第20話 なんとかしなくっちゃ(クロエ視点)
私は、ハミルトン様の屋敷で彼から剣を向けられた。
魅了の魔法が、勝手に解けるなんてあり得ないのに・・・
とにかく、このままだと、まずいわ・・・
私は、急いでランドン公爵家に戻った。
「お、お兄様、不味いわ!ハミルトン様にかけた魅了の魔法が解けてしまっているわ。ど、どうしよう?私達の計画が台無しだわ」
私は、動揺しまくって、すっかりどもっていた。
「え?私達の計画?私は、なにもやってはいない。クロエ、お前だけが禁忌の魔法を犯したのだろう?」
「え?お兄様だって賛成してくださいましたよね?」
「あぁ、したかもしれないし、しなかったかもしれないな・・・とにかく、ハミルトンにバレたなら時間の問題だ。魔女裁判にかけられるかもしれない。判決もひとつしかない。極刑だろうな。早く逃げるんだな。私は関係ない」
「え?お兄様、なんて汚い人なの!!」
そこへ、お父様がやって来たわ。
「どういうことなんだ!!この帳簿は!!領地を管理するのに使うはずのお金がなぜお前達が勝手に使えることになっている?使途不明金が多すぎるのはなぜだ?」
私は、お父様の瞳をじっと見た。魅了の魔法が解けている・・・なぜなの?
「「お、お父様!これには、深いわけが・・・」」
「お前たちは勘当だ!こんなに長い間、私を欺すとは・・・」
「違います。誤解ですわ!お父様」
「ん?お前は、クロエか?違うだろう?私の娘はもっと愛らしい風貌だったはずだ」
(※アレクサンダーが王宮に呼ばれた儀式には、ちょうどこの父親も参加していました。言動がおかしかったので、アレクサンダーが魔法を解いたようです。)
(※魅了の魔法の怖いところは、術者を可愛く美しく見えるように作用しますので、かかっている時に相手に見えている姿と解けた時の姿がかなり違ってしまいます。)
私とお兄様は屋敷を追い出された。
「お兄様のせいですわ!!お兄様が魅了の魔法を使えば楽しく生きられるって・・・」
「いや、お前がヘマをしたからだろう?麗しい公爵ではなく、もっと小者を狙えば良かったのだ。あぁ、お前、アンドリューにも魅了の魔法をかけていたよなぁ?ひとまず、そこにかくまってもらおう」
私達は、アンドリュー・プレイデン侯爵の屋敷に向かったのだった。
「やぁ、僕の可愛いクロエ。ようこそ、いきなり来てびっくりしたよ」
魅了の魔法にかけられているアンドリューは、私の言いなりだった。
☆
私は、プレイデン家で一番、豪華な部屋に通してもらった。
プレイデン家の侍女に手伝ってもらいながら入浴をしたわ。
ランドン家からここまで歩いて一時間もかかったのよ?
こんなに歩いたことなんてなかったから、くたくたよ。
「痛い!!ちょっと、なにやってるのよ?髪の毛も、まともに洗えないの?」
私は、侍女の横っ面を張り飛ばした。
だって、私は疲れているのよ?
「あぁ、ついでに足も揉んでちょうだい。下手くそねぇーー!」
☆
私は、少しも悪くない。ちょっと、人よりいい思いがしたかっただけじゃない?
悔しくて、悲しくてたまらないわ。
生まれながらに美しくて、努力もしないでみんなから好かれるオリビアが憎いわ。
オリビアがパリノ公爵夫人になってからの社交界での評判はすこぶる良かった。
パリノ公爵夫人には、もともと私がなるはずがったのに(破産寸前でなかったならば)
美しいからでしょ?
綺麗だからみんなにちやほやされて、ずるいわ!!
こうなると、私はだれもかれもが、妬ましくて憎くてたまらない気持ちになっていた。
私は、アンドリューが用意してくれた高価なドレスを着ると早速、胸のあたりを少しだけ引き下げた。白い豊かな胸の谷間がよく見えるようにね。
「アンドリュー。お願いがあるのよ。私ね、オリビア・ベンジャミン男爵令嬢に馬鹿にされたの。酷い侮辱を受けたのよ。なんとかしてくださる?た・と・え・ば・少しケガをさせるとか・・・・」
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