第13話
(今日のヴァイオレットさん、様子がおかしかったです…)
いつも惨めな思いをしていた授業を晴れやかな気持ちで終え、フィオナ=ヴァン=アルファスは着替えながら先ほどのことを思い返していた。
彼女のおかげで自分にもあんなにすごい魔法を使えることが分かった。
まるで重い枷から解放された気分である。
これで国王にさらに近づくことができる。彼女には感謝してもしきれない。
ーーフィオナは深呼吸をして気を落ち着かせる。
だけど、いまだ彼女には嫌悪感が根強く残っている。
彼女が同じく魔法を学ぶ同志である生徒を斬り殺そうとし、国を汗水垂らして支えている庶民にこれでもかと罵詈雑言を浴びせていた光景は決して忘れない。
ーー彼女に触られた胸に手を当て、荒くなりそうな息をおさえる。
だが、あの目。
違う。
生徒を斬り殺そうとしていた彼女を止めに入ったときに見たのは、まるで全てが憎いというような目。
しかし今日、自分を見るあの目にはそんな負の色は一切なく、むしろどこか優しい色さえあった、ような気がする。
まあ、それはさておき。
フィオナはごくりと唾を飲み込みながら、隣で着替えているヴァイオレットをこっそりと凝視する。
汗ばんだ肌に張り付く、羨ましいほどに艶やかな銀髪。大きく開かれた胸元。
頬を赤く染めた、神もかくやという美貌。
(うう……疼く…!)
その全てが直球にお腹を疼かせ、フィオナの胸を大きく高鳴らせる。
同じ女であるはずなのに、膨らみがまったくない貧しい胸に惹きつけられ、彼女の姿を扇情的に感じてしまう。
「えっろ……」
思わず漏らしたのだろう、そんな声がフィオナの耳にも届く。周囲に目を走らせれば、クラスメイトのほとんどがヴァイオレットを熱く潤んだ目でガン見している。
中にはなぜかパンツの中に手を入れてもぞもぞと動かしている者も。
(はぁ…はぁ…治まるにはどうしたら…?)
フィオナは太ももをもじもじと擦らせる。
分からない。今までこんな衝動に襲われたことがないからまるで分からない。
自分と同じように彼女を見つめていたクラスメイト達が"ト、トイレ行ってくる!"と慌てて教室を飛び出していく。
なのでとりあえず自分もそれに続くことにした。
お腹を押さえながら教室を出るとき、最後にフィオナはヴァイオレットに目を向ける。
周りの様子にも気付かず、なにやら自身の下半身を見てため息をついている彼女。
(あなたは、いったい……)
言動と態度、何もかもがちぐはぐな彼女が、フィオナにはほんの少しだけ薄気味悪いものに思えた。
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