第49話 出来レースの結末

翌日の語学の会話のテストは簡単な挨拶からだった。

まずは、エクアド語で挨拶が始まった。他の令嬢への試験は初歩のものだったが、私への会話はもっと突っ込んだ内容だった。

それでも、私は流暢に会話を進めていく。全員が満点と言われて、ここでゾーイが鼻を軽く鳴らした。


エジプラ語に至っては、どの令嬢も「はい」と「いいえ」しか答えていない。

けれど、私の番になると込み入った内容の会話が入ってくるのだった。

オランナ語、イタリナ語、スペイニ語の全てのテストにおいて公平さが欠けていた。


「オリビア様以外は全員満点です!!オリビア様は、発音が悪すぎます。あれでは、現地の方には全く通じませんよ」

試験官達はそう言うと私に向かって蔑んだような眼差しを向けた。


「やはり、元は庶民の方ですからねぇ。仕方がないとは思いますけれど・・・・。でも、これでオリビア様の無能さがわかったでしょう?さっさと辞退してその座を私にお譲りなさい」リリアン・ジョシュア公爵令嬢が薄く笑って私を睨み付けた。


「そうですわ!!早く辞退なさいませ。でないと、罪に問われて死刑になるかもしれませんよ?王太子妃に不正な手段でなろうとするなど!!万死に値する悪行ですわ」


「汚らわしい庶民のくせに身の程知らずもほどほどになさいませんと、痛い目に遭いましてよ?」


令嬢達が、口々に私を責めたてたその時だった。


「この王太子妃試験に意義を申し立てる!!」

オーウェン様が大きな声で叫んだと同時にアレクサンダー様が試験場に入っていらっしゃった。


「さて、まずはエクアド語だな。アレクサンダー殿、この試験官と話してくれるか?」

エクアド語の試験官にアレクサンダー様が話しかけると、しどろもどろになった試験官が大声でわめきだした。

「発音が悪すぎてなにを言っているのかさっぱりわからない!!だいたい、貴方は何者なのだ?!」


「私は白魔道師だ。通常は身分を明かさないが今回は非常時だからな。不正な手段で王太子妃になる者が出てくればその国は乱れて、その余波が他の国にも及ぶ。悪いが介入させてもらうよ。私は諸国を旅してまわり、その国ごとの爵位をもつ。その私の発音が悪いと君は言ったのか?空耳かな?」


「・・・空耳だと思います。私は、エクアドには行ったこともないですし、実はエクアド人とも会話したことはありません」


「そうか。ならば、なぜそんな者が試験官になれた?」


「・・・・・・・・・・・・」

エクアド語の試験官は黙ってしまい、それをご覧になっていた王妃様の額に青筋が浮き上がった。


エジプラ語もオランナ語の試験官も、アレクサンダー様に話しかけられるが、全く会話ができない。

彼らは、この試験であらかじめ用意した単語しか話せないのだった。


アレクサンダー様が、試験官に代わり次々に令嬢達に話しかけたが、満足に話せる者はサマンサ・パーカー侯爵令嬢だけだった。けれど、その彼女でさえ、発音がたまに曖昧で言葉に詰まることが何度もあった。

私はアレクサンダー様と、五カ国語を楽しく話せた。会話のなかでその国の気候や食べ物などを説明された。

話が弾みそれが試験であることも忘れてしまうほどだった。


「さて、結論はでましたね。王太子妃はオリビア・ベンジャミン男爵令嬢で決定です」


「お待ちください!!男爵令嬢が王太子妃など前代未聞ですわ!!少なくとも伯爵令嬢以上からお選びになるべきではありませんか?」

リリアン・ジョシュア公爵令嬢が、怒りの声をあげた。


「あぁ、忘れていました。そこの試験官達は全員、死罪です」

王妃様がリリアン様の言葉を無視して、無表情で試験官達に告げると、皆が口々に5人の令嬢達の親の名前を口にした。


「ジョシュア公爵の命令で仕方なく・・・」

「私は、パーカー侯爵の命令で・・・」

「私はハンター侯爵の命令で・・・」

「私はツアンワ伯爵の命令で・・・」

「私はアクアドルン伯爵の命令で・・・・」


「そうか。ならば、ここを判決の場としよう。お前達、試験官は全員、国外追放だ。5人の令嬢達の家は爵位を剥奪のうえ、財産を全て没収とする。ご令嬢達よ、喜びなさい。貴女方の親の愚かな浅知恵のおかげで平民になれるのだ。今まで、バカにしてきた平民はきっと貴女達には辛くあたるだろうよ」


「お待ちください、母上。それだけでは罪が軽い。王太子妃にインチキでなろうとした者達です。国家に対する反逆罪だ。平民の下の賤民におとしたうえ、辺境地の開拓班に加えましょう」


「ふむ、いいだろう。今後の戒めにもなる。私は、ここに宣言しよう!この令嬢達の家は爵位剥奪の賤民落ちの辺境地開拓班に処す!!逃げることはできない」

王妃とオーウェン様の言葉を受けて、王様が高々に宣言されたのだった。




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