第53話 クロエの刑は・・・(オリビア視点)

「極刑を!国外追放や修道院ではダメです。あの女には死しかない」

ゾーイは、オーウェン様に言うと涙をこぼした。ゾーイは、自分のせいでハミルトン様が死にかけたことをとても悔やんでいた。

「ゾーイ。そんなに自分を責めることはないわ。だって、あれは不可抗力だったでしょう?」

「私がもっと早く察知していれば良かったのに、つい浮かれていたのです。お嬢様が王太子妃になることが夢のように嬉しかったし、綺麗なドレスを着てオープンタイプの馬車にハミルトンと乗れていつもの警戒心がなくなっていました。私は護衛侍女なのに・・・仕事を怠ったんです」


「あなたは、護衛侍女というだけじゃないわ。私の友人でもあり、大事な家族よ。人は誰でも、完璧なわけじゃないわ。ゾーイは悪くないのよ。悪いのはクロエ様だわ」


「そうだな、明日の裁判で、極刑が言い渡されなかったら、この世に正義はないだろう」

オーウェン様は、言いながらため息をついた。


「なぜ、クロエのような人間がいるのだろう・・・自らは努力をしないくせに他人ばかりを羨ましがって、人を陥れることばかりを考える。そんなことをしても幸せにはなれないのに」





裁判は多くの民衆が見られるように、外で行われた。王太子妃を殺そうとした事件なので異例の措置がとられたのだ。

この日は朝から曇っており肌寒かった。大きなよく響く声で罪状と判決が読み上げられる。


「この者は王太子妃を殺すためにナイフを投げた。その刃には毒が塗られ確実に殺傷能力が高めてあった。幸い王太子妃にはあたらなかったが、別の者が生死の境をさまよい、足が不自由になってしまった。さらには、捕まった後の言動に全く、反省の色がないどころか、笑っていた。そして、自分こそが王太子妃に相応しいとまで戯れ言を吐いた。以上をもって、極刑と処そうと思う。異論のある者は声をあげなさい!!」



民衆達は立ち上げって口々に叫んだ。


「「「異論はなしだ。殺せ!殺せ!殺せ!」」」


「うるさい!!卑しい平民達が私を裁くっていうの?お前達は虫けらのくせに!!私は高貴な生まれなのよ。お前達のようなゴミとは違うのよ!!」

そう言ったクロエ様に石がいくつか投げられた。顔から血が流れたが、クロエ様はなおも叫ぶ。


「私は悪くないわ!!自分の権利を主張しただけよ。私は全てを手に入れるんだ。私こそが全てを手に入れる最高の女なんだぁーーーー!!」


「違いますよ。全てを手に入れるのはうちのお嬢様です。貴女ときたら、どこまで勘違いをしたら気が済むんですか!!」

エマは冷たい口調でクロエ様を睨み付けた。


クロエ様は、死刑の執行官に黒い布袋を被せられると途端に体をブルブル震わせた。

「ちょっと、こんなものを被せてどういうことよ?無礼者!!」

わめくクロエ様の声は恐怖で震えていたのだった。



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