第11話 急襲①




【ステータス】

種族:リトルポイズンタッドポール

性別:♂

HP:75/75(+30)

MP:72/72(+30)

SP:73/73(+30)


レベル:7(+6)

ATK:46(+18)

DEF:46(+18)

INT:66(+18)

MND:46(+18)

SPE:92(+30)


スキル:

『鑑定 :レベル8』

『毒耐性:レベル8』(+1)

『吸精:レベル3』(+2)

『体当たり:レベル9』(+1)

『猛毒攻撃:レベル3』(+2)

『危険察知:レベル7』(+2)

『毒生成:レベル3』(+2)

『早熟 :レベルー』

『水棲 :レベルー』


2度目の進化をしてから、数日が経過した。


ドジョウとの戦闘を熟したその後も、順調に何体かのモンスターを倒しており、それにより進化の度にリセットされているレベルもそこそこ上がった。


進化する前までは、苦労して倒していたドジョウやミジンコなどのモンスターを相手しても、余裕を持って倒すことができていると思う。


なんなら、そいつらよりもちょっとだけ強いやつらも倒せるようになったんじゃないかな。


進化以前と以後で如実に強くなっていってることを実感することが出来て、まさに育成系ゲームの喜びを自分自身の身体で味わっている真っ最中である。


『毒生成』スキルのレベルが2つ上がったのだが、それにより生成できる毒の種類が別に増えることはなかった。


では一体どこが強化されたのかというと、なんとスキル発動時に1度で生成することができる毒の量そのものが増えたのだ。


なんだ、毒の量が増えただけかと思うかも知れないが、これが以外と侮れない。


生成量が増えることによる効果の差を、『鑑定』スキルで相手のHPなんかを何度も見て確認したところ、どうやら毒の量の増加は効果時間の長さに影響を与えるようだった。


摂取量が増えれば、その分効果時間が増加するのは至極当然のため、この仕様には納得感もある。


予想していたスキルの強くなり方とは異なっているが、このままの強くなり方でもかなり強い。


現状俺の戦い方では、相手を毒ダメージで削る以外だとあまり効率が良くない。


しかし、そうなると相手を毒状態にし続けなければならない。


一定時間で毒状態は回復するので、定期的に毒を入れる必要があるのだが・・・。


現状俺が敵に毒を入れるためには、敵に噛み付いて毒を注入するか、もしくは『毒生成』スキルにより生成した毒液を相手にぶちあてるかになる。


どちらも相手に急接近する必要があり、その分相手からの攻撃を最も受ける可能性のあるスキル等である。


しかもどちらも割と隙のでかい行動なのも非常に痛い。


現状は毒状態になったときの怯みなどであったり、そもそも敵の動きがこちらと比べて遅いからこそ倒すことができているが、そうでない場合を考えると恐ろしい。


継続時間が増えるということはそういったリスクの回数も減らすことができるということである。


後単純に時間が延びることで、総合的なダメージ量の増加や、スキル使用回数の低下による消費コストの削減も大きなメリットだ。


とにかく生成される量が増えることで損はないので、これから先の強化のされ方に注目しつつ、引き続き優先的にこのスキルを育てていきたい。


その点やっぱりスキルレベルを上げるには耐久力の高いミジンコが一番だな。


耐久が高い分、スキルをたくさん打ち込めるし、動きが鈍臭いため攻撃をくらいにくく当てやすい。


まさに格好の相手だ。


そう思って今日もしびれ草の合間を縫ってミジンコを探していると、影から黒い小さなモンスターが襲いかかってくる。


不意打ちとはいえ真っ正面から来られれば避けるのも簡単だ。


落ち着いて避けて、その姿を観察しようとしたとき、今度は左右の草陰から同時に飛びかかられる。


今度は完全に不意を突かれて、体勢を大きく崩しまう。


しかしそれでもなんとか避けきることに成功。


だが更に今度は後方から攻撃を受け、体勢が崩れてしまった俺に避ける術はなかった。


いって~!


2回も進化したとはいえまだまだ低級の魔物の、しかも幼体であることに変わりは無い。


そのためHPの量は心許なく、少しのダメージでさえ命の危機に直結する。


不意討ちで貰った攻撃に対して、そういった死の気配を感じ意識できない知らず知らずのうちに俺の身体にプレッシャーを与える。


しかも相手は追撃をどんどんかけてきており、ダメージを受けた痛みにうめいている余裕すらもない。


飛来するやつらの攻撃を急加速・急旋回を繰り返して必死に裁きながら、生成量の多くなった『毒生成』スキルによる毒を周囲にばらまいて接近しようとしてきた相手に牽制を行う。


突如俺の周囲に現れたいかにも害がありそうな紫色の毒に対して警戒をしてくれたのか、そこで相手も一旦距離を取ってくれたようだ。


おかげで息つく暇も無いほどの連続攻撃から、俺はようやく冷静に周囲の環境や敵の様子などを俯瞰することが出来た。


1発目はなんとかギリギリ避けることはできたもののその直後の2発目で中々良い物を貰ってしまい、その後も軽くではあるが何度か攻撃を受けてしまった。


そのときの傷口がじくじくとうずく。


その感じ方は卵を食べたときのピリピリとした刺激に非常によく似ていた。


これはどうやら傷口に直接毒を注入されたようだな。


慌てて自分自身に向かって『鑑定』を行ってみると種族名の横に《状態異常:毒》の文字が見て取れる。


なにげに自分自身が《状態異常:毒》になるのはこれが初めてかもしれないな。


全く、『毒耐性』スキル君には仕事をして欲しいもんだよ。


HPゲージを確認するとその値は半分を少しだけ下回っていた。


これは少しも予断が許される状況じゃないな。


そこで俺自身のステータスからもう一度襲ってきた奴らの姿に顔を向ける。


【インフェリアタッドポール:レベル27】


【リトルタッドポール:レベル14】


【インフェリアタッドポール:レベル20】


【タッドポール:レベル12】


【インフェリアフロッグ:レベル1】


レベルや種族から察するに、俺の兄弟達である可能性が非常に高いな。


こんな所で逢うとは実に奇遇なこともあったもんだ。


俺はこれからスキルレベル上げという大事な大事な用事があるので、ここらで失礼したいのだがいいかな?


なんてふざけた感じで問いかけるも応えてくれそうな気配はあるわけもなく・・・。


くそっ、こんなに群れるなんて反則じゃ無いのかよ!


俺なんて生まれたときから生粋の一匹狼だというのに。


今は狼では無くオタマジャクシなのだけれども。


しかも揃いも揃ってこいつらのほとんどが俺よりもレベルが高いときたか。


そしてその内の一匹は脅威的なことにカエルにまで到達していやがる。


そんなんチートだろ、チート。


圧倒的戦力格差じゃ無いか。


ただでさえ戦力的格差があるのに群れてんじゃねえよ。


・・・ここはゲームの世界のようであってそうじゃ無いのだから、ぶっ壊れも何も無いってのは理解してたんだけどな。


とはいえずるいっていう感情が湧き出てくるのも抑えることはできない。


元はと言えば進化時に将来性を考えて目先の能力を捨てたのは他ならない俺な訳だけれども。


進化時の選択肢を考えれば、俺と同じように2回進化を経験していればカエルにまで到達している個体が居たとしても不思議ではない。


そしてこうして目の前にその目先の能力を手にした結果を持ってくるのは酷くないか・・・?


はてさてどうしたものか。


そもそも久しぶりに兄弟達に遭遇したわけだが、こいつらはおそらく群れて行動することでここまで生き延びてきたんだろうな。


ここで群れで生活する生き物はほぼ居なかった。


しびれ草の探索の中で見ためちゃくちゃ小さい魚だけだ。


だから数的有利を取るという事はかなりのアドバンテージになったのだろう。


もとよりここら一帯の環境はこいつらよりも身体的ステータスが劣る俺ですら単体でどうにかなって来た。


メダカレベルとかでなければそりゃあ敵無しに違いない。


そしてその数的有利によるアドバンテージは今現在この状況でも同じである。


今までの敵に対してはいわゆる「ガンガン攻めようぜ」なスタイルだったが、この数の差ではその戦法は厳しい。


単純により勝率の高い方法をとるのならばチクチクとした戦法であろう。


イメージは1回目のミジンコとの戦闘だ。


しかし、俺と同じ系統であることから向こうにも『毒耐性』スキルがあることが考えられる。


ただでさえ体力が半分ほど削られていて、更に《状態異常:毒》でじわじわとダメージを受けている現在。


数が多い相手にそれをやっている時間が果たしてあるかどうか・・・。


この状況では受け身よりもガンガン攻めなければ生き延びる見込みが無い。


八方塞がりだな・・・。


どっちをとってもかなり厳しいのは間違いないだろう。


せめて一体ずつ戦えればまだ勝てるのかもしれないが、っていや待てよ?


この状況でこの戦術をとれば、もしかしたらそれが出来るのでは?


どっちにしろ絶体絶命の状況なのだ。


どんな無茶なやり方でも、少しでも打破できる可能性があるならやってみる価値はあるだろう。


敵から注意は逸らさずに再度チラリと自分のステータスを確認する。


うん、よし《状態異常:毒》はもう消失しているな。


あれがあるだけで、身体の動きに違和感が出る。


万全の動きを想定するなら、完全に消えているまでは待つのが最適だった。


ここまで『毒耐性』スキルのレベルを上げた甲斐があったもんだ。


欲を言えばそもそも《状態異常:毒》自体を防いでもらいたかったが、それはまぁしょうがない。


こちらが息を整える時間があったということは当然向こうも同じ事であり、俺の周りにあった毒液も水の流れで霧散したことも手伝って、奴らは再び俺を囲むように展開し始めていた。


俺のHPのことを考えればもう後何回も攻撃を受けられない。


そんな状態で一斉攻撃をもう一回されたらとても耐えられないだろう。


陣形が整いきらない今のうちに攻撃を仕掛けるしか無い、毒が直ったばかりの身体に鞭を打って無理矢理やつらの一角に突撃する。


しかしそれは悪いことばかりでは無く、展開途中はなんなら一番隙がでかくなる。


相手を食い破るとしたらこのタイミングしかない。


狙いはもちろんこの中でレベルが一番低い「リトルタッドポール」である。


数的優位を少しでも減らしたいので、定石的にも一番弱いこいつから狙うのは普通だろう。


俺が動き出したのを見て他の奴らは狙われた「リトルタッドポール」をかばうように動いてくる。


まあ、それはこっちとしても想定通りな訳で。


前回は牽制だったが、今度は目くらまし代わりに『毒生成』スキルを発動させる。


牽制時の反応からも分かるとおり紫色の物体はただでさえ警戒心を煽り身をすくませるものだが、更に今回は広範囲に広がるように身体を振りながら発動させた。


こちらの思惑通りに一瞬やつらは動きを鈍らせてしまった。


その隙にこちらは「リトルタッドポール」へ一直線に向かう。


さすがに2度目なので1度目よりも時間は稼げないだろうが、少しでも1対1の状況ができれば良いんだ。


必死に逃げようとしているが、こいつとだけはレベル差がそこそこ上を取れているのであっさり追いつき『吸精』スキルと『猛毒攻撃』スキルの黄金コンボを喰らわせる。


うん、一撃でかなりのダメージを負わせられたな。


あんだけ数が居れば、全員が平等に経験値を得るのは難しいのは当然だもんな。


こいつもおそらくは『毒耐性』スキルを所持しているだろうが、「毒」系統の進化形である俺の「猛毒」は無事に入った。


そしてなおかつ『吸精』スキルで減っていた体力を少し回復させることに成功した。


まだまだレベルが低いため、その回復量自体はたいしたことないが回復手段を有しているということ自体が大きいのだ。


与えたダメージもそこそこ大きかったから、明らかに回復したという程度には増えたからな。


『吸精』スキルをゲットしておいて本当に良かった。


これで先ほどと比較して長期戦がめちゃくちゃ有利になる状況にまで持ち込めた。


ひとまずファーストアタックとしてはこれ以上無いくらい上出来だ。


一方まんまと俺にしてやられたやつらは先ほどよりも殺気立っている。


いやいやいや、今回はそっちから喧嘩をふっかけてきたんだからな?


超ピンチではあることには以前変わりないが、こっちとしても負けてやるつもりはこれっぽっちも無い。


燃えてきたぞ。




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