第九章 狼双子がやってきた!
第58話 「星夜にーちゃん!」「星夜にぃ……」
◇◇星夜side◇◇
——ピコンッ!
『今年の誕生日プレゼント、星夜の時間が欲しい』
「はぁ?」
今朝送った『こ、今年の誕生日は俺から何をむしり取るつもりだ‥‥‥』っていうメッセージの返信が来た通知がしてみて見たら、その内容に思わず間抜けな声が出てしまった。
いや、だって時間だよ? 去年はウエディングケーキ並の超大型ショートケーキ、一昨年は空を飛びたいとかよくわからないことを言われて、必死に考えた結果カメラ付きドローンをあげた。
一昨々年はお城が欲しいって無理難題を言われて、どうしようか頭を悩ませてレゴブロックで3メートルくらいのお城を作ったし、さらにその前はドミノアートが見たいって言われて、一部屋使って延々とドミノを並べ続けた。‥‥‥あれはなかなか精神に応えるのもがあったのを今でも覚えてる。
そんなどこか一風変わったものを要求してくるみぞれの誕プレが今年はまさかの俺の時間と‥‥‥いや~、なんかちょっと嫌な予感しかしない。
「『いったい何を企んでるんだ!』‥‥‥送信!」
どうしようか、俺の寿命が欲しいとかいう意味だったら‥‥‥どう解釈すればいいんだ?
——ピコンッ!
『特に何も、とにかく当日の星夜の時間がほしいの』
「うん? 本当に深い意味はないのかな? まぁ、たまにはこういう年もあるのかもな、みぞれは気まぐれだし」
『おけ、とにかく当日に何も予定を入れておかなければいいんだな?』
『そういうこと、よろしくね!』
いや~、もしもそれだけで本当に良いのなら楽だな。レゴブロックとかドミノアートとか、そういう系のやつだったら今からやってたら当然間に合わなかった。
「そしたら、今日はどうしよう? もともと、みぞれから要望聞いて、それの素材調達に行く予定だったんだけど‥‥‥ん?」
——ピコンッ!
『それと、今日妹たちがそっち向かったから面倒見てあげて、あたしは今日ちょっと予定あって行けないから頼みまする』
『あと、なんか月菜を目の敵にしてるから要注意!』
「えぇ‥‥‥どゆこと? 『ピンポ~ン!』——はやいな」
みぞれからメッセージが届いて、直ぐにインターホンが鳴った。
たぶん、大狼家の双子が来たんだろう。
ということで、出迎えに玄関を開ければ‥‥‥。
「二人ともひさし——」
「星夜に~ちゃ~んっ!!」「星夜にぃ——わきゃっ!?」
「——ぐへっ!」
吹っ飛んでくる小柄な体に顔面からラグビーだったらファウルをもらうであろうハイタックルで、さらにもう片方の小柄な体も同じように吹っ飛んできたけど、玄関の段差に躓いて、しかし勢いは殺せずアメフト選手のようなロータックルで抱き着かれたことにより、仲良く廊下まで吹き飛ばされた。
「わぁ! 久しぶりの星夜にーちゃんだ!」
「いてて、こけちゃった‥‥‥って、アラ! 星夜にぃがぶっ倒れてる!」
「え? ぎゃああぁぁ! 星夜にーちゃん死なないでー!」
「むむ、こういう時は早急な人工呼吸を‥‥‥でも、それはまだシグたちには早いよぉ」
「い、いぎでう! いきでるから、二人とも俺から降りて‥‥‥」
俺の腹の上に重なる二人に、なんとか声を絞り出してそう言うと、「あ、生きてた~!」「よいしょー」って掛け声が聞こえて、軽くなった体を持ち上げる。
そこでやっと、人間砲弾よろしく突っ込んできた双子の顔が見れた。
「いえい! 星夜にーちゃん!」
そう元気よく満面の笑みを向けてくるの彼女は、大狼あられ。
今年から中学一年生で、みぞれの双子の妹の姉のほう。
みぞれと同じ茶髪をボーイッシュにショートカットにしていて、さっき突っ込んできた通りみぞれより元気溌剌オロナミンC。
気になったらとにかく突っ走るような好奇心旺盛なところがあって、俺にとっては弟に近いところがあるけれど、みぞれの妹なだけあって目鼻立ちは整ってるし、なにより最近出るところが出始めてもうちょっと遠慮というものを覚えてもらいたい。RPGの性格設定なら『活発』『無垢』みたいな感じだ。
運動神経抜群、頭もいい。ただ、解答欄を間違えたり、名前を記入し忘れたりとポンコツなところがある。
「星夜にぃ‥‥‥痛くなかった? 大丈夫?」
そしてもう一人。
心配そうな表情を向けてくる彼女は、大狼しぐれ。
同じく、今年から中学一年生の双子の妹のほう。
しぐれは三姉妹の中で唯一髪の毛を伸ばしてて、ポニーテールに後ろで一つにまとめてる。しぐれも溌剌ではあるけれど、みぞれとあられよりは落ち着いてる。
よく気遣いができて、自分よりも他人を優先するような心温まる性格の持ち主で、俺にとっては心のよりどころ。しぐれも姉二人と同じで、綺麗な顔立ちをしてるしね。
だけど、みぞれが言うには最近ちょっとエッチくなってきたというか、なんというか‥‥‥まぁ、そういうことに興味を持ち始めたらしい。本人は恥ずかしがってるみたいだけど、その実ガッツリ見てるとか‥‥‥うぅ、俺のしぐれちゃんが穢れてく。というわけでRPG設定だと『慈愛』『煩悩』って感じかな?
もちろん、運動神経抜群、頭もいい。ただ、さっき玄関に足ひっかけて転びそうになったみたくセンスがないというポンコツなところがある。
このように性格はみぞれを二つに割ったような二人だけど、小柄な体格や、まだ幼さの残る顔立ちは、よく見ればあられがちょっぴり釣り目でしぐれがちょっぴり垂れ目って違いはあるけれど、初見では見抜けないくらいは似通ってる。
それがこの、大狼家双子姉妹! あられ&しぐれ姉妹だ!
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