惨め



相田あいださんと一緒のにしないの?」


さき、うん、でも、えっと……。」



 私とアイコンタクト、できないみたいだし。と、里中に言っていいものかと言葉を止める。



「相田、呼んでんぞ」


「え?」


「由宇、どこにする?どこがいい?」



 ひらひらと咲は手を振っていた。


ちょっと焦った様子で、もうすぐうまっちゃうよ、と苦笑いを浮かべながら。



 青春とは。




「岡田って、いっつも受け身だよな。クーラー」



 興味がなさそうに抑揚のない声で里中は私の腕を指差す。


どきり、と心臓が嫌な感じで動いた。



「鳥肌、すごいけど。言えばいいのに」



「あっ……。いや、えっと……。」



 自分の腕を押さえて、俯く。髪が前に垂れてきて里中が見えなくなる。



 惨め。とても惨めに思えた。自分が。


温度を下げていいか、風向きを変えてもいいか、そんなことさえ声を上げられない自分が。


 そして、気づかれた、そのことが。



 里中は、それ以上はもう何も言ってこなかった。



その日、放課後になってクーラーが消されるまで、風向きは変わらなかった。

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