第41話 叔母上の本性(アレクサンダー視点)

私の母上は、私と兄が幼い頃に病死していた。

けれど、寂しい幼少期ではなかった。母の妹の叔母が、度々屋敷に来てくれ世話をしてくれたからだ。


叔母は、とても優しかった。私と兄の誕生日には、必ずケーキを焼いてくれ、いつも私達を気に懸けてくれていた。一緒に、歌をうたい、楽しく遊んだ幼い頃の思い出は今でも色あせることはなかった。


私は、父上からは兄よりも厳しく育てられた。

「爵位も財産もお前のものにはならない。だから、一人でも生きていけるようにしっかりと目を開けて、耳をすませて、両足を踏ん張って生きるのだ」

それが、父上の口癖だった。


私は、白魔法が使えるとわかると、寄宿制の白魔法学園に入った。

そこでは、選抜クラスに属し、寝る間も惜しんで勉強したものだ。

その時でさえ、叔母は学園に定期的に訪れて私を励ましてくれていたのだ。

叔母は私にとっては大事な家族だった。


私は、学園を卒業すると、諸国を旅し続けて、白魔法の腕を磨いていった。

決して、楽な道だったわけではない。白魔道師は正体を明かしてはいけない。

多数の名前を持ち、爵位を持つが、誰にも加担せずどの国にも所属しないのだ。

自分の力だけを信じて孤独に生きる生活が続いた。

女性には昔からモテたが、興味もあまりなかった。華やかに着飾り、浪費癖のある高位貴族の女性達を見過ぎたせいで、女性に対する嫌悪感もあったのかもしれない。


そんな時に、オリビアに会った。彼女は、優しく気高い心の持ち主だった。

私が、その髪飾りひとつで馬車が10は買えるそれをプレゼントすると、彼女は断ったのだ。

「これは、アレクサンダー様がとても愛おしいと思う女性に差し上げてくださいね。

その女性の性格も人柄もわかったうえで、大好きだと思える女性に」と言ってきた!!

こんな女性が、この世にいるなんて思わなかった。とても聡明な素敵な女性だと確信したのだ。


そして、今、私は王宮でオリビアを毒殺しようとした男を殺そうとしている。この男は私の叔母を愚弄したうえに、あらぬ言いがかりを私につけてきた。許すわけにはいかない!!

自分のもてる限りの力で応戦していると、オリビアの声が耳に響いた。


目覚めたオリビアは、毒の影響がまだあるのかもしれない。

少しよろけそうになっているのをエマが支えていた。

すぐに戦うのをやめて、オリビアのほうへ駆け寄ろうとしたがオーウェン王子の方が早かった。

大事なものを離すまいとオリビアを抱きかかえる様子に腹が立つ。


「オリビア!!そいつから離れるんだ!!そいつは危険だ」

私は、叫んだがオリビアは弱々しく微笑んだだけだった。





翌日、王と王妃、関係者の全てが集まり、裁判が開かれた。

叔母とアイザック王子は、ゾーイが調合した自白剤を飲まされた。


「あっははははぁーーー。私はねぇ、側妃になんかなりたくなかった。好きな男性が他にいたのよ。そう、私はお姉様の旦那様を愛していたわ。だから、アレクサンダー達を自分の子供のように可愛がった。お姉様は病死じゃないわ。私が毒を盛ったのよ。お姉様の代わりに私がイザリヤ公爵夫人になるはずだったんだ!!なのに、王に気に入られて望んでもいないのに側妃になったわ。そして、子供ができた。私は好きな男性を諦めてまで子供を産んでやったのに、私の子供は王にはなれないのよ?なぜよ?第一王子がいるからよ!!王妃の子供だからって、ちょっと先に生まれたからって、ずるいじゃない?おかしいじゃない?私の人生をとりあげたくせに、私が次期王の母親になれないなんて許せないわよ!!王太后になるのは私よ。だから、オーウェン王子の周りの者を殺してやったわ。オーウェン王子が大切に思うものは全ていなくなればいいのよ!!」


自白剤を飲まされた叔母の言葉は、どこまでも残酷で私を地獄の底に突き落としたのだった。


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