惨め
「
「
私とアイコンタクト、できないみたいだし。と、里中に言っていいものかと言葉を止める。
「相田、呼んでんぞ」
「え?」
「由宇、どこにする?どこがいい?」
ひらひらと咲は手を振っていた。
ちょっと焦った様子で、もうすぐうまっちゃうよ、と苦笑いを浮かべながら。
青春とは。
「岡田って、いっつも受け身だよな。クーラー」
興味がなさそうに抑揚のない声で里中は私の腕を指差す。
どきり、と心臓が嫌な感じで動いた。
「鳥肌、すごいけど。言えばいいのに」
「あっ……。いや、えっと……。」
自分の腕を押さえて、俯く。髪が前に垂れてきて里中が見えなくなる。
惨め。とても惨めに思えた。自分が。
温度を下げていいか、風向きを変えてもいいか、そんなことさえ声を上げられない自分が。
そして、気づかれた、そのことが。
里中は、それ以上はもう何も言ってこなかった。
その日、放課後になってクーラーが消されるまで、風向きは変わらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます