第19話 オリビアから別れを告げられたハミルトン

私は、3人の侍女の殺気だった気配を感じながらベンジャミン家の応接室で、優雅にお茶をいれてくれるオリビアに見とれていた。


オリビアの横には、ベンジャミン男爵夫人が冷たい面持ちで座っている。


「お話はわかりました。全ては”魅了の魔法”のせいだったということですね?

けれど、ハミルトン様。私は、もうパリノ家に戻ることはありません。結婚する前から貴方に憧れていた私の心は跡形も無く砕け散ってしまったのです。もう、貴方のお顔を見るのも辛いのです」


けっして、責めるわけでもなく、淡々と自分の心情を穏やかに語るオリビアは悲しいほど美しかった。

艶やかな金髪は、陽に照らされなくても光を含んでいるかのように輝いている。

澄んだエメラルドグリーンの瞳は、誠実な優しい人柄を映し出す。


なんてことだ!彼女が私に憧れていたとは・・・

泣きたくなる気持ちを、グッと我慢して、席をたった。


「援助していただいたお金は全て返済したいと思っています。公爵の爵位は売ります。私はその器ではなかった・・・・オリビア、悲しい思いをたくさんさせたね。本当にすまない。

私は、魔法にさえかかっていなければ、貴女に誠心誠意、尽くして全力の愛を注いだはずだ」


その言葉にオリビアの瞳から一粒の涙がこぼれた。

オリビアが柔らかな声で紡いだ言葉は・・・


「ハミルトン様、さようなら」



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