第30話 新スキル『薬毒錬成』
無事にナマズも倒すことが出来たし、最初のリベンジ達成といったところか。
俺1人だけの力では無いので完全な、とは言い難いのだが・・・。
まあ、それでもリベンジはリベンジだ。
次は「しびれ草」を追い出される要因となった、カニらへんを相手に是非果たしたいところである。
とはいえ、レベルアップはしたものの、相変わらず他の魔物と比べるとステータスの値はいまいちだな。
進化を重ねてきたことにより、確かに昔よりかはステータスの値も伸びるようにはなったものの、目的である島の中心地に行けるようになるまでにはまだまだ先が長そうだ。
って、これは!
俺は今回のレベルアップによる変化をざっと眺めていたところ、久しぶりに『状態異常耐性』スキルのレベルが上がっていることに気が付いた。
カエルになったことにより、『早熟』スキルが無くなってしまったため、スキルレベルの上がり方が非常に悪くなっていたんだよな。
特に、既に高レベルであったスキルなんかは、ここ暫くレベルが上がっていなかった記憶だ。
『状態異常耐性』スキルは、所持しているスキル群の中でもレベルを上げておきたいスキル筆頭であるから、久しぶりのレベルアップには喜びを隠せない。
でも『状態異常耐性』スキルのレベルが上がったってことは、ナマズとの戦闘中に何かしらの状態異常攻撃をくらったってことだよな。
もしかして先程皮膚を焼かれたあの電撃攻撃には、《状態異常:麻痺》を付与する効果なんかが含まれていて、それに反応してレベルが上がってくれたのかも知れない。
そうだとしたら、あの時状態異常を引かなくて本当に良かったよ。
これこそが、『状態異常耐性』スキルのレベルを上げたことによる1番大きな効果なんだろう。
もしも状態異常に罹っていたら、それだけで先程まで以上に手子摺っていたことになるだろうし。
『早熟』スキルが失くなる前に、出来るだけレベルを上げておいて助かった。
そして『状態異常耐性』スキルを見終えると、順に他のスキルも見ていく。
うん、最近覚えたばかりの3つのスキルたちも、順調にそのレベルが上がってくれているみたいでなによりだ。
・・・?
なんだこれ?
と思っていたら、スキル一覧の中に今まで見かけなかったものを発見した。
なんかさっきの戦闘を経たことで、新しいスキルを習得したみたいだぞ。
なになに、『薬毒錬成』スキルだって?
スキルの名前から察するに『毒生成』スキルと、『薬生成』スキルからの派生といったところか?
ちょうど『薬生成』スキルのレベルが10になったタイミングで習得したみたいだし、その線が濃厚そうに見える。
何はともあれ、とりあえず効果の方を見てみるとするか。
⬛︎『薬毒錬成』
自分の好きな効能を持たせた薬または毒を創り出すことができるスキル。
創り出すときには、付与できる効果リストの中から付けたい効能を選択して、レシピを作成する。
レシピは一度作成すると破棄できない。
所持できるレシピの数はスキルレベル×1までである。
えーっと、なになに?
ふむふむ・・・、って何だと!?
自分で好きな効能を持つ、毒や薬を創り出せるだって!?
なんだよ、そのものすごいスキルは!?
今までの『毒生成』スキルと『薬生成』スキルで生成することが出来る毒と薬は、それぞれ
⬛︎『毒生成』
・「微毒」
・「毒」
・「猛毒」
⬛︎『薬生成』
・「HP回復薬」
・「MP回復薬」
・「SP回復薬」
であった。
もちろん現状でその事に文句があった訳では無い。
しかし、それらに加えて新たに色々カスタマイズが出来るようになるならば、それだけで戦略性が抜群に広がることだろう。
それにしてもスキルレベルにつきレシピ、つまり創り出せる薬の種類は一つまでか・・・。
今はレベル1な訳だから、当然1個しかレシピは作成出来ないわけだな。
他のスキルの最大レベルとかから考えると、最大レシピ数もそんなに多くは無さそうな気がする。
強力なスキルである分、制限が多いということか。
クソ、ここは慎重に考えなければいけない場面だな。
とりあえず付与することが出来る効果のリスト、とやらを見てみるとするか。
⬛︎薬毒錬成 カスタマイズリスト
〇回復系統
‐HP回復
・HP回復効果(小)
・HP回復効果(中)
・HP回復効果(大)
‐MP回復
・MP回復効果(小)
・MP回復効果(中)
・MP回復効果(大)
‐SP回復
・SP回復効果(小)
・SP回復効果(中)
・SP回復効果(大)
‐状態異常回復(毒)
・解毒効果(弱)
・解毒効果(中)
・解毒効果(強)
‐状態異常回復(麻痺)
・解痺効果(弱)
・解痺効果(中)
・解痺効果(強)
etc・・・
〇状態異常系統
‐状態異常付与(毒)
・毒(弱)
・毒(中)
・毒(強)
‐状態異常付与(麻痺)
・麻痺(弱)
・麻痺(中)
・麻痺(強)
‐状態異常付与(睡眠)
・睡眠(弱)
・睡眠(中)
・睡眠(強)
‐状態異常付与(混乱)
・混乱(弱)
・混乱(中)
・混乱(強)
‐状態異常付与(石化)
・石化(弱)
・石化(中)
・石化(強)
etc・・・
〇
‐ ATK強化効果
・ATK強化(小)
・ATK強化(中)
・ATK強化(大)
‐ DEF強化効果
・DEF強化(小)
・DEF強化(中)
・DEF強化(大)
‐ INT強化効果
・INT強化(小)
・INT強化(中)
・INT強化(大)
‐ MND強化効果
・MND強化(小)
・MND強化(中)
・MND強化(大)
‐ SPE強化効果
・SPE強化(小)
・SPE強化(中)
・SPE強化(大)
etc・・・
〇
‐ ATK弱体化効果
・ATK弱体化(小)
・ATK弱体化(中)
・ATK弱体化(大)
‐ DEF弱体化効果
・DEF弱体化(小)
・DEF弱体化(中)
・DEF弱体化(大)
‐ INT弱体化効果
・INT弱体化(小)
・INT弱体化(中)
・INT弱体化(大)
‐ MND弱体化効果
・MND弱体化(小)
・MND弱体化(中)
・MND弱体化(大)
‐ SPE弱体化効果
・SPE弱体化(小)
・SPE弱体化(中)
・SPE弱体化(大)
etc・・・
〇その他カスタマイズ要素
‐生成物の状態
・気体
・液体
・固体
‐量
・少ない
・普通
・多い
‐効果時間
・短い
・普通
・長い
‐効果の対象選択
・全て
・生物
・哺乳類
・魔物
・人間
etc・・・
おうふ・・・、なんか一気に見切れないくらいに細かい文字で大量に効果の項目が出現してきた。
そのあまりの量に目がチカチカとする。
この中から好きな項目を好きなだけ選んで、自分の使いやすい毒や薬を作れってことなんだよな。
ただ項目を眺めているだけでは、これ以上の情報は分からない。
まずは色々と試してみよう。
始めに状態異常系統の中の、更に状態異常付与(毒)の「毒(中)」という項目を選択してみると、突然「使用MP:50」という文字が出現した。
なるほど・・・、こういう感じなわけね。
どうやら項目を選択すると、その薬(毒)を生成する時に、使用するMP量が表示されるらしい。
そして今回「毒(中)」を選んだ時に表示された使用MP量、これはスキル『毒生成』による「毒」の生成に使用するMP量と全く同じだ。
ということは、この状態異常付与(毒)の項目は、それぞれ『毒生成』スキルで生成できる毒の種類に対応してるのかな。
俺の考えを立証するために、1度「毒(中)」の選択を外し、さらに「毒(弱)」と「毒(強)」の項目をひとつずつ選択する。
すると、それぞれのMP使用量は「5」と「500」と表示された。
これは「微毒」と「猛毒」を、生成する時のMP使用量と一致している。
やはり俺の考えはある程度合っていると考えても良さそうだ。
となると効果の方も、そのそれぞれに対応しているのだろうな。
そして他にも検証するためにも、今度は「麻痺(弱)」を単体で選択してみると、なんと表示された使用するMPの量は「50」だった。
その効果が(弱)なのにも関わらず、「毒」の(中)と同じMP使用量とは・・・。
どうやら効果の強さが同じでも、別の項目なら同じMP使用量ではないようだ。
使用MP量が多いほど効果が強力になる傾向からして、やはり単純に「麻痺」の方が「毒」よりも状態異常として強いという扱いなのだろう。
また次に複数の効果を同時に選択した場合の使用MP量について調べるため、「毒(弱)」と「麻痺(弱)」を同時に2つ選択してみると、その数値は「110」になった。
単純な計算を行うならば、「毒(弱)」の「5」と「麻痺(弱)」の「50」を足した数字である「55」になるはずなのだが、結果はその2倍。
どうやら複数の効果を同時に選択するほうが、単体で選択した時よりもMPの使用量が増えるみたいだ。
そしてその増え方は選択数を増やせば増やすほど、どんどんと大きくなっていた。
こちらも1個ずつ複数の項目で検証してみた所、2つ選択で元の使用量の2倍、3つで4倍、4つで8倍と指数関数的に増えていっていることが判明。
欲張って脳死でたくさん機能を盛り込めば良いって訳じゃないのか。
例え盛り込んだレシピを作ることが出来たとしても、現実的に使用出来ないなら意味が無い。
これにより「レシピの数が限られているなら、ひとつのレシピに沢山の効果を付ければ良いじゃない」という、俺の浅い企みはあっさりと泡になって消えた。
今までの『毒生成』スキルの使用感からいって、ダメージ量はもちろんだが相手のステータスや、スキルの耐性貫通的な所も、性能が上な方が格段に良い。
そのため、今まで強い敵には出し惜しみ無く「猛毒」を使わざるを得なかった。
とはいえそのMP使用量は多いため連発は出来ず、「毒」や「微毒」と使い分けて戦ってきたことも多い。
だがそうやって欲しい効果を使い分けしたいがために、効能の強さ毎にレシピを作成していたら、数がいくつあっても足りなくなってしまうだろう。
これは自分が本当に欲しいと思う効能を、きちんと厳選していかなければならないな。
さて、これからその1つ目のレシピを作っていくわけだが。
俺がレシピを作る上で、1番注目したのは「その他のカスタマイズ機能」だ。
これが一体何なのかだが、毒(または薬)を作成するときに、その使い勝手を良くまたは悪くすることが出来る。
それの一体どこに注目しているのかと言うと、使い勝手を悪くすることが出来る部分だ。
なぜ俺が使い勝手を良くする所ではなく、悪くする所に注目しているのか?
使い勝手を良くすれば、その分色々な所で強力な代物が出来上がるが、その代償として生成時に使用するMP量も増えてしまう。
もう分かったと思うが、このカスタム機能で逆にわざと使い勝手を悪くすることで、なんと生成時の使用MP量を節約することができるようにもなっているのだ。
簡単に実際の項目を例に挙げて説明すると、「気体」よりも「液体」、「液体」よりも「固体」の方が使用MP量が少なく済む。
「気体」は効果を与える相手を選べない点や、保管や管理が難しいなどのデメリットはひとまず置いておいたとして、とにかく当てるということを考えた時に、その3つの形態の中では1番当てやすい。
次に「液体」と「固体」を比べた時だが、「固体」は口や鼻、またはその他の方法で体内に直接取り込むしかないのに対し、「液体」は粘膜やものによっては皮膚などから効果が発揮されるものがある。
そういった摂取させやすいという観点から、先のような順でMP使用量が多くなっているのだと思われる。
デフォルトでは生成時の形態は「液体」になっていて、効果毎のMP使用量を検証をしていた時の「毒」や「麻痺」の数値もデフォルトである「液体」のものである。
当然、既存で使用している『毒生成』スキルや『薬生成』スキルも、生成時は全部「液体」だ。
なおこちらには液体しかそもそも存在していない。
次に量や効果時間についてだが、これはもう見たまんまその通りとしか言いようがない。
量は少ないほど消費MPが少なくなり、多いほど消費も多くなる。
効果時間も同様に短いほど使用するMP量は減り、長いほど増える。
はぁ、ただでさえ試行が出来ないような制限があるのにこんな仕様にしやがって・・・。
こういうのはレシピのリセット機能か、いっそ攻略wikiが欲しくなるなぁ。
効果の方は『毒生成』スキルの「微毒」、「毒」、「猛毒」から、(弱)、(中)、(強)の振れ幅を想定することができるが、こっちのカスタマイズについては別だ。
量が多いとか、効果時間が短いとかって一体どれくらいなんだよ、それは誰の主観からだよ。
もっと定量的な表現にして欲しかった。
恐らく今までのことから察するに、現状のスキルで生成する毒や薬が、それらの普通にあたると思うのだが、それ以外はてんでわからない。
これは最初の方に創るレシピは、いくつか博打的になりそうだな。
そして最後に「効果対象の選択」についてだ。
これははなから服用する相手を限定することにより、使用MP量を減らすか使用MP量そのままで効果をより強力にするのかを選べるようだ。
デフォルトでは「対象:生物」であったが、そこから分類や種族といった風に絞り込むことが出来て、その対象の範囲が狭ければ狭いほど、見込めるリターンもでかくなる模様。
うーん、このジャングルは生態が多種多様で、どんなモンスターが出るかわからない。
そんな場所でこのカスタムを使うにはリスキー過ぎるか?
レシピや使用MP量が無制限であれば、戦う相手によって効能を特化させることにより、後出しジャンケンのようなことも出来ただろうが、現状の仕様だと結構ピーキーだ。
そうやって一通り薬(毒)の効果リストを眺めていたその時、効果の中の一つに俺はとんでもないものを発見してしまい、思わず確認する手を止めてしまった。
それは肉体強化系統の一画にあったものだった。
〇
・・・
‐成長速度強化
・成長促進(小)
・成長促進(中)
・成長促進(大)
目を見開き慌てて「二重鑑定」を行ってみると、そこに現れた文字は・・・。
⬛︎「成長促進」
レベルアップに、必要な経験値を通常より多く取得できるようにする秘薬。
種族レベルだけで無く、スキルのレベルにすら影響を与えると言われている。
これはまさに『早熟』スキルと同一の効果だ。
『早熟』スキルが消えたことによって、もう今までのスピード成長が出来ないのだと思っていた。
中心地にたどり着くようになるのはいつなのだろうと。
だが、これを使えばまだまだやれるのではないだろうか。
今まで漠然と抱えていた先行き不安な状態に、光明が射したようだった。
よし、この『薬毒錬成』スキルで作成する、1つ目のレシピは、この「成長促進(大)」で決定だ!
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