第46話 災難のハミルトン(ハミルトン視点)その2
アレクサンダーは、ほんの少しだけ顔を歪めただけでなにも言わなかった。
店に入ってからすぐの来客用のソファに腰掛けている。
後ろにいたゾーイは、その女学生を素晴らしく優しい微笑を浮かべながら私から引き離した。
「で、貴女はなぜ、この男に抱きついていたのかな?」とゾーイが聞く。
「貴女には関係ありませんわ。私と店長さんだけの秘密なのですから!」その女性徒はゾーイを睨み付け私の腕に自分の腕を絡めてきた。
ゾーイの顔は、さらに優しい顔になっていくがピリピリと張り詰めた空気は濃度を増していく。
「ハミ君、これはどういう状況かな?」
ゾーイが私に尖った声をぶつけた。
「うん、私にもわからない。この子の兄と私はそっくりで、三日前に亡くなったというから、思い出に浸りたいそうだ」
私がそう言うと、ゾーイはニヤニヤしだした。
「三日前にハミくんとそっくりなお兄さんが亡くなった?それは大変ご愁傷様でした。とても、人ごととは思えない。貴女の家はどこかな?お花を手向けたいと思うから、教えてくれないか?」
ゾーイが、そう言った途端にその女性徒はさっと顔を赤くした。
「あぁ、そういうことなら、私も行きたいな。この店の実質的なオーナーは私だから、お得意様の不幸にはお花ぐらいは手向けたい」
すると、その子の顔をますます赤くなり、抑揚のない声で「結構です」と言いながら急いで帰っていった。
☆
「ハミ君。反省文を便せんに3枚よ。わかった?」
「反省文?」
アレクサンダーが私達のやりとりを見てため息をついた。
「やれやれ、どこに行っても”恋の予感”ってやつか?君たちが、こうなるなんて誰が予想した?この店の権利はハミルトン、お前にやるよ。お祝いにとっておけ!!私は旅に出るよ。当分はカリブ王国には立ち寄らないと思う」
「「は?なにを言っている?私達はそんな仲ではない!!」」
私とゾーイは全力で否定した。私がそんなことになるわけがないのに・・・
しかし、私達のその言葉は宙に浮き、ラナの声が部屋に響き渡った。
「あ、アレクサンダー様ぁー。それは却下みたいですぅ。オーウエン王子様が用事を思い出しそうだからここにしばらくいてほしいって仰っていましたぁーー」
いつのまにか、オリビアのもう一人のピンクの髪の侍女がアレクサンダーの前で人差し指を振っていた。
「どういうことだ?魔道師の行動は誰も制限できないはずだ」
「私にはわかりませんけれどぉ。とにかく、貴方はこの国をでたらダメですぅ」
「そんなことは認めないぞ。ばかばかしい」
「えっと、行くなら私を倒してからじゃないとダメですぅ。だって、私はアレクサンダー様の監視役になったんだもん」
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