目的のために

第29話 ただいま順調に成長中


今だっ!


コイツが正面方向に気を取られている隙に、俺は水を蹴って加速しながら、敵の背面から襲いかかる。


が、どうやらそれはすんでの所で気付かれたようで、俺の絶好のタイミングによる奇襲は空振りに終わった。


しっかりと「気配遮断」を使ってはいたんだが、スキルとは言えどその効果は完璧ではないようで、今のようにこちらから攻撃を仕掛けた時なんかは、特に効力が薄れて気付かれやすいように思う。


ましてや、この頃相手にしている連中は揃いも揃って俺よりも高ステータスなヤツらばかりだからな。


そういうステータスの高い奴らっていうのは、感覚が鋭いから『隠密』スキルが効きにくくなっている、ということがあるのかもしれない。


と考えるのは後にして、今は目の前の敵を倒すことに注力するか。


[おい、そこで『氷魔法』を使って相手の動きを止めてくれ!]


やつは背面からの俺の攻撃に気付いて避けることが出来たのはいいものの、それを行うことに必死になりすぎて無理な体勢になったので、今度は逆に正面にいたヘビへの対応がおろそかになっている。


そこで使い勝手のいい『氷魔法』によって、相手の動きを制限するようにヘビへと指示を出した。


ヘビはそれを受けてすぐさま魔法を発動し、水中を白線が走ったかと思った次の瞬間、相手の身体の周りを氷が覆った。


水中に居る生物は自らが氷漬けになることは基本的に想定していないだろう。


ましてやこんな熱帯地方並の気候下だ、いきなりの氷漬けに混乱するのも不思議じゃない。


そうでなくとも2対1なんだ、動きの制限は相当厳しいだろ?


こんな水温の中だし氷はいずれは溶けるとしても、そんなすぐじゃあない。


有利になった今のうちに決めにいってやる!


とか、完全に油断していたのが悪かったな・・・。


『氷魔法』によって凍結した部分を、何とかして破壊しようと必死に地面でのたうち回っていた所に無用意に近づいた途端、くぐもったようなバリバリバリぃッといった音とともに、水中を電撃が駆け抜けていく。


い、痛ってぇ!!


瞬間的ではあったものの身体を電気が通過した事で、蚯蚓脹れと強烈な痛みが全身へ奔る。


授業で水はイメージの中の印象よりも電気を流さない、とか教わったけれど全然そんなことないじゃないか!


いや、確か電気を通さない云々の話は、不純物の無い真水でのことだったっけか?


だが仮にそれが真水の話だったとしても、この速度での拡がり方はさすがにおかしいだろ・・・。


この水中には導体でも溶け込んでんのかよ。


もしかしてこれも魔法だからってことなのか?


まったく不思議原理にも程があるな。


異世界特有の原理って言うのは、こちらが予想や推論を立てても簡単にぶっ壊してきそうな理不尽なものではあるが、とはいえ一応何かしらのルールには則ってはいそうではある。


例えその全部については理解できなくとも、それについて考えること自体はやめるべきではないはずだ。


ゲームを攻略するときだって、初見はやってることがなんのことやらさっぱり分からなくても、進めるうちに段々と理解が深まって、プレイヤーがきちんと攻略できるように工夫されているものなのだから。


先ほどぶっぱなされた電撃に対して警戒を行いながらも、その電撃を放った主である今回の獲物のナマズの状態を『鑑定』する。


【ステータス】

種族:エレキキャットフィッシュ

性別:♂

HP:3924/5064

MP:2310/3400

SP:2561/4321


レベル:91

ATK:2600

DEF:4050

INT:4400

MND:1284

SPE:2645


スキル:

『粘液 :レベル8』

『麻痺耐性:レベル5』

『貪吸:レベル3』

『突進:レベル6』

『雷魔法:レベル6』

『泥魔法:レベル3』

『汚染耐性:レベル5』

『危険予知:レベル6』

『食事レベリング:レベルー』

『水棲 :レベルー』


うん、このレベルになるとやはりスキルも充実してきていて、相手の手強さが段違いだな。


恐らくこいつとは別の個体だとは思うが、俺が「しびれ草」に居た時に、初めて本能で圧倒的な恐怖を覚えたやつと同種でもあるし。


そんな貴重な経験をさせてくれたやつとも、こうして戦えるようになった。


着実に自分が強くなっているという実感が湧くよ。


そして、今の俺のステータスがこんな感じ。


【ステータス】

種族:メディシナルフロッグ

性別:♂

HP:3601/4800

MP:3156/3697

SP:2896/3578


レベル:25

ATK:2612

DEF:2612

INT:3107

MND:2612

SPE:3557


スキル:

『鑑定 :レベル10』

『状態異常耐性:レベル8』

『貪吸:レベル6』

『体術:レベル10』

『猛毒攻撃:レベル10』

『毒生成:レベル10』

『薬生成:レベル9』

『毒魔法:レベル10』

『隠密:レベル10』

『危険予知:レベル9』

『跳躍:レベル3』

『水中高速移動:レベル1』

『念話:レベル3』

『MP高速回復:レベル2』

『水棲 :レベルー』

『陸棲:レベルー』


あれからそこそこ戦ってきたみたいに語っていたくせに、前回と比較してあんま強くなっていないんだなって?


当たり前だろうが!


こちとらあの神スキルである、『早熟』がもう没収されちまってんだぞ!?


それにも関わらず、コツコツ頑張ってここまで上げてることを、むしろ褒めて欲しいね。


いや、これが他の生物達からすれば普通だったんだろうが、1度でもあの成長速度の速さを体験してしまうと、その普通がなんだか物足りなく感じてしまう。


自分よりもなるべく格上以上を狙って倒しているから、『早熟』スキルが無いのにも関わらずここまで上がっている、と言っても良いはずなのだが。


さて、ステータスをお披露目した中で、気になっている部分は新スキルであろう。


それらについては今から解説したいと思う。


簡単な詳細は以下の通りだ。


⬛︎『水中高速移動』

水をまるで地面かのように踏み込むことによって、水中を高速で移動できるようにするスキル。

加速時にはSPを消費する。

加速量と最大持続時間はスキルレベルに依存する。

消費SP量は持続時間の指数的に増加する。


■『念話』

念じることで言葉を発さずとも、自らの意思を他の誰かに伝えることができるスキル。

伝えたい相手と内容を強く意識し、強く念じる。

意思を伝えることが出来る方向は一方通行であり、相手の意思を確認することは出来ない。

言葉などが違っても、伝えたい内容がハッキリと分かる。

知性があるならば、例え相手が魔物だろうとその意思を伝えることが出来るとのこと。

意思疎通が出来ない者とコミュニケーションをとり続けようとした者に与えられるスキル。

念話の届く距離はスキルレベルに依存する。


■『MP高速回復』

MPの時間経過による回復量を増加させるスキル。

MPの使用量が多い者が習得することができる。


『水中高速移動』スキルはまさにその名の通りの効果で、水中を素早く移動することが出来るようになるスキルだ。


効果が単純であるからこそ癖がなく、非常に使いやすい。


これを習得してから、水中での狩りが一層はかどるようになった。


次に『念話』スキル。


こっちもかなり助かるスキルだ。


それまでヘビに向かって毎回毎回ボディーランゲージを行って、伝えたいことを伝えるのは大変な労力であった。


その上それをしたところで確実に伝わるとは限らないのが、また不便なところだ。


そんな中でこのスキルを習得してからは、連携もうまく取れるようになり、俺1人では厳しいような格上相手にも、良い勝負ができるようになったんだぜ?


ただこのスキルの欠点としてスキル保持者側の言葉しか伝達することが出来ないので、ヘビの言うことは相変わらず分からないがな。


そのため向こうの意思は、あのじーっとした眼差しを見つめ返して、必死に理解しようとするしかない。


分からなかったら、尻尾ではたかれるだけだ。


そして最後に『MP高速回復』スキル。


うん、正直神スキルだね、これは。


実に素晴らしい効果であり、俺にぴったりのスキルと言えるだろう。


『薬生成』と『毒生成』スキルをを日に何度も使用している時に突如習得したスキルだ。


その二つのスキルはMPの消費が激しい上に、俺の持っているスキル群の中でも、かなり使用頻度の高いスキルである。


なので、このスキルを習得前はMPの負担がとても大きかった。


時には『毒魔法』の使用を控える程度には。


だがこのスキルのおかげで以前よりも消耗を気にせず、MPを使えるようになった。


効果がシンプルだからこそ、何も工夫をせずとも強い、そんなスキルだろう。


レベルが現状はまだそこまで高くないため、恩恵が大きいとは言いがたいが、それでも十分助けになっている。


このスキルは、これからも長くお世話になりそうだ。


そして俺と共にある程度行動していたヘビも、当然俺と同様にレベルとステータスが上がっている。


ちなみにヘビの方の変化はこんな感じ。


【ステータス】

種族:ホワイトスネーク(状態異常:衰弱)

性別:♀

HP:4263/6000

MP:5452/6000

SP:3359/6000


レベル:9

ATK:5000(-1000)

DEF:5000(-1000)

INT:5000(-1000)

MND:5000(-1000)

SPE:5000(-1000)


スキル:

『状態異常耐性:レベル2』

『噛み付く:レベル8』

『巻き付く:レベル9』

『猛毒攻撃:レベル4』

『毒生成:レベル3』

『氷魔法:レベル5』

『隠密:レベル10』

『危険察知:レベル2』

『未成熟:レベルー』

『寒冷地適応 :レベルー』

『水中適応(極微):レベルー』

『陸棲:レベルー』


いやステータス伸びすぎにも程があるだろうが。


これが種族の差というやつか・・・(絶望)。


いや某モンスター育成ゲームでも、特性や技構成でそこら辺はいくらか補えたし、もっと前向きに考えろ。


ポジティブ、ポジティブ!


そういえば最近のヘビは活動の範囲が、陸よりも水中が多い気がする。


恐らく陸よりも水中の方が温度の関係上、まだマシなのだろう。


呼吸とかは流石にどうにもできないっぽいが、『水中高速移動』スキルを持つ俺並みに動けている。


呼吸に関しては、カエルになった現在俺も水中だと出来ないんだけれど。


ヘビ君はステータスが高いからね。


『水棲』スキルがないはずなんだが・・・、スキルの存在意義とはなんなんだろう?


アイデンティティの喪失を感じるよ。


っと、そうこうしているうちにあんまり特筆するべき所もないまま、そのままナマズを倒してしまうことが出来た。


さっきは思わず食らってしまった電撃も、ナマズからすればやぶれかぶれのもので、そしてそれすらも連発もできるようなものじゃなかったみたいだ。


こちら側も1度撃たれた後は警戒していたし、すでに半分ほど身体が凍って身動きがままならない状態だった。


それなら例え元々のステータスが負けていたとしても、ただの的でしかない。


特に毒系統の攻撃はスピードが遅い敵や、あまり動かない敵に対して相性が良い。


攻撃が当たる回数が多いほど、毒が入りやすいからだ。


そして1度毒が入ってしまえば、継続的にダメージを与えることができる。


《状態異常:猛毒》ならHPが多い相手でも、かなり削れるし。


とはいえ、まだまだ1人で戦うのは厳しいか?


氷漬けによって動きが鈍っていたことが、かなり大きかったし。


因みに『氷魔法』を指示した時に偉そうだったということで、倒し終わった後にヘビからネチネチ嫌がらせを受けました。


【メディシナルフロッグ:♂のレベルが上がりました】


【種族レベルが28になりました】


【『状態異常耐性』のレベルが9になりました】


【『薬生成』がレベル10になりました】


【「SP回復薬生成」を習得しました】


【スキル『薬生成』のレベルが最大になりました】


【スキル『薬毒錬成』を習得しました】


【『跳躍』のレベルが4になりました】


【『水中高速移動』のレベルが2になりました】


【『念話』のレベルが4になりました】


【『MP高速回復』のレベルが3になりました】


【ステータス】

種族:メディシナルフロッグ

性別:♂

HP:3601/5100(+300)

MP:2238/3997(+300)

SP:2424/3878(+300)


レベル:28(+3)

ATK:2762(+150)

DEF:2762(+150)

INT:3317(+210)

MND:2762(+150)

SPE:3767(+210)


スキル:

『鑑定 :レベル10』

『状態異常耐性:レベル9(+1)』

『貪吸:レベル6』

『体術:レベル10』

『猛毒攻撃:レベル10』

『毒生成:レベル10』

『薬生成:レベル10(+1)』

『薬毒錬成:レベル1』

『毒魔法:レベル10』

『隠密:レベル10』

『危険予知:レベル9』

『跳躍:レベル4(+1)』

『水中高速移動:レベル2(+1)』

『念話:レベル4(+1)』

『MP高速回復:レベル3(+1)』

『水棲 :レベルー』

『陸棲:レベルー』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る