第55話 歩けるようになったハミルトン
私はゾーイを愛していた。初めは、友人のような関係だった。けれどいつのまにか、大切な存在になっていた。
彼女は研究熱心で、毒薬のことばかり考えている風変わりな女性だけれど、ユーモアがあって思いやりがあるのだ。
だから、彼女は私を見捨てられない。私が、自らの足で歩くことができなくなっても支え続けてしまう。
これでは、男としてあまりにも惨めだった。一生、ゾーイを縛り付けておくことなどできない。
アレクサンダーに相談すると、渋い顔をしてゾーイに恨まれるだろうが、チャレンジする気があるなら手伝おうと意味深なことを言われた。
「その足は、リハビリ次第で歩けるようになるかもしれない。ハミルトンのような症状を持つ患者を収容している特別な病院がとても遠い国にだが、存在する。そこに行ってみるかい?かなり、きついリハビリらしいが、頑張れるなら・・・」
「アレク!もちろん、頑張れるとも!!お願いだ、そこに連れていってくれ!!」
私は、藁をも縋る思いで、その話に飛びついた。
「ゾーイにも、他の者達にも知られたくはないんだ。そこで、頑張ってみるよ。もし、歩けるようになったら戻ってくる。ダメだったら、その遠い国で生きていこうと思う。そこにも、お前の魔法店はあるのだろう?悪いけど、そこで働かせてくれよ。」
「あぁ、もちろんだ。ハミルトン、ずいぶん、成長したな」
アレクサンダーと私は笑い合った。
☆
アレクサンダーの部下達が、私を夜中にこっそり馬車に乗せ異国へと旅だった。
三日三晩、馬を替え休みながらも、移動し続け目的地に着いた。白い巨大な病院には、さまざまな施設があった。
毎日、痛みに耐えながらリハビリを繰り返した。治癒魔法と驚くほど痛い電気マッサージ、苦くて吐きそうな薬を目をつぶって子供のように顔をしかめて飲んだ。足の指から動かすことを始めて、椅子に座って膝の下を上下出来るようになると、少しづつ筋力もつけるために、壁づたいに這うようにして移動した。
そこまでに、半年かかり、さらにそこから一年、二年とかけて、松葉杖からそれなしに歩けるようにもなったのだった。
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