第2話
今年はなにもかも制限されている。
突然発生したウィルスの世界的流行のおかげで、世の中は自粛ムードとなり、町中に色とりどりのマスクをした人たちであふれかえっている。店に入り口には消毒液と「マスク着用してください」の文字。
どこもかしこも飲食店わ中心に休業を余儀なくされている。
そんな中で、いままで毎日のように颯太の面会へいっていた私に看護師さんから残酷なことをきかさけた。
「しばらく面会はできません。おひきとりください」
ショックだった。
ウィルスの流行で愛しい人とも会えない。触れることも許されない状況に私は泣きそうになった。それでも、気丈にふるまうのは、三歳になる娘にこれ以上の不安を与えたくなかったのだ。
いつ、パパに逢えるのかと聞く娘。
「悪い病気がどこかへいったら、また会えるわよ」
そんな言葉で娘を説得させてみたが、ウィルス騒動は一行におさまる気配はなかった。毎日のように報道される感染のニュース。それを聞くたびに、もしかしたら颯太に一生会えないのではないかという不安もよぎった。
面会禁止となって、二か月がたった六月。
ようやく面会が許されるようになった。
「お子さんの面会はお控えください。それと、面会は十分以内でお願いします。面会する前にはマスクの着用と検温、問診票への記入をお願いします」
ただ面会するだけ。いままでは面会簿に名前を記入するだけだったというのに、検温したり、問診票に記入したりと面倒なことをしなければならなくなった。それでも、颯太の顔を見れるだけでもよくなったのはよかった。
私はいつものように颯太のいる部屋へいく。
颯太は相変わらず眠りつづけていた。
「久しぶりだね。颯太」
私が颯太の手わ握ろうとすると、看護師さんが「申し訳ありません。患者さんに触れるのもお控えください」といってきた。正直、腹が立った。
でも、看護師さんに怒鳴りつけなかったのは、彼女の人柄をよく知っていたし、この状況だからと理解していたからだ。
それに、看護師さんがなんども謝るものだから、怒り様がない。
私もこの看護師さんのことをそれなりにわかっているのと同時に、看護師さんも私のことをある程度理解していた。
なにせ、この看護師さんは颯太の担当でずっと面倒を見てくれている人だったからだ。年も私と近かった、彼女は子持ちだということでその話で気があった。
制限付きの面会はそれから数か月も続いた。
それでも、私は仕事帰りに華を迎えにいく間の十分、毎日面会へ向かった。
毎日
毎日
眠りつづける颯太の顔をみるだけのために向かっていたのだ。
ふと気づけば、夏が過ぎていた。
もうじき、咲くころだろうか。
私は、颯太にプロポーズされた日のことを思い出していた。
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