第12話
「う……なにが…」
「目が…まぶい……」
辺りで呻き声があちこち聞こえる、まさに地獄絵図の中。
俺はゆっくりとまぶたを開けた。
視界が白く染め上げられた後、徐々に見えてくるようになったのは無残にも地面が直線状に大きく抉られ、的が砕け散るどころか消滅している光景。
さらに的の先にあった木々も根本が大きく削られ、煙をあげながら倒れている。
光系、最強の殲滅魔法"聖なる極光(ホーリーレイ)"
これが先ほど放たれた魔法名だ。
使い手がほとんどいないが、使えれば対魔王の切り札にもなりうるほど強力な魔法。
それが生み出した圧巻な光景に生徒達も先生もあんぐりと口を開いたまま声も出せないようだ。
魔法の才能がないと蔑んでいた相手が凄まじい魔法を使った。
その驚きが笑えるほどに見て取れる。
そう、フィオナに魔法の才能がなかったわけではない。
むしろありすぎて制御ができていなかったのだ。
原作でも登場キャラで断トツの魔力保有量を持つ彼女、普通の生徒の魔力量の約十人分にも至る膨大な魔力を制御するのは非常に難しいだろう。
現に的にあてようとしている、フィオナよりも圧倒的に魔力量が少ない生徒達でも苦戦している。
それにも関わらず、フィオナは的にあてようと無意識に制御してしまっていたことで何発も不発に終わることとなってしまっていた。
原作ではどうやって王子が強力な魔法に使えるようになったのか具体的に掘り下げられなかったために分からなかったが、見ていれば分かるほどその種は非常に簡単だった。
「これ、わたしが…?」
信じられないとばかりに他の生徒たちと同じく口をポカンと開いたまま、自身の魔法による破壊の跡を唖然と見つめていたフィオナだったが、
「やった…やりました!!!ありがとうございます!!
あなたのおかげです!ヴァイオレットさん!!!」
ぴょんぴょんと跳ね、全身で喜びを示しながら俺に抱きついてきた。俺の顔がフィオナの豊かな胸の中にふにゅんと埋まる。
顔全体に感じる柔らかさと甘い匂い。
本当にありがとうございます!!
しかしその代償に無理矢理眠らせたはずの息子が起き上がるとともに、次第に息ができなくなってきた。
「むがっ…!むごご…!」
「うふふ!!こんなに嬉しいのは初めてです!」
フィオナは喜びのあまり俺が窒息していることに気付いていない様子。
く、苦しい…死ぬ…。
「むぐっ…いい加減に…!」
この楽園地獄から逃れるため、なりふり構わず顔を挟む柔らかいそれを鷲掴みにした。
「あんっ!」
フィオナの拘束が緩んだ隙に、俺はやわらかいクッションから顔を離すことができた。
「ぷはっ!はぁ…はぁ…し、死ぬかと思い、ました、わ」
大きく息を取り入れながら、彼女を睨めつけようと顔を上げたとき。
俺はピシリと固まった。
そこには顔を真っ赤に染めたフィオナ。
そして彼女の胸を鷲掴みにしている俺の手。
「………」
「………」
ところで、今俺たちが着ている服は動きやすさを重視して設計されているわけだが、ここで女子を性的に見る奴は約1名を除いていない。
すると必然的に服はかなり薄手となり、その下はほぼ裸ということになる。
つまりーーーほぼ生乳に触っているようなもの。
「んぁ……! あふぅ……」
誘惑に負け、おもわず俺はフィオナのおっぱいをむにゅむにゅと揉みしだいてしまった。
沈み込んだ五指にこれ以上なく感じる幸せな感触。あっけなく形を変える極上の柔らかさと指を押し返す素晴らしい張り。
これは国宝級だわ〜。
「んっ…手を、離してください」
永遠に触り続けたかったが仕方ない。
名残惜しく思いながら俺は手を離した。最後に一揉み。
「うひゃん!ヴァ、ヴァイオレットさん…?」
すぐに胸を手で覆い隠し、目を白黒とさせているフィオナ。だがビンタと悲鳴は来ない。
そういえば、俺は女装しているんだった。フィオナにしてみれば仲が悪い女の人から胸を揉みしだかれたようなもの。恥ずかしさというより混乱が大きいのだろう。
ギリギリセーフ。俺の股間は残念ながらアウトになってしまったが。
とりあえず悪役である俺がこの公共の場で普通に王女の胸を揉みしだいたというのはイメージダウンということでよくない。
なんとか悪役っぽいことを言わなければ。
そこで俺は腰に手を当て、顎をあげて見下す体勢をとり、
「ふんっ、もっちりとしていて最高でしたわ!いつまでも揉み続けたいものですわね!」
「え?」
「え?」
………あ、間違えた。つい本音が。
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