔物の種類は
魔獣系が多いと聞く、魔物も素材として売れる。
リケッツのパーティーなら無茶をしない限り大丈夫だろう』
『なるほど油断は禁物ですね、不安はありますが得られる物を
考えると楽しみでもあります、ヤニスの店で買い取りは
できますか?』
『買い取ると思うがな・・・・心配なら事前に聞いてみたら
どうだ? それとヤニスから聞いたがシャナさんの事は
考えなくていいのか?』
『聞いてたのですね、彼女にはパーティーの事は話しました。
それに告白もして今は返事待ちなんですよ、迷宮の話しは
未だで、これから話に行きます』
『そうか……良い返事であることを願っていますよ』
僕はカルバンの家を後にしシャナの家に向かった。
かなり緊張している、返事は良くても悪くても問題は
山積みだ、でも考えても仕方がないな。
家にはシャナとアンナが昼食の準備をしていた。
迷惑かとは思ったが聞いてみることにした。
『シャナさん、アンナさん只今戻りました。こんな時間に
失礼かと思いましたが、お話がありまして都合を知りたく
帰宅の報告を兼ねて訪ねて来ました』
『まあ雄靖さん、よく来てくれましたね嬉しいわ、娘も心配
してましたのよ』
『雄靖さん……』
シャナさんは不安そうな表情で僕を見つめていた。
『雄靖さんパーティーに入ったんですよね?もう活動は
しているのでしょうか?』
『まだですが、近く迷宮に行くことになりそうです。決まったら
報告しますね、珍しい物が入手できそうなので楽しみなんですよ』
『シャナ、立ってないで奥の部屋で話したら?
何か長くなりそうじゃない?
食事の準備は私がしておきますよ』
娘の雰囲気で何かを察したのかアンナは二人きりで話す
よう促し、二人は奥の部屋に向かった。
『雄靖さん、迷宮って危なくないのですか?
好きになった人が危ない事をするのは…………あ!』
彼女は頬を染め俯いていた。
『え!・・・・シャナさん、今の言葉って・・・・
前に打ち明けた事の答えだと思って良いのですか?』
『うぅ…………あれから私の心と向き合って考えました、亡く
なった夫の事、命懸けで守ってくれた雄靖さんの事、そして
求愛を受けた事。
答えを出せないのは亡くなった夫に対して裏切りになって
しまうのでは……そんな気持ちがあったらから。
夫から救ってもらった命、軽くは考えられない。
でも、母は過ぎ去った事にさ縛られて今の気持ちを押さえ付け
ていては亡くなった彼も心配なのではと言ってくれました』
『シャナさん、僕も事情は承知しているつもりです、急いで
返事を頂かなくても大丈夫ですよ。
今日は迷宮に行く事を伝える為に伺っただけですから』
『でも貴方の想いに答えるには、もう少し時間が欲し
かった。
まだ亡き夫を忘れられない私が他の男性に想いをよせる事は
無いと考えていました。
森で貴方と出会った時は本当に驚いたのですよ、亡き夫に
瓜二つでしたし夢かと思ったほどです。
そして少しずつ貴方を知っていく中で、次第に意識するように
なりました。
先日、魔獣から守ってくださった時に貴方に好意を抱いてい
ると自覚しました……
だから・・・・返事は決めていました。
雄靖さん、私を一人にしないで下さいね、約束してくれますか?』
シャナさんは夫に先立たれ、その事が伴侶を持つことに臆病に
なっていた。その事を理解していたが、それでも彼女に告白すると
決めた。彼女とこの世界で生きていく、それが今の僕の願いだ。
『シャナさん……約束します、貴方と共にいつまでも』
そして僕達は抱き合った。
その日は皆で食事をし、二人の事を彼女の母アンナに伝えた。
アンナは僕達の事を予感していたらしく、特に何も言わず
祝福してくれた。
何となくだがシャナの事を誰かに報告したくなりヤニスの
店に来てしまった、この異世界では気兼ねなく話せる一人だ。
『シャナから返事を聞いてきたよ』
『で、どうだった?想いは通じたのか?』
『僕の事を受け入れてもらったよ、お母さんからも許し
を得たよ』
『お~やったな、俺もな・・そんな予感はしてたけどな』
『何でさ?・・教えてくれよ』
『そうだな、一つは外見が亡くなった夫に似ていたしな、
それにお前は諦めがわるそうだしな、そのうち口説き
落とすと思っていたよ』
『何だよそれ、でも諦めたくはなかった気持ちはあったよ、
(諦めるな!)って心の声が聞こえた気がするんだ』
『あははは・・キザな言い方じゃないか?ま、いいけどよ。
悲しませるなよ、それに彼女はエルフなんだ、人族のお前
とは寿命が違うぞ、その事は考えているのか?』
『勿論考えたさ、身勝手な考えだとは思うが、僕の命ある
かぎり彼女に愛の全てを捧げる覚悟だよ、その事しか頭に
なかった・・・・答えになってないな、でも今はこれしか
言えない』
『考え抜いた末の結論なら俺がとやかく言う事じゃないがな。
ここに来たのは彼女の報告だけか?』
『実は近いうちに迷宮に行くことになったので、その準備の
相談もしたかったのさ』
『迷宮だと~おいおい、彼女は知ってるのか?
折角、彼女と上手くいってるのに危険な迷宮に行かなくても
いいだろうに、狩猟や採取の仕事だけでも生活には困らんし、
硝子なんかの雑貨の買い取りもあるし収入は十分だよな?』
『ちょっと訳ありでな・・・・命の危険を感じたら逃げるかな?
彼女には話したよ、かなり心配してたよ。
一緒のパーティーメンバーも、それなりに考えてくれている
ようだし、信用はできると感じたよ。
それに彼女の事もある、無茶はしないさ』
迷宮行きを心配してくれた事は嬉しく感じた、異世界に来て
しばらく経つが僕は彼の事を信用している、良い人物と出会え
たものだ。
『そこまで考えているなら、これ以上は言わないさ。
ところで何を準備するんだ?俺の店で事足りればいいが?』
『冒険者の仕事は初めてだからな・・・・武器、携帯食、薬草
なんかだろうか?』
『そうだな武器は複数必要だろうな、お前は収納魔法が使える
のだから食糧、毛布、食器とか思い付く物を持って行けば
いいんじゃないか?』
『じゃ、武器から選ぶか・・オススメはなんだい?』
『狭い所でも扱いやすいのがいいだろうな、短剣かショートソード
を主装備として、魔法の補助武器が良いだろう。
後は防御をどうするかだが希望はあるか?』
『パーティーは機動力重視のように思えるから軽さと防御力の
バランスが重要かな』
『なら部分的に金属を使った軽鎧だな、籠手に物理防御の魔法を
施せば盾は不要だろうしな、少し高額になるけどよ』
『僕は主に魔法の担当みたいだから、短剣がいいと思う鎧は高額
でも今、聞いた鎧で頼む。魔法の補助武器には近接攻撃に使え
るのが良いかな・・そんな感じの有るかな』
『短剣と鎧は数も揃っている、補助武器は風魔法のが一つしか
ないがどうだ?
ウインドブレスっていう魔道具なんだが打撃と防御の魔法が
付与されている。威力は弱めだが魔力の消費が少なく発動が
速いのが特徴なんだがどうだ?』
『いいんじゃないかな、前衛だから発動が速いのは使いやすい
と思う、短剣と鎧を見せてくれ』
短剣は思ったより数は揃っていた、こんな経験は初めてだし
何を基準に選べばよいのやら・・・・
ん?この紅い短剣はカッコいいな双剣だし。
『この双剣が気になるのだけれど・・・・』
『それは双剣クルテシルツさ、火竜の鱗で作られているらしい
魔力を流せば刃に炎を纏い少々の刃こぼれなら修復される。
切れ味は普通の剣と変わらないが、手入れが楽だぞ。
その双剣を選ぶなら鎧は(邪龍の鎧)がいいな、なんせ対で
作られた物だしな』
『どんな鎧なんだ?』
ヤニスは店の奥から深紅の鎧を持ってきた、胸当てと
籠手だけの軽鎧のようだ。
『これさ、双剣と同じく自己修復機能を持っている。
軽く動きやすい形状だからな攻撃重視の前衛には
合ってると思うぞ』
高額な物だが、ここはヤニスの店なのでガラス製品を売る
ことで支払いは可能だと思う、旅費も必要だし交渉してみるか。
『ヤニス、今は金の持ち合わせが少ないんだ、手持ちの物を
引き取ってもらい支払いに充てたいのだが・・』
『硝子製品かい?見せてみな』
収納魔法でしまっていた物の中から虹色グラスを選んだ、
理由は単純に高く売れそうな気がしたからだ。
『これなんだけど、どうかな?』
ヤニスの目が大きく見開かれたと同時に両肩を捕まれた。
『なんだこれは!初めて見た、これを幾つ持っているんだ、
もしも4つ持っているなら、これ以外に代金は要らないぜ』
何となく予感はしていた、普通の硝子製品に価値が有るの
なら虹色グラスなら驚かれると思った、確かイケると思い
多目に買ってた気がする。
『4つね、待ってて・・・・あ、あった、これだけで支払い
は良いのか? 僕は助かるけど』
『何を言っている!こんな珍しい物はないぞ、実は然る貴族
から高価な食器を探す依頼が来ててな、お前に相談しようと
考えていたんだよ、そこにこの話しだだからな丁度良かった
のさ』
『これで商談成立だな、迷宮から帰ったら寄るから買い取って
くれるかい?』
『おうよ、任せな・・他に必要な物はあるか?』
その後、携帯用の日用品や薬等を買い揃え店を後にした。
『準備はこんなものだろう、明日はシャナの家に寄り挨拶を
してからリケッツの所に向かうか』
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