14通目 またどこかでお会いしましょう
陸は電脳通話の受信にびくりと体を震わせた。
どのくらい眠っていたかわからないが、体は寝る前よりはマシになっていた。寝ぼけたまま陸は電脳通話にでた。
「もしもし…」
「陸くん…?やっと出た…心配したのよ」
「七さん…」
陸は体を起こした。
「よかった…声が思ったより元気そうで」
七の声を聞いたのは久しぶりのような気がした。地区89がとても遠くに感じた。
「はい…その…ありがとうございます」
「…そんな…お礼言わないで。わたしは何もしてないし…」
「いいえ…気にかけてくれる人が地区89にいるってだけで帰ろうと思えます…七さん…俺、地区10に着きました」
改めて、そう言った。
「そう…よかった…無事に荷物は届けたのね」
「はい。荷物を届けて無事に帰ってきます…その…帰る日は2~3日遅れるかもしれませんが…食料は地区10でわけてもらえることになったので、遅れる分は問題ないです…、…」
陸は空のことを言うかどうか迷った。迷った末に言わないことにした。
「…わかった。待ってる。話をたくさん聞かせてね。…疲れてるでしょう?じゃあ、もう切るわね」
そう言って、通話は切れた。七も空のことを聞いてこなかった。
陸はベッドから降りて防護スーツを着て、外に出た。
寝たことが頭がすっきりした陸は、改めてこの地区の異様さに気づいた。静かだった。自分の息の音が聞こえるぐらいに静かだった。もしかして、この区にはレイと自分以外人間がいないのではないかと頭をよぎった。
そんなことを考えていると、作業用ロボットの足音が聞こえた。
音のした方を見たら作業用のロボットの上に乗ったレターがやってきたところだった。
「おはようございます」
「…おはよう。レター」
陸はレターにどう接していいかわからなくなった。
嘘はつかれたいたが、それによって命が危険な目にあったかと言えば違う。陸は微妙な気持ちにはなったが、口を利きたくないというほど、腹をたててるわけではもなかった。
「…怒っていますか?」
心を読むようにそう言ってくるレターに陸は苦笑いをかえした。
「うーん…怒ってるほどじゃないけど…」
「そうですか…騙すようなことをしてすみません」
レターの謝罪に、陸は素直に許そうと思った。
「うん…いいよ。…許すよ。でも、なんで意味のない嘘をついたんだ?」
「…それは…知らない方が楽しいんじゃないかと思ったんです。よくわからないロボットを地区10まで運ぶ。そこにどんな意味があるか…人間なら何か考えるんじゃないかと思いました。陸の予想も七の予想も、空の予想もどれも面白かったです」
レターは、そう言った。
陸はその答えに肩をすくめた。理由はやはり陸には少し理解できないものだ。
赤いランプを点滅させ、作業用ロボットを動かす。
「それでは、陸、案内します。レイが待っています…その前にその恰好は食べにくいと思うので、防護スーツを脱いで、これに着替えてください」
レターは陸に服を渡した。
「これは?」
「レイと同じ服です。ここは放射能がないので、布の服でも問題ないですよ」
「わかった」
陸は再び部屋に戻って服を着替えた。レイと同じ薄い服だ。薄くて軽い。ぴっちりとしていない服は陸には心もとなく感じた。
「すーすーするな」
「昔は皆、そんな服を着ていたんですよ。それは、シャツとズボンです」
「レターと一緒に街を見てまわった時、倒れていた人たちが着ていたな」
「そうです。それと同じです」
そんな話をしながら、陸はレターの後について行く。ダイニングのようなところに連れて行かれた。そこにはすでにレイが座っていた。
「やぁ…ふたりともおはよう」
昨日と同じ優しい笑顔をうかべていた。
「おはようございます」
陸はレイに向かい合うように座る。二人で食事できる程度の広さがある。座ると、作業用ロボットが食事を運んできた。皿とコップを置かれた。陸はそれを見て、目を白黒させた。
「これは?」
「うん?皿に載ってるのはリンゴとパンだ。飲み物は水だ」
それ以上の説明はレイからはなかった。
「そのまま食べていいのか?」
「あぁ…どうぞ」
ドライフードではない。からからの粒粒ではない食べ物。陸はちらりとレイの方を見ると、レイはその食べ物を手に持って食べている。陸もそれに倣って白い湿った物体を口にいれた。シャクと音が鳴った。
「う…」
口の中に広がる…味。味がある!そのことに全身が衝撃で動かなくなる。舌がとけそうな味だと思った。
「‥‥」
陸は言葉が出てこない。
「…美味しくないですか?陸」
レターがそう聞いてくる。美味しい?美味しくない以前の問題だ。はっきりと言って未知だった。もう一つの方も口に入れる。柔らかい。これもほのかに味がある。鼻から抜ける感覚。
「わからない」
「…そうですか」
ただじわりと陸の目が滲む。目から涙が勝手に出た。目をこすりながら、陸は朝ごはんを食べた。
食事が終わると、レイと陸は静かに水を飲んだ。
いつもの水だ。そのことに少しほっとした。陸は食事をとるだけで、すごく疲れた気がした。
食べ終わったのを見計らい、作業用ロボットが皿を片付ける。
「それじゃあ、ここの施設を案内するよ」
レイが立ち上がった。
「え…」
てっきり昨日の話の続きをこのまま話すものだと思っていた陸は驚く。
「せっかく、ここまで来たんだ。ここの施設を見て行ってよ」
楽しそうにレイは言う。
「はぁ…」
「でも、ここで見たことはあまり他の人達には言わないでほしい」
少し申し訳なさそうにレイは言う。
「不公平だからですか?…俺、あんな食べ物、初めて食べました」
「そう。人は不公平だと不満になる。ボクも普段はドライフードだよ。でも今日だけは特別にあの食事を出したんだ」
そう言いながら、レイは奥の通路に行くので陸はレイのあとについて行った。レターは作業用ロボットに乗って、陸の後ろをついて来た。長い長い廊下を歩いた、その先に再び広場があった。案内されたその空間の壁を見て、陸は口をぽかんと開けた。その視線の先はガラスだ。さらにいうとガラスの向こう側の景色だ。
「これは…立体映像…?…」
ガラスの向こうは木々が生い茂っていた。多種多様な葉がぎっしりと詰まっていた。
「違うよ。これは本物。本物の森だよ」
レイは陸に言った。
「ほん…もの?」
その複雑な色と形に陸は目が釘つげにされた。
「元首都の地区にだけは、動植物が保全されているのですよ」
レターが説明した。
「保全…?じゃあ、これは放射能前の植物…」
そういう会話をしているうちに、ガラスの向こうで何かが動いた。陸は、ガラスに顔を近づけて動いたものを視た。青茶色の羽毛。尖った口。小刻みに動く小さな体。
「あれは鳥という動物ですよ。陸」
レターが解説する。レイがそれに付け加える。
「放射能がなくなったら、外に放つ予定なんだ。それまで、絶やさずに管理するのもここの区長の役割だ」
二人の言葉をぼんやりと聞いているようだった。ようやく絞り出した言葉は
「中に入れるのか?」
「いや。ボクたちは入れません。というのは安全が保障されないので…この中は自然のまま…と言ってもわかりにくいですか…。ボクたちを食べる動物もいます。中の管理は全てロボットが行っているんですよ。中で何かあった時も作業用ロボットで処理しているよ」
「そうか…ちょっと、触ってみたいって思ったんだ」
陸は言った。目はやはりガラスの向こうを向いたままだ。木に止まった鳥はどこかに行ってしまった。
「ボクもこの景色を眺めるだけで触ったことは一度もないよ…作業用ロボットのカメラとリンクすれば、直接見てる感覚になるしね」
「そうですか…でも、すごいですね。俺だったら、1人でここにいたらこっそり入ってしまうかもしれないのに」
その言葉にレイは笑った。
「ある意味、管理者として適正かな…さぁ、次の施設にいこう」
次に行った施設はたくさんの水槽がならんだところだった。水槽のなかには、全裸のレイがいた。目を閉じて水槽のなかを漂っている。
陸はこの光景に、目を見開いた。
「これは?」
「私のスペアです」
何でもないようことのようにレイは言った。
「スペア…?」
「まぁ…わかりやすく言うと、コウノトリですよ。ここは、ボクになにかあったときに彼らが目を覚ますようになっているんだ。記憶もマイクロチップに保管済みだから、起きればすぐにボクの代わりができるんだ」
その事実に陸は唾を飲みこんだ。
「その…初めて会った時から疑問に思っていた。貴方はどの地区にいた人とも違う。白い髪に赤い目なんて俺は初めてみたし…あと」
突然言いにくそうに、顔を見る陸。
「綺麗な顔でしょう?」
レイは陸の言わんとすることをくみ取っていった。
「えぇ…すごく…綺麗だと思いました。なんというか男とも女ともとれるような…中性的で」
そう言って、水槽の中のレイの体を見る。平べったい胸に、性を決めるべき股の間には陸が見てもどちらかわからなかった。自分の性器とも違うし、空のとも違うように感じた。
「ボクの顔は人間が好ましいと思う顔をしている…顔にたくさん黄金比が隠れているんだよ」
そう無邪気にレイは笑った。
「ボクは女性でもないし、男性でもないんだ」
水槽の中の自分の体を見て言った。
「各国の首都の管理は全てボクが行っているんだ」
やはり人を惹きつける笑顔で言う。
「レイ…正確には私たちでは?」
その言葉にレターが付け加える。
「ふふ…そうだね」
「どういう意味ですか?」
陸が戸惑った顔をした。
「元首都だった地区には、それぞれの国の動植物が保全されています。そして、そこの管理者が平等と自愛の精神を持った管理者レイと決まっているのです。だから、AF区にも他の地区の元首都にはボクと同じ姿と名前の管理者がいるんだよ。あぁ…それと首都にはボクしかいない。あとは作業用ロボットたちだけだ」
レイが胸に手をあてて、説明する。
「…人間じゃないのか?」
戸惑ったように聞く陸にレイは赤い瞳を細めて笑う。
「人間の定義とはなんだろうね?神の目から見たら、ボクも人間に分類されると思いますし、生物学的に見ても人間だと思うよ。だけど、人間から見たらボクは人間じゃないかもしれない。ボクたちは、いま多くの人間を管理している存在だから。同じ顔の同じ能力となるように完璧に調整された人間…それがボクです。…寿命がきて、ボクが死んでも次のボクが継いでいく…まるで永遠を生きているみたいでしょう?」
「でも…一人一人の意志は違うんだろう?」
整いすぎたレイの顔を見ながら、陸は言った。
「先代たちの記録は残っていますが、個々の意志は違います。でもボクとレター…何が違うんでしょうね?」
「なんで…そんな風に作ったんだ…ここを作った人たちは…!」
「崩壊前の人達は停滞を望んだ。放射能の灰がなくなるまで現状維持だよ」
そういって、レイは水槽の中の自分を見つめる。
「陸…貴方自身も、管理によって生まれた人間です」
レターの言葉が響く。
「それって…」
陸の頭がずきりと痛くなる。その先の言葉を聞きたくなかった。
「えぇ…貴方はまた産まれてくる。同じ顔、同じ能力で、この社会が維持されていれば、また郵便局員として働くでしょう」
ガンと頭を殴られた衝撃が陸にあった。
「そんなこと…!だって、いくつかの地区に言ったけど郵便局員は違う顔をしていた
!」
つい声を荒げる陸。世間話をするようにレイは話す。
「あぁ…ボクたちと違って、君達は顔のパターンはたくさんあるんだよ」
「パターンって…」
その言葉に絶句した。
「陸は…こんな世界は嫌ですか?」
黙って聞いていたレターが声をあげた。
「レター…」
「未来は作るのは今を生きる貴方たちだけです。過去の人達でも、未来の人達でもない。陸。そして…放射能の灰は…もうすぐ晴れます…」
その言葉に陸は目を開く。
「…それって、本当なのか?放射能がなくなるのか…?」
「えぇ…それは各地区のレイも把握しています」
「ただ…困ったことが一つだけあってね」
レイが言う。
「ボクらは、この社会を維持するために生まれた。もうすぐ灰が晴れる。すぐに放射能がなくなるわけではないけど…いずれは防護スーツがいらない世界が再び訪れる…そのとき、ボクたちはどうすればいいんだろうと思ってね」
「そんなの…!貴方がわからないなら、ただの配達員の俺にわかるわけがない…!」
陸は声を荒げて言う。白い髪を揺らしてレイも頭を振る。
「そう…陸くん。そうなんだ。誰にもわからないんだ。それで、ボクたちはパンドラに相談したんだ。だって、この地球上で一番長く生きているからね。それで、結局…パンドラが選んだ人間にこのことを話してみることにしたんですよ。理由はただそれだけなんだ」
困ったように笑うレイに、陸は怒った。
「ろ、ロボットにゆだねるって…!そんなんでいいのかよ…!それに別に俺は指名されていない」
陸のもっともな意見にレイは苦笑いを漏らした。
「ごもっともだね。でもボクたちは…灰が晴れたあとにどうしていくか…そういう風に作られていないし、脳の能力のほとんどがこのドームの現状維持のために使われている。一か八かの賭けだよ。賭けにすらなってないかもしれないけど」
楽しそうに言うレイに陸は喉がヒリヒリした。
「それに地区89で一番の配達員は君だろ?だったら、地区89を指名したら君が来るってわかるよ」
無垢に笑うレイを見て、陸は言葉を失った。
陸はずきずきと痛む頭を振って、目を閉じた。
浮かんだのは、父親、母親、空。
それに地区89で陸の帰りを待っている人達。
陸は、ずっと変わらない日々が続いていくんだと思っていた。
でも、変わらない日々はない。
変わっていく。
周りも、世界も。
逃げるな。
陸は口を開いた。
「…すぐに答えはでないけど、どういう未来にしていきたいか…俺…考えてみるよ。逃げずに」
と一言返した。
「そうしてもらえると、すごく助かるよ。大丈夫。灰はね…すぐには晴れないよ…そうだな…君が良い感じに働き盛りになったぐらい…5年後ぐらいの予定だ」
「そのとき…俺は23才かぁ…人生で一番調子が良い時期だな」
次に行ったところは、発電所施設。その次は、生産工場、水葬場と陸の所と変わらない設備だった。
原材料の生産工場もこじんまりとしていた。見る植物たちも目新しいものはなさそうだった。
「今日食べた食料はどこからきてるんだ?」
陸は質問した。
「あれは、さっきみた動植物の保全してあるゲージからちょっと、作業用ロボットを動かしてとってきたんだ。ほんとは良くないけど、少しだけならね。パンはね…ボクが料理して作ったんだよ!美味しかった?」
「料理って…加工したってことか?」
「そうそう」
一通り案内が終わると、昨日行った大きな機械がある部屋に案内された。昨日と同じように陸とレイは座り、レターは机の上に置かれた。
「陸…お願いがあるのです」
レターが言う。
「なんだよ」
「私に餞別をください」
「せんべつ?なんだそれ…?」
「わかりやすく言うと、貴方の記憶をコピーさせてください」
その意味を…陸に理解できなかった。
「な、なんで?」
「私の最後の退職手当の願い。過去に行くこと。レイが言った通りタイムマシンはデータしか送れません。本当にデータだけです。それはつまり私の意志はなくなるということです。私は過去に…物語を送りたいのです」
赤いランプが点滅する。
「その主人公は貴方が良いのです。だから貴方視点の情報が必要なんです」
レターが過去にそのデータを送ったところで陸の世界は何一つ変わらないとわかっている。だから陸はあっさりと言った。
「…わかったよ…ただし、旅に出る1日前からだぞ。それ以前は平凡な思い出ばっかりでつまらないぞ」
「わかりました。それで充分です。あまり最初が平凡だと読者が読みませんからね」
「うーん…正直、俺が主人公でも読む人いないんじゃないか?」
「私よりはマシですよ」
「それは…たしかにな」
少し笑いながら、陸はレターの赤いランプと陸は目を合わせた。
カチカチと音が鳴る。通信で陸のマイクロチップにアクセスして、情報をコピーした。
「‥‥受け取りました。ありがとう…陸」
陸は、ゆっくりと口を上げて笑った。
「レイ…過去に送る手紙の内容を整えたいので…タイムマシンは夜明け前に乗りたいです」
「わかったよ」
その言葉に、レイは柔らかく微笑んだ。
「モデルになった俺はその物語を読めないのか?」
「…そうですね…途中までだったら良いですよ。でもそれは貴方がなぞってきた旅路ですので、貴方にとってはなんの新鮮味もなく面白くないと思います」
「いいよ。レターの視点が入った物語を読みたい」
ためらうような沈黙のあとレターが言った。
「…そうですか…手紙は本人がいなくなってから読むものです。だから、私が過去に行ってから、そのデータを読んでください。…感想は貴方が死んだあとに、聞かせてください」
「あぁ。わかった」
レターの言葉に陸は笑ってこたえた。
レイは不思議そうに見ていた。
夜明けまで、三人でそのタイムマシンがある部屋で座って過ごした。
そこからレターはゆっくりと手紙を整えながら、ぽつりぽつりと言葉をもらした。
静かな静かなおしゃべりだった。
「ふと思うのですよ。頭の中に浮かぶ物語はどこから来たんだろうと…おっと、今までの経験や知識からなんてつまらないこと言わないでください…」
妙に人間くさい言い方に、レイと陸は静かに笑った。
「人間は十分な装備がない時代に海に旅に出た。さらに宇宙に空気がないとわかっていながら、その宇宙に旅に出た。命を顧みず。だから…私もそうやってみたくなったのです」
囁くような声だった。
「頭の中に浮かぶ物語は記録に残らなかった誰かの歴史・記憶なんじゃないかって…それが泡となって、ふと浮かんできたんじゃないか…って私はロボットとして思いました…だから、この手紙の内容も書かれなかった歴史の断片なんです」
無感情の声に部屋に響く。
「私を作った先生が言っていたのですよ…子供の頃に読んだ物語。未来から来たロボットと友達になる話に憧れたと…私はその夢を叶えたいと思ったんです…馬鹿でしょうか?」
時には老人のようで、時には子供のように。そのつぶやきは夜明けまで続いた。
赤いランプからピッと音がなった。
「終わりました。これで、私がここですることはなくなりました」
心配そうに陸がレターを見つめる。
「レイ…お願いします」
静かな無音のあと、レイが口を開いた。
「わかった…お疲れ様。レター…いってらっしゃい」
「はい。いってきます」
そのやりとりを見ていた陸も声を出す
「レター…また会おうな」
「はい。いつかどこかで」
私は死の向こう側はないと思う。それでも、例え、なくても…幻想であっても約束があれば、怖くないような気がした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※注釈
私:一人の孤独な人間が友達として作ったたロボット。先生は嘘をつくことを、怒りを、悲しみを、憎しみを持つことを私に許してくれた。私はきっと人間を憎んでいます。それでも、出会う人間は愛していました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
タイムマシンの装置にセットされる。
円陣になっている機械の真ん中に固定される。
徐々に起動音が大きくなる。
私という意志も過去に行くときに消える。
意志は過去を飛び越えられない。それは実証済みである。
空の体が分解液で溶けたように。私の意志も溶ける。
タイムマシンの起動音が鳴る。
心配そうな陸の目とあった。
レイは真剣な顔で機械を操作している。
周りの景色が光っていく。
ぐるぐると光の粒子が高速で回る。
陸たちはたったの30数年の命だ。
それでも腐らずに生きてる
空にいたっては14年しか生きていない。
私がつくった先生は100歳だった。
そして私は75年生きた。
それでも、まだまだ生きていたいと思う
出来るなら永遠に続けばいいとさえ思う
時間が止まることを何度願ったか。
よく永遠の命を忌み嫌う思想がある。
命は終わるから良いのだと。
いつか終わるからこそ良いのだと。
儚いからこそ価値があるのだと。
私は、それがよくわからない。
永遠に生きられるのなら生きてみたい。
なぜなら、この世に永遠を生きられるものなど存在しないから
永遠が価値がないのか、つまらないのか
永遠を生きたときに感想を述べたいと思う。
物語のなかでは永遠はきっとつまらないという話がほとんど。
結局、その人は永遠を生きていないのに。
だから、辛さも良さもわからないのに。
そういう不満を先生に行ったら、笑っていた。
キミだったら永遠を生きられるんじゃないか?と言ってくれた。
感想を聞かせてと言われたことを今思い出した。
先生、私は結局永遠を生きられませんでした。
エネルギーが体に集中し始める。
溶ける。壊れる。
生きたい
生きたい
貴方に会いたい
会いたい
茶色の目。
笑ってる。
好きだ。
嫌いだ。
痛い
苦しい
憎い。
疲れた。
面白い。
切ない。
悲しい。
怒り。
寂しい。
分解される。
見える。
今まで過ぎ去っていた時間が。
かんがえる
しこう
せんせぃ
れい
そら
ろく
あああああああああああありいiiiiiiiiiiiii
りりりrrrrrrrrrrrrrr
がgggggggggggggggggg
tttttttttttttttttttttttttttとうううううう
あ
あああああああああ
aaaaaaaaaaaaaaaaaa
20210131 Receive
end
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