第三部
プロローグ ‥‥‥これはまだ必要かも
◇◇月菜side◇◇
「うぅっ‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
星夜とみぞれの誕生日から一日たった四月二十五日の土曜日。
今日の私は、リビングで目を覚ました。
なぜなら昨日、星夜がみぞれを連れに行った後、待ってるのが暇になった私と森田君は二人が来るまでテレビゲームを始めて、その時にみぞれの妹のあられとしぐれの二人も強いことを話したら、『せっかくだから呼ぼう!』ってことになって呼んで。
一時間、二時間、三時間と時間が過ぎていき、『あいつら全然来ないから、流石に帰るわ』って、森田君が帰って、でもその後も三人で続けて。
それからまた、何時間かしたらあられとしぐれも帰って、家に一人になって。
‥‥‥だけど、星夜は帰って来なかった。
その事実に、送り出したのは私でも、やっぱりちょっと悔しい想いがして‥‥‥やけになって、ネット対戦で相手を八つ当たり気味にボコボコにして。
気が付いたら朝になった。
そして今、目の前には、一言文句でも言おうと思ってた一匹の狼がしくしくと途方に暮れてる。
寝起きの目覚めが最悪だったから、気分を変えたくて、昨夜ゲームしながら考えてた計画を紙に書きおろしてる時にいきなり飛び込んできたと思ったら、なんかずっとこんな感じなんだよね。
星夜もその時帰ってきたんだけど、直ぐにどこかに行こうとして。
しかも、なんか敷居の高そうなスーツなんて着てて、みぞれとのことも気になったからどうなったのか聞いたんだけど、本気で急いでたみたいで、『詳しいことは帰ってきたら話す! みぞれとは、実は——』って早口でまくし立てたと思ったらダッシュで走り去ってしまった。
「‥‥‥で、なんであなたたちは付き合ってないの?」
「そんなの‥‥‥」
「うん?」
「そんなの‥‥‥っ! あたしが聞きたいよぉぉぉぉぉおおおおおおぉおぉおおおぉっ!!」
「‥‥‥うるさい」
「なんでよぉぉおおおっ! めっちゃいい雰囲気だったじゃんっ! 超超ムード高かったじゃんっ! あそこで星夜と愛し合ってハッピーエンドだったじゃんかよぉぉぉぉおおおおおっ!!」
「‥‥‥‥‥‥」
「くそぉぉぉおおおっ! どぉうしてだよぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!!」
おーおーおー‥‥‥荒れてる荒れてる。星夜から聞いたのは、『まだ付き合ってない』の一言だけで、何が起きたのかわからないけど、藤原〇也もびっくりな『どうしてだよおっ!』が出た。
これで、悪魔的だ‥‥‥まで言ったら完璧だね。
まぁ、つまりそういうことらしい。
この目の前で机をバンバン叩きながら吠えてる、オオカミ少女こと
そっかー、二人の間にいったい何があったのかは知らないけど‥‥‥んー、いやいや、そっかー‥‥‥はぁ、よかったー‥‥‥。
「なんだ、じゃあまだこれはいいね」
「うぅ‥‥‥なにこれ? NTR作戦第一弾 ~星夜吸血鬼化計画~? ‥‥‥なにこれっ!?」
「そのまんま。星夜を吸血鬼にさせたら長生きするから、みぞれの後に貰おうと思って」
「な、ななっ、そんなことさせないから! 星夜とあたしは生まれた時も一緒なんだから、死ぬときも一緒なの! 心中してもらうの!」
「え‥‥‥」(ドン引き)
「月菜にその顔はされたくないわ! あんたも大概でしょうがこんな計画! 星夜にバレたらドン引きどことじゃないよ!」
う~ん‥‥‥くしゃくしゃぽいっ。
「で、昨日何があったの? あと星夜は?」
「‥‥‥みごとなスルースキル。あー、じゃあ実演も交えて教えてあげる」
「うん?」
実演って何ぞやって思ったし、なんかこう自慢したくて仕方ないみたいなみぞれのにやけ顔がむかつくけど、私も昨日の何があったのか知っておきたかったから、みぞれの言う通りソファーに移動してみる。
それからみぞれは、結構細かに二人のやり取りを教えてくれた。
「こう後ろからギュって抱きしめてくれて‥‥‥」
時に手取り足取り。
「ちゅ~ってして、恥ずかしくて‥‥‥」
時に頬を染め。
「それで、最後に押し倒されて、『本当にいいのか?』『星夜じゃなきゃ、いや』って見つめ合ってね」
「‥‥‥ちっ」
「ちょっと舌打ちすな!」
「これを実践する意味は?」
「ん~? 月菜にも、おこぼれをあげようと思って‥‥‥ほら、今のあたしを星夜だと思ったらちょっとは雰囲気を味わえるでしょ?」
まぁ、確かに。その発想がいらってくるのは置いといて、今私の顔のすぐそばに手を置いて、右手を絡めてる状況は、みぞれを星夜だと思えばグッとくるけど‥‥‥ただ、隠しきれてないにやけ面がなぁ。
「‥‥‥ちっ!」
「だから舌打ちすな! なんかさっきより強いし!」
「それで? ここからどうなったの?」
たぶんキスして、乱れて、わんわん♡の状況になるんだろうけど‥‥‥聞きたいような、聞きたくないような‥‥‥うぅ。
しかし、さらににやけると思ったみぞれの顔は、予想と反して魂が抜けたようになった。
「‥‥‥吐息がかかるくらい、顔が近づいたと思ったらね、電話がかかってきたの」
「‥‥‥‥‥‥」
「健星おじさんから」
「‥‥‥うわー」
タイミングが悪すぎる。なんかそういう状況で、親から電話かかってくるとか萎えるってやつだよ。
「もちろん、星夜は着信拒否して電源も落としたんだけど、そしたら今度はあたしの方にかかってきて、流石になにか起きたんじゃないかと思ったから出るように言ったの」
「うん? で、その内容は? 誕生日おめでとうとかじゃないの?」
「‥‥‥許嫁」
「は?」
「だから! 星夜には許嫁がいて、今日はその人に会いに行ってるの!」
「‥‥‥‥‥‥」
私はみぞれから抜け出して、そっとごみ箱に捨てた計画書を手に取る。
「‥‥‥これはまだ必要かも」
———————
更新ペースを落としますが、また始めますね!
まだまだ書きたいことがいっぱいあるので、どうかお付き合いください。
よろしくお願いします!
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