第一章3 新しいクラス
教室に入ると、聞かされた通り香宮野と塚上が座っていて、昨日世話になった塚上は、ヘルメットを被ったまま、手を振ってくれた。
友好関係は築けていたんだな。僕は少し緊張が和らぎ、心の中で「ありがとう塚上めちゃくちゃ目立ってるけど」と感謝の気持ちを述べ、今年二回目になる自己紹介をした。
「僕は、有羅木暦と言います。前の学校では、帰宅部、中学の時はバスケ部に入っていました。これからよろしくお願いします」
学園生活の始まり、それはそんな紹介から始まった。
つまらない自己紹介だと自分でも思ったが、シーンと静まることはなく、男子は「よろしくな」と声をかけてくれたし、女子も「なんで遅刻したの?」とか質問攻めしてくれた。
正直、この賑やかさはシーンと静まるよりはありがたい。たまに、話についていけなくなったりしながら、大体一〇分くらい経った後、担任の先生が話を区切り、ホームルームが始まった。
大体の連絡事項を終えると、一限目の授業が始まり、それが終わると、再び囲まれて、質問攻めに合いなかなか二人に挨拶に行けなさそうだったから、二限目が終わったあたりで、少し席を外させてもらって、二人の近くに行った。
「大人気ですね、ほんとは、私の席の近くになるはずだったのですが、、、」
「なんでそうならなかったんだ?」
「いえ、このクラスは転校生が来るってなると、毎回ああなって、席順はくじ引きで決まることになってるんですよ」
「へぇ、そうなのか?」
僕の席と塚上の席は真逆と言っていいほど離れている。まぁ、近くに居れば、ヘルメットが気になって仕方なくなるとは思うが。
香宮野の席は塚上の後ろで、こちらもやはり遠く感じる。
「あ、ぁ有羅木君じゃないっすか。いつの間に来たんです?なんか遅刻してませんでしたっけ??」
「香宮野、もう二限目終わるんだが、なんでそこから時が止まってるんだ?」
「えぇー。そうでしたっけ?」
「有羅木さん、先に忠告しときますが、この状態の香宮野さんを起こさない方がいいですよ。触らぬ神に祟りなしです」
「どうゆうことだ?」
「この状態の香宮野さんはめんど、...いえ大変なので」
「今、面倒臭いって言おうとしただろ」
香宮野は、むくりと起き上がり、塚上を睨みつけ、塚上の椅子を蹴る。
「いやだって本当のことじゃないですか。なりふり構わず、私を殴ろうとしたことだってあるじゃないですか。しかも、能力まで使って!?」
「えぇ?そんなことありましたっけ??気のせいじゃないですか?」
「気のせいなんかじゃありませんよ」
「じゃあ、今サンドバックにしてあげますよ」
「嫌ですよ、私はあなたのストレスの吐け口じゃありませんよおおぉぉぉぉぉ、おあ?!!」
可哀想に塚上。まぁ、中にも防護服着てる塚上じゃないと成せない仕事だな。南無三、お前の犠牲は無駄にはならないようにするよ。
僕は、現在殴りかかられている塚上を横目に、静かにその場から退散した。まぁ、そこまで長く続けていてないようだし、まぁ、過激なツッコミだと思えば、許容できる。僕はああはなりたくないが。
ちなみに当初心配していた授業スピードだが、まぁやはり前よりは格段にスピードは上がったのだが、でも、理解しやすく説明してくれるため、不思議と眠たくなったりはしなかった。
どの授業も退屈な所が、要所要所にあるはずなのだが、そんな部分も聞き入ってしまうような、そんな感じだ。
周りを見ていても、このクラスには授業中寝てる人がいないし、ギャルのように見える女子も必死でノートを取っていた。みんながみんな、真面目に授業を受けていて、なんだか珍しい物を見る目になっていた。
まだ、一、二限しか経っていないけどなんとなくクラスの雰囲気は掴むことができたと思う。
三限が終わると昼食の時間に入り、四、五、六限が終わると真っ直ぐ帰宅というのが毎日のスケジュールになりそうだなぁとか、あんまり身構えずに帰宅する前まではそんな事を考えていた。しかし、そんな当たり前など許されないことを知ることになる。
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