旧6話:運び屋ギルドの仕組み
スクシを加えて三人と一匹になった一行は、賑やかさを増して山道を降りていった。昼の休憩の後は声を潜めて周囲への警戒を見せた。その様子をスクシは初めて見る。ついさっきまで話していたケイジも慣れた顔つきで耳を澄ませながら歩く。
結果、何事もなく街に着いた。ササキを近くの森林で待たせて、料理店に入った。
夕食どきとあって、他のグループも多く列んでいる。
レタは列を無視してホールスタッフを呼び止め、胸元のドッグタグを取り出し、運び屋ギルドの紋章を見せた。すぐに把握し、静かな個室へと案内する。ケイジとスクシに手で合図をして、連れであると説明する。その後、配膳台の機械にコードを読ませた。
「連れと合わせて三人、アレルギーは全員なし。いいですね」
「ええもちろん。お疲れ様です」
それだけ言葉を交わし、グランドメニューを三人の前に置いた。
「二人とも、好きなのを注文して。ただし、栄養バランスは整えて。特にタンパク質を多めに」
ケイジは、レタの話を聞きながら落ち着いてメニューを読んでいる。
一方のスクシは、話に聞く耳を持たずメニューの写真を見て回った。
「本当に、注文していいのか」
「そう。決めたら教えてね。私がこっちの票に書くから」
「さっきの、何か見せてたあれ、何なんだ」
スクシは身を乗り出す。ケイジが片手を引いて、レタが言葉でなだめる。
「先に注文して。気になるようなら待ってる間に話す」
伝えられた内容と、その後にレタが選んだ料理を注文表に記して、扉の外へ渡した。
「さてスクシ、何から聞きたい?」
「全部だ。何もわからん」
レタは頷いて、スマホの画面を見せた。
「まずはこれが、運び屋ギルドの紋章と二次元コード。活動するときはこれを読み取って記録を残す。今回は、飲食費の大半がギルド持ちになるから、安心していいよ」
スクシは驚いた顔で叫んだ。
「タダで食えるのか!」
「静かに。月ごとに上限が決まってるから、企ては失敗するよ」
スクシとケイジのまだ不思議そうな顔を見て、そうできる理由を付け加えた。
「運び屋は元々が、富裕層が出歩くリスクを肩代わりさせるために成り立たせた。担い手が死んだらやがては自分たちが困るから、衣食に関する補助がある」
ノックの音と共に、ウェイターが入ってきた。
「失礼します。前菜をお持ちしました」
「ありがとうね」
三人の前に取り皿を置き、中心にボウルのサラダを置く。その後は黙ったままですぐに退室した。
「これ、注文しなくても、必ず運んでくるの。バランスを考えない人でも、最低限の肉と野菜をこうして食べられるようにね」
レタはトングを持った。自分の取り皿には少なめにして、その分をスクシの皿に盛りつけた。
スクシの困惑顔に微笑みかける。
「きみ、食べてないでしょ。朝からの歩く様子を見てればわかる。たくさん食べなさい」
スクシは目を強く閉じて、息を大きく吸う。礼の言葉は短くジェスチャー重視で伝えて、使い慣れないフォークで食べ始めた。
「明日はやることが増えるよ。今のうちに食べて」
レタは念を押して、早めに食べ終えて、スマホの操作をした。ホテルの手配と、この近くで待つ客への連絡と、経路の検討をする。スクシのおかげで家具店にも連絡ができた。荷物が大型ゆえに法外な金額が提示されていて、見るだけでも笑みが浮かんでくる。
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