閑話1−6 結果発表
今日は試験明けから3日経った火曜日。
火曜日といってもこちらでは属性的な意味合いなので、ポジション的には月曜日だ。
火曜日なのに月曜日とは文字で改めて見るとややこしいな。
さてこの休みの間中、非常にドギマギとした時間を過ごすハメになった。
今日はいよいよ4日間に渡って行われた試験の結果が発表される。
この日学園の昇降口前には無数の掲示板に紙が貼られ、その内容を見ようと非常にたくさんの学生たちが群がっていた。
その様相はまさしく戦場が如く雰囲気であり、誰しもが真っ先に結果を見ようと争っていた。
「うっ、こりゃ当分あそこには近寄れないなぁ…」
その激しさにとてもではないが飛び込む勇気は俺にはない。
元の世界ではこういったスタイルの物事の発表はすでに無く、基本的に電子でのものに移行していたからな。
昔はこのような形式だったと聞いたことがあるが、その時もこんな感じだったのだろうか。
「リョーマ様、あれは庶民用の結果表ですよ。むしろ入って行かれても困ります」
なんて感想を抱いていると、真横にいたディーンからそうツッコミが入る。
えっ、そうなの?
「王侯貴族などの方々があの中に入っていって怪我でもされたら、それこそ学園側で大騒ぎになるほどの責任問題になりますよ。一定以上の身分であれば別口から結果の確認が可能です」
なるほど、それもそうか。
元の世界の知識があるゆえに、この光景に対しても何も違和感を抱かなかったが、普通の貴族階級の意識的にそもそもあの場所に割って見にいくという考えになること自体がないらしい。
やはり未だにこういった考え方には慣れないな。
とはいえ少し寂しい気分。
自分の試験番号を探して結果に一喜一憂、それをまたその周囲と共有みたいなことやって見たかったんだけどな。
他学生たちの騒々しさを尻目に、俺とディーンはそこから数十分ほど移動した。
って数十分!?
いやさらっと行きましょうとか言われたから、もっと近いかと思ったよ。
ディーンが馬車を呼び寄せた時は一体何事かとなったが、改めて感じたけれどこの学校ってバカでかいんだな。
いや実家でも庭と庭の間の移動とか馬車で移動していたし、案外とどこもこんなもんなのか?
なんだかこういったことに慣れてくると、感覚がおかしくなるぞ。
そしてやっとこさ移動した先で俺とディーンは試験番号を窓口に伝え、ようやく結果を受け取った。
結果が書いてある方を裏向きにし、息を整える。
こういうのを見る時って結構ドキドキするのは俺だけだろうか。
なまじ自分自身でタイミングを選べるだけ、裏返すのに結構勇気がいるんだよな。
じゃあそもそも裏返すなよっていう話なんだが、それとこれは違うんだ。
…っよし、行くか。
セーのっ!!
ついに覚悟を決めて、持っていた紙を試験結果の書かれている方に裏返す。
そうして出てきた文字は、
◼️試験結果
名前:リョーマ・イグニス・メガロス
学年:1
●学科科目
・数学 100/100
・共通語学 96/100
・魔物学 98/100
・元素学 94/100
・政治 46/50 経済 48/50
・地理 48/50 歴史 48/50
・神話 92/100
総合得点:670/700
●実技科目
・剣術 A+
・槍術 B
・体術 B+
・魔術 B+
※評価はD〜S
実技評価:B+
クラス:
1−1
いよっしゃぁぁぁぁあああ!!
はぁこれまで頑張ってきた甲斐があったなー。
いやーせっかく魔法みたいなファンタジー世界だっていうのに、何が悲しくて試験勉強ばっかりしなければいけないんだ。
この数ヶ月王族としてのプレッシャーとかに押しつぶされそうになっていたけれど、無事に上位クラスそれも1組に入ることができて本当によかった。
全学年を通して試験はこの1回だけではないのだろうけれど、とりあえず上位クラスに入ることでひとまずの面目は保つことができたかな。
これで肩の荷が降りたというものだろう。
「どうでしたか?」
「ふふん、どーだ!」
先ほどまでの緊張はどこへやら、その結果を誰かに見せたくなっていた所へディーンから聞いてきてくれたので、自信満々にその結果を見せつける。
「1組…。さすがですね」
こちらはもっと驚いてくれることを期待していたのだが、思ったよりも随分とリアクションが薄い。
そして続く言葉に俺は愕然とするのだった。
「これでクラスもリョーマ様と同じになりそうです」
と言いつつ、見せてきた結果用紙には以下のように書かれていた。
◼️試験結果
名前:ディーン・レイリー
学年:1
●学科科目
・数学 90/100
・共通語学 98/100
・魔物学 96/100
・元素学 88/100
・政治 42/50 経済 41/50
・地理 42/50 歴史 46/50
・神話 94/100
総合得点:637/700
●実技科目
・剣術 B
・槍術 B
・体術 A
・魔術 B
※評価はD〜S
実技評価:B+
クラス:
1−1
いやディーンも王家の付き人になれたということは、それなりの身分を持っているのは知っていた。
そしてそれ相応にしっかりとした教育を受けているのも。
だがこちらが必死に勉強していた横で当然のようにしっかりと仕事をこなしながら、涼しい顔で1組に入られていると釈然としない。
先ほどのクラス分け試験結果の見方など、常識面的なものを含めるとなんならディーンの方が上とまで言える。
…なんか負けた気がする!
◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️
さて、試験結果も見終わったことで、俺たち二人は教室に移動することに決めた。
1組に入るような奴らだ、全員すごい奴に違いない。
一体どんな人たちがいるのだろうか。
そんなドキドキと共に意を決して扉を開けて、部屋の中に入ると…。
新学期のしかもクラスが決まった後の教室と言えば、自分の机の周りの奴らと駄弁ってざわざわとしている印象なのだが、ここではそのような様子は見られない。
それぞれが自分の席で瞑想したり、背筋を伸ばして静かに本を読んだりして静かに過ごしている。
さすが上位クラス、そしてその中でもトップオブトップと言われるものたちが集まるだけあって、みんな礼儀正しいな。
これ俺浮きそうで少し怖いかも。
あっでも寝てる人もいる。
前の壁に席順が記載されていたので、それを確認すると俺が1番左の列の席の前から4番目、ディーンが右から3列目の前から1番目の席だった。
ここでしばらくのお別れですね、と妙に演技っぽくディーンから言われたが、特にリアクションも返すことはなくスルーする。
さて、席に着いたはいいがやる事がない。
みんななんか話しかけづらい雰囲気だし。
ひとまず自分の周りにいる人だけでも観察しておくか。
まず、俺の1つ後ろに座っているのが頭に角の生えた女の子で、おそらく魔族だろう。
こちらは傍目でわかるほどに、難しそうな本を読んで過ごしてる。
そして俺の目の前にいるのが獣人族の男だ。
俺が見たことのある獣人族の中でもかなり体が大きい方だな。
腕を組み、時折耳をぴくぴくとさせながら、目を瞑っている。
起きているのか寝ているのかついては、ぱっと見だと判断できない。
そしてそのその前は水色髪をした女の子だ。
顔立ちが非常に整っていて、服も何だかキラキラとしている。
白色のキャソックのようなものに、金の刺繍が施されているようだ。
もしかして聖国の関係者だろうか。
彼女は特に何をするわけでもなくぼーっと宙を見つめている。
なんか特殊な物で見えてるのかな?
そしてその前の席の人はまだどうやら到着していないようだ。
そんなことを考えていたところで、扉から新たに二人の人物が入ってくる。
片方は肌が全体に青白く、ローブを深く被った人だった。
見た目的には怪しさ満々なので、さすがにこのクラスの人も彼女?をみてどよめきが起こる。
そしてそのまま空いていた俺の3つ前の席に収まり、これでクラス全員が揃った。
「さて、全員揃っただろうか。これから一年の間1組の担任を受け持つことになったロバートという。よろしく頼む」
入ってきたもう一人の人物は教壇の前で立ち止まると、そのような自己紹介を始める。
この人見たことあると思って少し考えて、剣術試験で俺と対戦した試験官の人であることに気がついた。
あの時の試験管の人が俺の担任になるのか〜。
「これからしばらくの間、このメンバーで活動を共にしていくこととなる。順番に自己紹介をしていってくれ」
こ、こっちの世界でもそういうのあるのか。
結構こっちに来てからも長いから、どうやってやってたかうろ覚えだよ。
最初に説明したように、この学園に俺が来た要因として、これから各国の要人になるような人物達との繋がりを築くため。
この自己紹介は俺の事を知ってもらったり、相手のことを知ると言った面で、その第1歩となるとても重要な機会だ。
何としても成功させなければ・・・!
自己紹介の順番は先生から見て右の列の前からということで、俺はクラスで4番目だった。
ちょ、ちょっと待ってくれよ。
まだ心の準備が・・・。
そうこうしている間にまず全身にローブを被った人物が立ち上がり、自己紹介が始まっていく。
「マミーと言います。とある目的の為だけにここに来ました。何かあればそちらを優先したいので、ご不便をかけるかもしれませんがよろしくお願いします」
「ソフィア・アーィオ・フォスです、聖国では義父が法皇をしています。皆さんとこれから仲良くなれることを楽しみにしています」
「獣国からやって来たバ・ベルク・シュンシュンクだ、よろしく頼む。力仕事とか得意だからそういうので何か困ったことでもあれば、俺に言ってくれ」
って、まだ何も考えついてないのに、もう俺の番になってしまった。
一応咄嗟に立ち上がったは言いものの、どうしよう。
「あーえっと、リョーマ・イグニスです。年齢は15でってみんなそうか。趣味はサッカー・・・じゃなくて、カルプットです。これからよろしくお願いします」
クラスの自己紹介はテンパって何も言えなかった。
王国の王子とかもっと言うべきことが色々あっただろ。
自己紹介でドラマとかで見るお見合いのやり取りが真っ先に浮かんできて、ご趣味しか頭に出てこなかったよ。
俺こんなに多人数の前で喋るの下手くそだったっけ?
「私はモンファ・テレです。父が魔族の議員で、昔からこの学園で上位クラスに入ることを目的に勉強していたので、入れて嬉しいです。読書と魔術が好きで、それについてお話が合う人がいればいいなと思います。これからよろしくお願いします!」
そうやって勝手に自己嫌悪に陥っている間にも、クラスの自己紹介は進んでいく。
さっきはせっかくの機会だからみんな事も知りたいと思っていたのに大半を聞き逃してしまっまた。
「これで全員分終わったな。ここから何人1組のままかは分からないが、できるだけいい成績を維持できるように各々全力を尽くすことだ」
俺このままやって行けるのか・・・?
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