第16話 連戦


【ポイズンタッドポール:♂のレベルが上がりました】


【スキル『早熟(微)』が適用されます】


【種族レベルが21になりました】


【『猛毒耐性』のレベルが6になりました】


【『体術』のレベルが6になりました】


【『吸精』のレベルが8になりました】


【『猛毒攻撃』のレベルが8になりました】


【『毒生成』のレベルが8になりました】


【『毒魔法』のレベルが5になりました】


【『隠密』のレベルが4になりました】


【『危険予知』のレベルが4になりました】


【ステータス】

種族:ポイズンタッドポール

性別:♂

HP:139/430(+160)

MP:224/447(+160)

SP:198/428(+160)


レベル:21(+16)

ATK:290(+128)

DEF:290(+128)

INT:330(+128)

MND:290(+128)

SPE:437(+160)


スキル:

『鑑定 :レベル9』

『猛毒耐性:レベル6(+1)』

『吸精:レベル8(+1)』

『体術:レベル6(+1)』

『猛毒攻撃:レベル8(+1)』

『毒生成:レベル8(+1)』

『毒魔法:レベル5(+2)』

『隠密:レベル4(+1)』

『危険予知:レベル4(+1)』

『早熟(微) :レベルー』

『水棲 :レベルー』

『陸棲(微) :レベルー』


ええぇー・・・、とりあえず倒すことはできたのか・・・?


トドメを刺すことなく戦闘が終わったせいで、なんだか全然倒した気がしないんだが。


あの行動、最後の悪あがきだったのかなぁ。


急に狂ったように全体攻撃を始めたけど、一体何だったのだろう?


猛毒に罹るとダメージやステータスが下がるだけでなく、その苦しみから思考力にも影響を与える⋯とか?


でも別に狂乱していたとかそういう雰囲気でも無さそうだったし、腑に落ちないなー。


だがとりあえずの目的は達成出来たか。


種族レベル16アップ、まずまずだな。


やはり強い相手を倒すほど貰える経験値も多くなるという考え方は正しいと、認定しても良さそうだ。


今回の事で一つ教訓を得ることができたな。


追い詰められたモンスターは何をするか分からないから注意をするっていうことと、見たことが無い攻撃パターンも警戒するっていう。


ゲームでも確かにそういうことは多いけれど、まさか実際にあるとは。


それにしても最後はたまたま《状態異常:猛毒》が入ったからよかったものの、それがなかったら倒せていたかどうかすら分からないし。


『鑑定』スキルでHPが0になっているのはもちろん分かっている。


しかしながら、その死体はまだまだ動き出しそうな程の迫力があり、少し近づくのが怖い。


だがいつまでもそうやっていても仕方が無いので、意を決してその大きな体に恐る恐る近づいていく。


うわ〜、近くで改めてこいつを観察すると色々壮観だな。


外骨格の艶やそのフォルムからロボットのようなかっこよさを感じるが、細かい産毛やなんかが、こいつが生物であったことを確かに教えてくれる。


一通りその肉体を観察し、それから辺りの消化液が撒き散らされたことで出来た惨状を見渡していると、1つ気付いた事があった。


全方位に満遍なく撒き散らされていたと思っていたが、その中で比較的弾幕の被害が少なかった方面があった。


僅かな差ではあるかもしれないが、確かにそう言えるほどの差が。


そしてその方面のしびれ草の根元に大きな球体があるのを発見した。


これってまさか・・・。


【キラーウォータービートルの卵】


やっぱり、ゲンゴロウの卵だったのか。


そういえば『鑑定』スキルの結果で性別が雌って出てたっけ。


ってことは、最後のあの一見めちゃくちゃな攻撃は、もしかしたら子供を守るための物だったのかな。


ゲンゴロウ程の生物相手でも脅威となり得る俺を、自分が生きているうちに少しでも遠ざけるために。


俺はそもそも自身と同じかそれよりも強いモンスターを倒して、経験値に換えるっていうこと自体が目的だったけれども、普通はそうじゃないだろうし。


その場合あれをやられた時点で割に合わないと判断して、逃走してるのかもしれない。


こんな昆虫型のモンスターですら、親子の愛や絆が存在するのかな。


それともただの本能による種族の保存の為?


・・・やめやめ。


こんなのいくら考えてたって答えなんて出るもんじゃないし、出たってそんなもの俺にとって何の役に立つ物でもないだろう。


無粋すぎる考えだった。


気持ちを切り替えて行くか。


まずは戦闘で減少したSPやHPを少しでも回復させるためにも、ゲンゴロウをおいしく頂くことにした。


そして食べ終えた俺は、さらなるレベル上げの為にしびれ草群生地帯においての、もう一つの最強種族を探しに行くことにする。


ゲンゴロウの卵は見逃すことにした。


別に同情とかそんなんじゃ無いと思いたいけれど、やっぱりそういう部分が少しあることも否定できない。


わざわざ殺したのに食わないのは失礼だと思ってその死体を食しはしたが、本来の目的はレベルアップのため。


つまり俺は生きるために仕方なくと言う訳では無く、ただただ経験値に変換するためだけにゲンゴロウを殺したのだ。


それは利己的な理由でしかなく、そのことに対して卵である彼女の子供達へ後ろめたさや罪悪感といったものを覚えてしまった。


でも俺はもうレベルアップのためにこうやって生きていくと決めたのだ。


申し訳なさは確かに残るけれども、俺はこれからもレベルアップのためだけにら他のモンスターを倒していくがあるだろう。


たとえ時間が戻ったとしても、ゲンゴロウを普通に殺すと思う。


でもその命掛けで子を守ろうとした、ゲンゴロウの母という存在に敬意を払って、今回は見逃すのだ。


次回以降に同様の行動をするかどうかわからない、本当にただの気まぐれな自己満足だ。


なんだろうな、異世界に来て一週間以上が経過して感傷的なメンタルにでもなっているのかな?


知らず知らずのうちに元の世界の家族が恋しくなっているのだろうか。


割り切るって決めたはずなのに、気付けばまたうじうじと考え出してしまっている自分がいた。


そんな自分に喝を入れるかのように、目の前を一筋の剣閃が通り抜ける。


その剣閃の射程上に存在していた「しびれ草」は、スパッっという効果音が聞こえてきそうなくらいに綺麗に切り裂かれ、地面に落ちていく。


その出来事に思わずぎょっとするとともに、急いで臨戦態勢を整える。


おいおい、あまりにもぼーっとしすぎだぞ俺!


と自身にツッコミを入れながら周囲を見渡すものの、それを行った敵の影が見当たらない。


不審に思いそのままの警戒体勢で待っていると、そいつは茂みの間から悠々と姿を現した。


【ステータス】

種族:ソードテイル

性別:♂

HP:217/217

MP:104/104

SP:208/208


レベル:8

ATK:654

DEF:51

INT:145

MND:82

SPE:478


出たな、この「しびれ草」群生地内でもう一つの最強種。


望んでいた出会い方では無かったが、どちらにしても倒す予定だった相手だ、会敵自体は問題無い。


やばいのは俺自身の余力の方だな。


もってくれよ、俺!


こいつとの勝負はゲンゴロウとは違って、あまり時間がかからずに済むだろう。


ゲンゴロウの戦い方を防御力を活かした盾のようなものとするならば、こいつのは矛。


速くて高火力な攻撃で相手を蹴散らすような、そんなステータスだけでゴリ押してくる、ゲンゴロウとは微妙に別ベクトルな脳筋戦法を使うモンスターだ。


こいつの攻撃によって俺が消し飛ばされるのが先か、はたまた俺の攻撃でこいつを削りきるのが先か。


メダカはゲンゴロウと比べればかなりHP総量が少ない。


連戦でヘトヘトの俺としても、短期決戦は非常に望むところだ。


というか多分そうじゃないと勝てない。


今回は向こうから戦闘を挑まれているので、『隠密』スキルがあまり役に立たないな。


牽制と様子見でまずは「ポイズンボール」を!


ってこれくらいは簡単に避けられるか・・・。


前にバレルフィッシュとの戦闘を見ているので、これくらいで驚きはない。


むしろ当然だろう。


そしてメダカは避けるだけでなく、しっかりと反撃も行ってくる。


っく!


先程姿を見せる前にもしてきた、飛ぶ斬撃か。


バリバリ近距離ステータスをお持ちなくせに、強力な飛び道具まで持ってるのは流石にズルすぎるだろう。


何とか躱すことはできたものの、その衝撃に怯んでいるうちに、あっという間に近づかれてしまった。


やっていることは俺の今までの戦法と類似しているが、その完成度は比較にならない。


こちらの完全に上位互換だ。


とにかくこの距離はまずい、ここはこいつの得意な間合いだぞ!


息つく間もない程の一撃一撃が居合じみた連撃を、『体術』スキルによる補正を存分に活かして、何とかいなす。


だがそれもギリギリだ。


いなす度に手足がビリビリと震え、動かなくなっていくのがわかる。


このまま捌き続けるだけでは押し負ける!


とりあえず、攻撃されっぱなしではダメだ。


まずはこちらから攻撃をしないと。


だったら無茶なことをしてでも、まずは相手の攻撃を止める!


尻尾による斬撃攻撃をその威力が乗る前に、あえて抱きつきに行くことで、メダカの動きを一瞬だけ押さえ込む。


この動きはそう何度も通用しない、だから1回限りのチャンス。


絶対にミスなんて出来ない!


そうしてやつの動きが止まったそのとき、背後に生成した「ポイズンランス」を俺ごと打ち込んだ。


がはっ。


なるべく致命傷にならないようにと場所は選んだつもりだが、それでも時間が無かったし、何より身体を貫通するような攻撃は今まで味わったことの無い激痛だった。


HPがガリガリと削られていくのが見えるが、なんとかそのゲージの減少は0よりも手前で踏みとどまってくれた。


動きの速いこいつに当てるには、こうするしかほかなかった。


だが、これでやつの行動を縫い止めることに成功した。


俺は『猛毒耐性』のスキルを持っているが、お前はそうじゃないだろう?


「ポイズンランス」によって動きが止まったこいつに、さらに至近距離からかぶりついて『猛毒攻撃』スキルで攻撃。


ついでに『吸精』スキルで心許なさすぎるHPを回復していく。


雀の涙程度の回復量だが、無いよりは全然マシだ。


必死で身を捩り俺から離れようと藻掻くも、毒で低下したステータスと俺よりちょっとだけ小さいくらいの体格のメダカでは、簡単に抜け出すことは出来ない。


その攻撃手段をほぼ尻尾に頼っているメダカは、こうなってしまえば反撃も壗ならないだよう。


そんなに多くなかった体力は、毒ダメと至近距離からの噛みつきから繰り出されるスキル攻撃によってすぐに削り切れた。


ふうぅ、今回もなんとか無事に倒すことが出来たぜ・・・。


本当は今日のうちに居場所を探しておいて、明日以降に挑んで倒すつもりだったのに。


まさか「しびれ草」群生地における最強種と二連戦するだなんて思ってもみなかった。


血も今日だけで随分と流しすぎたな。


他にも疲労やらなんやらで視界がクラクラする。


さすがに限界だな・・・。


泳ぐ気力も尽き果て、俺の身体は水底へと身体が落ちていった。





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