中層①

第37話 拠点探索


とうとう区分けにした時に真ん中に当たる部分、自分で定義した言い方で言うと中層、に踏み入れてしまったな。


明確に線が存在する訳ではないのに、最初に俺が生まれで棲んでいたエリアが、ゲームで言うところのいわゆるチュートリアルだったのだと嫌でも痛感させられる。


やはりトラブルがあっても当初の予定通りに昼間に移動しきったのは、正解だったかもしれないな。


ここの生物たちも普通の野生の生物と変わらず夜行性のものの方が多く、どちらかというと夜の方が魔物の数自体多い。


そういったこともあって、今までのエリアでも大抵昼間にしか狩りを行ってこなかったのだが・・・。


辺りを見渡しただけでも、眠りについたりだとか身体を休めているだけなのに、それだけで威圧感やオーラを感じるレベルの魔物がちらほらと見受けられる。


まだまだこいつらとは正面から戦闘したら勝てそうに無いな。


『鑑定』スキルをかけて現時点での彼我の実力差を把握したい気持ちももちろんあるが、それにより相手を刺激することになるのは避けたい。


以前も説明したように、『鑑定』スキルは掛けられると不快感を感じる可能性があるからな。


わざわざ今ここで危ない橋を渡る必要性も皆無だろう。


ここはひとまず棲息している魔物達のことは置いておいて、中層で生活する上での拠点とする場所を見繕いたい。


それにしても、魔力の濃さから予測していたとはいえ、やはり中心地に近づけば近づくほどその脅威度も上がっていっていたか。


だがこれほどまでのインフレ具合とは、流石に予想できていなかった。


想像よりも強さの上がり幅が多分大きいぞ。


前に居た島の外縁部付近では、トップクラスに強いやつの一番高いステータスの値が大体10,000前後であった。


しかもそいつらでさえ、その一部のステータスだけ突出しているような場合がほとんどで、その他の値は割と貧弱なやつが多かったはず。


俗に言う極振りやぶっぱと言われるステータス構成に近い。


例外と言えば「しびれ草」を背に生やしていたあのカニくらいか。


あれは外層の中でも別格クラスの強さだったな。


そう思えば、下のエリアに居た時に相手をした中で、一番強かったのがあのカニだったかもしれない。


そして驚くべきことに、まだ厳密なステータスこそ見れてはいないものの、今まで何度も色々な魔物と戦ってきた肌感を信じるのなら、実力的にこの中層にはあのカニクラスがごろごろいそうだ。


そのカニですらひたすら逃げることしか出来なかったのに、今からそいつらを相手にできるほど強くなるには、一体どれほどの時間が掛かるのだろうか。


こりゃあ更に中心地に行くのがいつになるのか、考えるだけでも長そうだな。


っていや、待て待て。


いきなり新しい環境に飛び込んで不安なのは分かるが、あまりにもネガティブに考えすぎだぞ?


ここはポジティブ方面に思考を切り替えよう。


『薬毒錬成』スキルのレベルが1つ上がれば、念願の「成長促進薬」を作り出すことが出来る。


それに相手が強いってことはこれまでの経験的に考えると、それだけ得られる経験値が多いとも言えるだろう。


下側よりも短時間で強くなれるという風に考えればいい。


ただ今はとてもじゃないがこんな奴らの相手はできない。


少しでも敵意を向けられないように、必死に存在感を消して散策を続ける。


おおっ、この場所しばらくの拠点にいいかもな。


そうして辺りを警戒しながら、実に良さげな場所を発見した。


その選んだ場所とは、またしても湖の縁近くの浅い所である。


当たり前だろう?


ここでは移動してきたばかりの俺は、ここのカーストにおける底辺に近い存在なんだ。


両生類という水陸両方で活動可能な生態を持つ大きな利点、そりゃあ活かすに決まっているだろう。


両生類のそれは本来生物上のデメリットでもあるんだから、こんな環境くらいでは有効活用させて欲しい。


両生類って水陸両方で活動出来ると言えば聞こえはいいけど、そのどちらかでも欠けた環境では生きていけないとも考えられる。


環境の変化に対して非常に不安定な生物であると言えるだろう。


そんな大きな欠点を抱えているのだから、これくらいの役得は貰わないと。


以前は住処としての拠点の他に、薬の保存のため適当な木のうろなんかを探していたが、『収納』スキルを無事に習得したおかげで、ある程度の量は自身の体内に保管しておけるようになった。


ただでさえ強力な魔物がゴロゴロと居る上に、慣れない場所での探索はリスキーな行為だ。


しなくてもよいならば、これ以上の危険を犯すことら考えなくて良い。


本当に『収納』スキル様々、無事に取得出来て良かったーと言わざるを得ない。


このスキルは自分自身の体重とスキルレベルがその容量に比例している。


その基準は体積ではなく重さ単位であり、それぞれの回復薬系統や毒類は液体であるため嵩張りやすいが、その点「麻痺薬」であれば気体なので数に対してその容量をあまり圧迫しない。


そのため「麻痺薬」は、気持ち多めにストックしているのだ。


これで容量の基準が体積であったなら、気体のものなんてとてもじゃないが『収納』できないけれど。


同じグラム辺りの気体の体積は、他の形態と比べて馬鹿みたいに多いからな。


逆に重さ単位ということで大食いして自身の体重を増やすことを目的とした、いわゆるデブ活をすることも真剣に考えたが、俺のステータスの中でも高めである素早さを捨てかねないので辞めた。


まだレベルが低く、体重を増加させても影響が少ないということもある。


レベルが上がってきたらデブ活についても、もう一度考えようかな。


さて、『収納』スキルについての話題はひとまずこの程度でいいだろう。


この拠点でこれから活動していく上で、さしあたっての問題はヘビだろうか。


ヘビは元々陸棲の生物だが、こいつは身体をなるべく冷やす必要性があるので、ここのような水に浸かれる浅瀬が、こいつにとっても都合が良い。


その点で言えばやはりここはかなり理想に近い拠点だ。


こいつの場合はいざとなっても湖の奥に逃げることは難しいけれども。


しかしながらこいつの色は真っ白だ。


ジャングルの中じゃあ「保護色?なにそれおいしいの?」レベルの物に違いない。


夜でも光を反射して目立つこと間違い無しだ。


本来自然界で白色の生物は居ないはずだからな。


少なくともヘビで居るって話は聞いたことが無い。


アルビノ個体といって色素に関するDNAが失われている遺伝子疾患に該当するものならばごくまれに発見報告がされるのだけれどな。


白狐や白蛇は古くから神様の遣いや、妖怪に例えられて神聖視されていたけど。


某物語の中でも恥ずかしがり屋な妹の友達にそんなお話があった気がする。


そういやどっかではアルビノ同士が交配して、白蛇になっているって聞いた事もあるけど、別にそういう種な訳でもないしな。


それにそのような場合は血管内の血液が外に映って目が赤色になるはずなのだが、こいつの瞳は透き通るような青。


名前自体にも白を冠しているのだし、元からそういうものだと考えるしかない。


そのほうがこちらとしても気持ち的に安心だ。


アルビノ個体の場合は先天性の疾患としてメラニンが生成出来ないので、紫外線にめっぽう弱い。


こんな赤道付近のような気候帯の中で紫外線が発生しないとは考えづらいし、アルビノでないに超したことは無いのだ。


とはいえ白色なのに変わりはないので、目立つものは目立つ。


が、これだけ草が茂っていれば多少は隠れ蓑にもなるだろう。


後はこの草とかを多少踏み倒して、より身を潜められるように改造したいな。


そう思い窪みに近づいたのだが・・・、どうやら先住民がいたようだ。


そりゃそうか、俺等が良い住処だと思うところなんだ、他の生き物にとってもそうに決まっている。


ならしょうがない。


まずは力尽くでここを奪わせて貰うとしよう。


こういったところに潜んでいるってことは、真正面からはあまり強いタイプじゃないはず。


こんなところで足踏みしているどころか返り討ちにされたら、もうここから先やっていける気もしないし。


ただここに来ての初めての戦いだし、2対1でも許してくれるかな?


【ステータス】

種族:クロールアップ・レイ

性別:♂

HP:14900/14900

MP:8400/8400

SP:10680/10680


レベル:43

ATK:9500

DEF:7200

INT:7000

MND:8300

SPE:7300


スキル:

『状態異常耐性:レベル1』

『貪吸:レベル3』

『麻痺攻撃:レベル7』

『猛毒攻撃:レベル6』

『隠密:レベル6』

『刺突:レベル8』

『跳躍:レベル5』

『水中高速移動:レベル2』

『水棲 :レベルー』


【クロールアップ・レイ】

地面に近い場所を這うように泳ぎ、獲物の近くまで忍び寄る。

その尻尾には強力な針があり、気付かずに近づいてしまうと大変危険。

その針を鏃にした武器は大変強力とも言われており、昔はよく使われていた。


エイか。


たしかにこいつも浅瀬にいるやつだよな。


本来はおとなしい魚で、ちょっかいを掛けられない限り攻撃してくることは少ない貝類とかを主に食べるって聞いたことあるんだけど、さすがに住処に立ち入られたら怒るよね。


というか住処に立ち入ること自体がちょっかいか。


ステータスはやっぱり強いな。


まんべんなく隙という隙が見当たらないオールラウンダータイプ。


このステータスでこの場所においては奇襲型でしかやっていけないっぽい、と言うところが恐ろしいところだが。


『危険察知』スキルと『鑑定』スキルによって相手から攻撃される前に気付けたので、相手のペースに飲まれずに戦えて本当に良かった。


さてどうやって戦っていくかだが・・・。


前から思っていたんだけど、強いやつらでもそこまでスキルが多いというわけではないんだな。


大体俺の半分くらいか。


弱い系統からこつこつと進化していった方がスキルとかも多くなるのかもな。


そこがこれからも戦っていく上で、自分の強みになっていく部分になるだろうから。


◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎ ◾︎


結論から言うと、無事に倒すことが出来た。


エイって手足が無いからね。


魔法の類いも所持していないようだったし、攻撃手段は針だけだ。


針は中々素早かったので本来ならば危ないのだろうが、来ると分かっていれば躱す心構えはできる。


擦っても「毒」や「麻痺」で危機的状況に陥るためそれだけでも普通は十分でなのだろうが、あいにくと俺もヘビも『状態異常耐性』スキル持ちだ。


あまりそこら辺の効果は見込めなかった。


あとは少しずつヘビと二匹がかりで少しずつ追い詰めていった。


さすがに住処に関することだったので、今回ばかりはヘビも積極的に協力してくれた。


ステータスにも差があったし、ものすごく堅実的で時間が掛かったつまらない戦闘であったのでここでの描写はカットするとしよう。


そしてレベルアップだな。


俺の予想通りだとすれば次はついに・・・。

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