第17話 一難去ってまた一難
はぁ、はぁ。
さすがにあのクラスの敵と2連チャンはきついな。
泳ぐ気力すら湧かず、水底に身体を横たえた体勢のまま、自身のHPバーを確認する。
HP:12/430
あ、危ねー!
マジでギリギリの戦いだったじゃんか。
戦闘中は確認する余裕なんてとても無かったけれど、むしろ良かったかも。
だってもしも見てしまっていたら、死ぬかもしれないと思って、身体が動かなくなっていた可能性だってあるから。
そんなことになったら、それこそ殺されている。
かひゅー、かひゅーと笛のような音が喉から聞こえる。
呼吸がかなり浅い。
あんまり息を上手く吸えてないからだ。
そ、そういえばまだ腹に突き刺さったままだったのか。
ゆっくりと息を吐きながら、身体に突き刺さった「ポイズンランス」をじわじわ引き抜いていく。
槍が動いて肉に掠る度に周りを少しだけ抉っていき、その痛みに呻いては止め、また動かしを繰り返す。
ぐ、ふぅー。
ようやく、身体を貫通していた「ポイズンランス」を取り除くことが出来た。
こんな自分の身体に穴が空くような怪我なんて今までしたことがなかった。
いや、普通に生きていたら当然なのだろうが。
痛みはもちろんあるのだけれど、それ以上に体にぽっかりと穴が空いていること自体に、違和感を凄い感じている。
血管の一本一本が感じられるほど、神経に意識が集中して血液が早く回ってるせいか、動悸も凄い。
やべ、また血が・・・。
今まで槍でせき止められていた傷口から、初めは滲み出るかのように、そして徐々に勢いよく、血が溢れてきた。
抜いたのは失敗だったか。
この血液量は早く止血しないとやばいかも。
ただでさえ激戦に次ぐ激戦で血を流しすぎているのに。
本当に身体中の血液が足らなくなってきた。
HPバーを見ると先程まで12だったのに、8にまで下がっている。
あぁ、でも特に止血手段持ってないしな・・・。
せっかく勝ったって言うのに。
ここまでなのかよ・・・。
【ポイズンタッドポール:♂のレベルが上がりました】
【スキル『早熟(微)』が適用されます】
【種族レベルが33になりました】
【『猛毒耐性』のレベルが8になりました】
【『体術』のレベルが7になりました】
【『吸精』のレベルが9になりました】
【『猛毒攻撃』のレベルが9になりました】
【『毒生成』のレベルが9になりました】
【『毒魔法』のレベルが6になりました】
【『隠密』のレベルが5になりました】
【『危険予知』のレベルが5になりました】
【ステータス】
種族:ポイズンタッドポール
性別:♂
HP:126/550(+120)
MP:209/567(+120)
SP:196/548(+120)
レベル:33(+12)
ATK:386(+96)
DEF:386(+96)
INT:426(+96)
MND:386(+96)
SPE:557(+120)
スキル:
『鑑定 :レベル9』
『猛毒耐性:レベル8(+2)』
『吸精:レベル9(+1)』
『体術:レベル7(+1)』
『猛毒攻撃:レベル9(+1)』
『毒生成:レベル9(+1)』
『毒魔法:レベル6(+1)』
『隠密:レベル5(+1)』
『危険予知:レベル5(+1)』
『早熟(微) :レベルー』
『水棲 :レベルー』
『陸棲(微) :レベルー』
は?
なんだこれ?
レベルがまたまた大幅に上がったようだ。
ゲンゴロウの時よりも俺自身のレベルが上がっていたから、前回よりは上昇量が少ないが、それでもかなりのものといえる。
そしてレベルが上がったことで、体力もその分回復し、その影響なのか何故か血が止まり穴が塞がっていた。
もちろん完治という訳では無く痛みもが、HPバーの減少も止まり、ひとまずすぐに死ぬ心配は無いだろう
助かったのか・・・。
本当にもうダメかと思った。
HPが回復すると外傷にも影響するのか。
今まで怪我を直したからこそHPが回復するものだと思っていたけれど、その逆も有り得るんだな。
恐らくレベルアップ時限定のような仕様っぽいが、なんにせよラッキーだ。
ただなんも考えずに「ポイズンランス」を引き抜いてしまったことは反省だ。
なんにせよ、これでもう心置きなく休める。
もうさすがにこれ以上今日活動する気力は無い。
死への恐怖が無くなった安心感も、更にその気持ちへ拍車を掛ける。
これはさっさと寝てしまおう。
おやすみなさ〜い。
俺は横になって一瞬で、眠りの世界へと飛び立った。
■ ■ ■ ■ ■
あれからぐっすりと寝付くことが出来、目覚めは非常に晴れやかなものであった。
にしても昨日は大変だったな。
本当は一日に一体ずつ倒すつもりだったのに、まさかの2連チャンで戦うはめになるとは・・・。
成り行き上でしょうがないと言えばしょうがないないが、疲労自体はまだ蓄積している感じはするな。
でも、そのおかげもあって大分レベルが上がってステータスも上昇した。
死にかけた後に傷が塞がった件に関してだが、あの傷ではレベルが1個や2個上がった程度じゃ多分ダメだっただろう。
まさに九死に一生、不幸中の幸いってところか。
さて、ようやく落ち着く時間も取れたことだし、どこが変化したか見ていくか。
ステータスの方は進化していく度に、1度のレベルアップにおける上昇量が多くなっている。
ゲンゴロウ、メダカを倒したことで併せて30近く上がっているので、その上がり方も凄まじい。
一方、スキルを見ていくと『体術』、『毒魔法』と『隠密』でそれぞれ新しい技を入手した。
『体術』と『毒魔法』の新技に関して言えば、実はゲンゴロウ撃破の時点で入手していたんだけれどね。
その直後に戦闘が開始してしまって技の感じも分かってなかったし、その能力近接特化のメダカには通用しづらいと判断して使わなかった。
それぞれを紹介していくと、
◾︎『体術』スキル
レベル5:掌底
掌を相手の部位に直接触れた状態から発動させる。
放った衝撃を表面から内側へと伝播させていく技。
鎧などで身体を固めた相手に対しても有効。
◾︎『毒魔法』スキル
レベル5:ポイズンミスト
毒を霧状に変化させて、周囲へと散布する。
適用範囲が広くなる代わりに、その効果が弱まる。
◾︎『隠密』スキル
レベル5:索敵
自分の周囲を探り、敵を見つけ出す。
見つけ出すことが出来るかどうかは、自分の能力の高さと、相手の能力の高さによって変わる。
「ポイズンランス」に続いて、『体術』スキルでも堅い相手に対しても有効な技が追加されたのは嬉しいな。
「ポイズンランス」は魔法なのでMPを使用するが、「掌底」はSPを使う。
交互に使ったりすることでガス欠になるのを遅らせたりすることも、近距離と遠距離で使い分けることも出来るだろう。
ただぶっつけ本番で近接特化のメダカにやっていく余裕は無かったな。
「ポイズンミスト」は他の『毒魔法』スキルの魔法の、威力を落として範囲を広くしたタイプか。
効果というのがどういう風になるのか分からないけど、中々面白い。
素早い敵に対しても有効かもしれないし、以前兄弟たちに向かってやったような煙幕とても使える。
戦術の幅をかなり広げてくれる技だと言えよう。
そして最後の「索敵」だが、これは俺が一番欲しかったスキルと言っても過言じゃ無いな。
もしゲンゴロウを倒した時点でこれを入手していれば、メダカの存在に気付いて戦闘を避けられたかもしれない。
連戦による消耗で余裕がなかったからこそ、自分ごと攻撃したりしなきればいけなかったわけだし。
そもそも別日に戦闘していれば、あんな危ない戦法を取らずにもっと他の色々な戦法を試せたのにな。
とにかく敵の所在や周囲の状況把握っていうのは、そのくらい影響がでかいのだ。
「索敵」は何かあったら即発動を癖付けておきたい。
と言ったところでビービーとアラーム音のようなものが聞こえる気がする。
あれ、眠る前に目覚まし時計をセットしてたんだっけ?
いやでもここは、異世界だしそんなわけないよな。
とするとこの音は一体なんなんだ?
試しに「索敵」を発動させてみた。
俺の頭上に大きな影が差す。
ゆっくりと顔を上げると、そこには大きな口が俺を今にも食らわんと広げていた。
わ、わ~っ!!
慌てて横たえていた身体を跳ねさせて、その場から脱出する。
大きな口に飲み込まれることを間一髪で回避出来た俺は、今まさに食べようとしてきた相手を『鑑定』スキルで見てみる。
【ステータス】
種族:ジェノサイダーウォータービートル
性別:♂
HP:1226/1226
MP:333/333
SP:872/872
レベル:5
ATK:720
DEF:1099
INT:458
MND:458
SPE:797
強っ!
なんだこいつ!?
見た目はゲンゴロウを一回り大きくした感じだが、そのステータスが比べると段違いに高い。
名前が異なっていて、雰囲気的にみてキラーウォータービートルの上位種か?
それが一体何でこんなとこにいる?
何で俺のことを襲おうとしてくる?
考えられるとしたら昨日の出来事くらいしか思い当たらない。
・・・まさか昨日殺した雌の番いなのか?
卵があったって事は繁殖相手が周辺に居たわけだし。
っく、避けられたことに気付いて、こちらに向かって突進してきた。
俺よりもめちゃくちゃ速くて、とても避けられない。
答えが出ないことに気を取られている場合では無いな。
相手の方が格上だ。
「ぶちかまし」を真正面からではなく、少し角度をつけて当てることで、ダメージは与えれずとも、なんとかその攻撃をそらす。
クソ!
まともに当たったわけじゃなく、そらすことで精一杯だったのに、それでも一割くらいHPを削られた!
そこまで実力差がある敵相手にどうやって対処すれば良い?
逃げるか、戦うか?
そうこうしている間も突撃は止まることはなく、時間が経つにつれて攻撃もそらし切れなくなってきた。
そんなときだった。
鋭い一閃が通り過ぎ、目の前の巨大なゲンゴロウの脚の一本を切り落とした。
凄い既視感のある攻撃だった。
【ステータス】
種族:サーベルテイル
性別:♂
HP:345/345
MP:458/458
SP:438/443
レベル:4
ATK:1360
DEF:239
INT:569
MND:423
SPE:999
今度はメダカの上位種なのか!?
尻尾の形状が普通のメダカよりも一層すらっとしていて、その輝きは怪しく反射している。
うん、切れ味も普通の個体よりも遥かに鋭そうだな・・・。
突然の乱入者に気を取られていたが、ゲンゴロウの上位種の方から雄叫びが聞こえる。
メダカの方を睨めつけているかと思っていたら、きり飛ばされた再生して脚が新しい物に生え代わっていた。
うげっ、こいつ再生能力も持っているのか。
この高いステータスでそれは反則じゃないのか?
というか呑気にしている時間なんてない。
理由はどうあれ俺はここの環境トップの更に上位種2匹、すなわち実質この「しびれ草」周辺においての帝王といってもいい存在を同時に相手にしなきゃいけないってことか。
おいおい、マジかよ。
昨日はめちゃくちゃ大変だったから、今日くらいは休もうと思ってたのに・・・。
どちらか一方だけを相手したとしても勝てるかどうか分からない位だ。
いくら早くレベルアップしたいからといって、この状況じゃ逃げの一択しか取れないぞ?
という訳でとっとと逃走を図りたいのだけれども、この2匹はお互いのことを牽制しあってはいるものの、こちらへ向ける視線を離そうとしてくれない。
狙いは俺って事?
これでは逃げるに逃げられない。
まともに戦ってたら勝ち目なんて無い。
この場に2匹いるということを逆に幸運に思おう。
さっきまでのゲンゴロウ1匹だけの方が、ステータスにごり押されるだけでやりようが無かった。
メダカとゲンゴロウ、お互いがお互いの不確定要素になり得る存在、そこに掛けるしか生き延びる術はない。
最近気が抜けない事態が多すぎやしないか?
これがサバイバル、自然界を生き抜くってやっぱり大変だ・・・。
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