第4話 身勝手なクロエ(クロエ視点)
私の婚約者のハミルトン・パリノ侯爵様は藤色の髪と瞳をもつ絶世の美男子だ。
私は、亜麻色の髪といえば聞こえがいいが、薄い茶色の色あせたような印象を与える髪と瞳なのだ。
顔立ちも、美人というには無理があるかもしれない。でも、そこは雰囲気でごまかせるわよね?
それに、私には秘密がある。私は魅了の魔法が使えるのだ。その力は弱いので、たくさんの人数にはかけられない。2人か3人の人間にだけかけられる、秘密の魅了の魔法だった。
私はこの婚約者に会ったその日に、魅了の魔法をかけた。ハミルトン様の瞳にはとても綺麗な私が見えているはず。私が何をしても彼には愛らしく好ましく映るはずなのだ。おかげで、彼はすっかり私に夢中になってくれた。あんな麗しい男性が私の言いなりになることに、有頂天になっていた。
彼とお出かけすると、一斉に女性が振り返って私を羨望の眼差しで見たわ。
なんて、気分がいいの!けれど、つい調子に乗りすぎた。
一緒に遊び回りすぎて、彼に執務室にいる時間を与えなかった。
でも、破産になるなんて思ってもみなかったわ。
(ハミルトン様の管理が怠慢だっただけだわ。私のせいじゃぁないわ。かわいそうだけれど、破産して平民になる男性なんかと結婚はできない。でも、あれだけの美貌の男性は近くには置いておきたい。他の女のものにはさせないわ)
私は、ハミルトン様に婚約破棄の証書を送り付けたその日の夕方、彼に魅了の魔法の別バージョンもかけておいた。
「貴方を永遠に愛しますわ」
と言いながら心のなかでは別な言葉をつぶやく。
(どんな美女も”冴えない、地味な魅力のない女性“に見えますように。この私、クロエが一番可愛く見えればいいのよ)
これで、ハミルトン様の心は魅了の魔法を私が解かないかぎりは私のもとにある。
うふふ。
さて、これから、高位貴族の中からまた婚約者を探さなければならないわ。はっきり言って、高位貴族の中には、綺麗な男は少ない。ハミルトン様は優良物件だったのにぃ、破産だなんて・・・バカみたい
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