第45話 私の恋はこれから始まる(オリビア視点)その2

「私は貴女さえいれば、なんでもできるような気がする。私の側に一生いてほしい」

オーウエン様が私の手を取り、私の前でゆっくりと膝をついた。

それはロマンチックな婚姻の申し込みの時にする所作だった。



私は侍女の3人を振り返る。

エマは穏やかな顔つきで微笑んでいたし、ラナはうっとりとした眼差しで私とオーウエン様を見ていた。

ゾーイは、ニヤニヤと侍女にあるまじき表情で私にガッツポーズをしている。


私は、オーウエン様が好きだと思う。一緒にいて楽しいし寛げて、彼の笑顔で心が温まるし、胸がキュンともする。ならば、この答えはこれしかないわ。


「はい。一生、オーウエン様の側にいてお役にたちたいと思います」

オーウエン様は、瞳を輝かせて私をそっと抱くと優しく囁いた。

「なにがあっても、オリビアを守るし、側妃は一人も迎えないと誓おう」



その三日後に、両親と王宮を訪れた。

私は、オーウエン様の瞳と同じ色のドレスを着た。ネックレスもブレスレットも全てがアメジストの色に統一された私を見てお母様は頬を緩めた。

「まぁ、まぁ。オリビアは、すっかりオーウエン王子色に染められたのね?」


「あら、お母様。私は、オーウエン様がプレゼントしてくださったものを着ているだけですわ。私は私です。」


それを聞いたエマは「どこに行こうと、どのような身分になろうとも、お嬢様はお嬢様です」と言った。


「「もちろん、当然ですわぁ(だ)」」

ラナは、うっとりとしていたし、ゾーイは力強く頷いていた。





両親と私、王様と王妃様とオーウエン様で和やかな会食が始まり明るい会話がとびかった。

王妃様は、私を王太子妃に迎えることをとてもお喜びのようだった。

「オリビア、これは貴女がここに来たときから私が望んだことなのよ。専属侍女は、建前であって私は貴女を義理の娘にしようと目論んだの」


「そうだったのですね。一時は、娘が心配で眠れない日もありましたが王妃様がお味方なら心強いですわ」

お母様は安堵の表情を浮かべた。


会食が終わると、私とオーウエン様は宮殿の庭園を手を繋ぎながら散策した。

藍色の幕のような深い空に星が瞬き、夜の空気は澄んでいて薔薇の香りがほどよく匂いたっていた。

私達は見つめ合い、オーウエン様は私にそっとキスをした。

胸が高鳴り、甘く痺れるような幸福感に包まれていく私。


私の恋はとても、ゆっくり、確実に育っていく。

オーウエン様となら、絶対に幸せになれる。

いいえ、幸せになるよう努力しよう。どんな時も、なにがあろうと・・・






その堅い決意を試すような出来事が、その婚姻の公式発表後に私を待っていたのだった。


「「「その婚姻のお話は納得できませんわ!!」」」

多数の高位貴族の令嬢達が騒ぎ出したのだった。



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