第12話 みぞおちにエマの拳(オリビア視点)
「なにをする?貴女は私の妻だろう?夫に従うのは妻の務めだ。これから、貴女の侍女達を鞭で打つ。私が自らな。誰か、鞭を持ってこい。この侍女達を鞭で打った後は奴隷に売り飛ばす!」
ハミルトン様は、激高しながら顔を醜く歪ませている。
この男は、まだこんなことを言うのね・・・
こんな男性が私の夫だとは!私はなぜ、この方が素敵と思っていたのだろう。
メッキのように薄っぺらい男の美貌は偽物だ。中身が、あまりにも伴わなすぎる・・・
私が愛してあげる価値などない・・・
「そうですか?ならば、ハミルトン様。貴方は私の夫であったことは一度もありません。今までも、そして、これからもね。この婚姻は”白い結婚”で無効化させます。
私の侍女に鞭を打つ?エマ達を、これ以上怒らせない方がいいと思いますわ」
「なんだと?無効化?平民出身のたかが男爵家が!卑しい血筋のくせに大富豪だからといって偉そうに・・・お金しかないくせに!」
あぁ、まずいわ。こんなことを言い続けたら、もうエマの我慢は限界を超えてしまうわ。
「その卑しい者のお金で、あなたは生活できているのですよ?」
エマは、ハミルトン様のみぞおちを、渾身の力を込めて拳の人差し指の付け根で正確に突いた。
ハミルトン様は、あっけなく前のめりに倒れてしまった。
だから、怒らせちゃダメだって、言ったのに・・・
「この屑は外に放り出しておきたいところですが、とりあえず屑の寝室に転がしておきましょう」
公爵家の使用人達も、いつのまにか私の寝室の前に勢揃いしていたけれど、誰もハミルトン様を助ける者はいなかった。
お父様が私の専属侍女につけてくれたのはただの侍女ではない。
大富豪のベンジャミン家の一人娘の私は常に誘拐される危険があった。
エマ達3人の侍女は、私の護衛も兼ねていたのだ。
☆
私は、明日この屋敷を出て行こう。
ここは、私のいる場所ではない・・・もっと愛してくれる男性がいるはずだから・・・
私は愛されて大事に扱われる価値が絶対にあるはずだから・・・
ゆっくりと瞼を閉じる。
もういい加減、過去から解き放たれよう。
甘い恋心は砕け散ったけれど、あの恋は幻だったのよ。
私は、明日から新しい人生を歩むわ。
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