第二話 アナさんと穴

 アナさんの部屋へやかべにはあないている。そしてそのとなりにあるのがぼく部屋へやだ。


 そのへんからやガスをおもわせるへんなにおいがしてきて、就寝中しゅうしんちゅうだったぼくきた。

 それと同時どうじに、進撃しんげきやいば一巻いっかんんだのにづいて、一瞬いっしゅん一巻いっかんわりかとおもったが、ぼくなおしてもう一度いちどにおいのもとをたどった。

 とりふんだろうか。いや、ちがう。

 ぼくはたった数秒すうびょう着替きがえ、もと場所ばしょった。たりをつけて注意ちゅういぶかあたりを見回みまわすと――

 安井やすい商事しょうじのパンフレット。

 やぶれたやす障子しょうじ

 部屋へやすみにあるすみ

 未完みかんのままられた漫画マンガ

 ママがくれたミカン。

 て、なにかがおかしい。

「すごくくさいんだけど」

 すっかりちたかべあなかってくちをつけて、ぼく変事へんじこしたとなり住人じゅうにんたずねた。返事へんじはなかった。

「チーズでもったの? アナ」

 ぼくがそううと、アナはなぜかした。アナはぼくとなり部屋へやんでいる外国人がいこくじんおんなだ。

「……カレイでカレーをつくったんだけど、べる?」

 彼女かのじょ平然へいぜんとそんなことをしたので、ぼくおもわず全力ぜんりょくことわってしまった。

「ホールにほうるのもだよ。このカレーはイカ以下いかだ」

 ただでカレーがもらえるなんてそんはなしでもないとおもうかもしれないが、それだけくさかった。

 するとおこったのか、彼女かのじょ部屋へやし、ぼく部屋へやのチャイムをらした。

?」

 アナさんは陽気ようきかおでカレーのはいった容器ようきってっていた。華麗かれいないでたちだった。

加齢かれいすすむから、カレーみたいな糖分とうぶんたかいものは当分とうぶんべたくないんだ」

糖尿病とうにょうびょう他界たかいするにはまだわかいんじゃないかしら。とにかく一緒いっしょべましょ」

 彼女かのじょのサラともまだ和解わかいしていないというのに、アナさんはいえってきた。

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