過去









久しぶりに親戚が集まる場では、まず年齢を聞かれるのがお決まりで、その後にこう続くのだ。



由宇ゆうちゃん、もう高校生なの、早いねえ。青春真っ盛りねえ』


 それは舞台の台詞のように、大人達が繰り返す台詞だった。



「由宇、次、理科室だって。行こう」



 友達がポニーテールを揺らしながら私の腕を引っ張って微笑む。



 青春、とは——と。私は今生きている私の年齢が青春だと決めつけるあの大人達のことが嫌いだった。




さき、この間、また親戚に青春真っ盛りって言われたの。すごくうるさい。何度も同じ事言うんだよ」


「そうなの!?私の親とかもそれ言うよ!まじかーやっぱり大人って青春時代?昔?の方が楽しかったのかな」



 私は制服を身につけた子達と何度もすれ違いながら、理科の教科書を胸でギュッと抱え、小さく頷いた。


 青春とは、若く元気な時代。人生の春に例えられる時期——らしい。



 スマホの中の辞書をじっと見つめる。


 人生の春、とは?年齢で人生の四季が決められているとしたら、おばあちゃんになったら冬ってこと?




『今しかできない事、しなきゃだめよお』



『青春を謳歌しないと』



 と、親戚のおばさん達は頰に手を当てて微笑んだ。



 今しかできない事、とは?



 私は、普通に高校に通って普通に生活しているだけなのに、「青春を謳歌」なんて言葉をぶつけてくる大人達は狡い。嫌い。


だってあなた達にも学生時代は平等に与えられていたはずなのに。そんなふうに押し付けられても困る。





 でも、実のところ。私はわかっていたんだ。

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