25. 馬鹿二人
本部の方に近付くにつれて、騎士が多く見られるようになっていた。
誰もが忙しそうに駆け回る中、見知った顔が視線の端に映る。
「ジャスパーさん!」
「──ん? なんだお前ら、どうして来た」
ジャスパーはそれぞれの騎士に指示を出し、他と同様に忙しそうにしていた。
各所は包帯で巻かれ、まだ試験の時の傷は完治していない。微かに血も滲んでいる。それでも第二師団の団長として動かなければならない。彼をこのような状態にしたのは他でもない俺なので、申し訳ない気持ちになる。
「まだ騎士じゃないお前らを戦闘には出せない。早く地下に逃げろ」
「ジャスパー団長。どうか私達も戦闘に参加させてください。必ずお力になります」
「お前らじゃ足手纏いになるって言ってんだよ。正直、今回ばかりは本気でやべぇ。外に出れば、新人のお前らじゃ絶対に死ぬぞ」
「覚悟の上です」
何度も払われながら、それでもリーゼロッテは引かない。
「……おいアッシュ。お前の方からも言ってやれ」
「彼女のことは俺が守ります。お願いします」
「うっわ、こっちもかよ……一緒に来た時点でそうだろうとは思ったけどよぉー」
はぁ、とジャスパーは溜め息を一つ。
「いいか? 灰人との戦いは遊びじゃねぇんだ。どんな歴戦の騎士でも死ぬ時はある。灰人が多ければ多いほど危険も比例して大きくなるんだ。そんな場所にお前らみたいな新人が出ればどうなるか……馬鹿でもわかるだろ?」
「はい、覚悟の上です」
「彼女に同じく」
「…………騎士団の未来が不安だよ、俺は」
気持ちはわかるが、もう本部に来てしまったのだ。
今更戻ることなんて出来ないし、一度リーゼロッテを守ると約束した。
「わかったわかった。だが、お前らは二人で行動しろ。それが条件だ」
「「はい! ありがとうございます!」」
「若いもんは本当に元気がよろしいようで……ったく、こっち来いガキども」
手招きされ、俺達は彼の後を追う。
『第二師団』と書かれた建物の中に入って奥に進むと、何人かの騎士がテーブルを囲んでいる場所に辿り着いた。
騎士達はジャスパーに気づき、それまで顔に浮かべていた難しい表情を僅かに緩ませる。だが、すぐにその後ろにいる俺達を見て疑問の声を上げた。
「団長、その二人は?」
「馬鹿二人、追加だ」
「なるほど」
それで納得しないでほしい……というのが素直な感想だが、実際その通りなので文句は言えない。
不本意な紹介に眉を寄せていたリーゼロッテは、代わりに俺の二の腕を摘んできた。…………なぜだ。
「赤いのがリーゼロッテ。白いのがアッシュだ。実力はそれなりにあると評価している。まだ正式加入しているわけじゃないが、今回一緒に戦う仲間だ」
「アッシュ……ああ、試験で団長を倒したって言う、あの……?」
「見たことあると思っていたら、こいつがアッシュか! んで、こっちの嬢ちゃんは、フレアガルドの嬢ちゃんだな。赤い髪だからすぐにわかったぜ」
「フレアガルドのご令嬢と団長を倒した新人。実力は申し分ないな」
「おう! 頑張れよ、馬鹿ども!」
一気に囲まれ、俺達はたじたじになる。
「驚いたか? 第二師団は強い奴なら大歓迎だ。単純な奴らだが、皆頼りになる。今回はこいつらと共に作戦に戦ってもらうぜ」
第二師団を支える騎士の中でも、選りすぐりの人達だ。
彼らと共に戦えるのなら頼もしい。
「おいテメェら。作戦会議だ。時間がねぇからさっさとやるぞ」
「「「「「おう!」」」」」
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